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第28話 再びのざまぁ

 今日は豊山自動車の新製品のお披露目。

 なんと発売するのは金属フィギュア。

 金属加工はお手の物の自動車メーカー。

 おまけにアニメや漫画の版権を取っていた。


 値段は2500円。

 かなり頑張った値段だろう。

 それとアニメや漫画で出てくるコイン。

 うちは石製だが、豊山のは金属製だ。

 だが値段は300円と安い。

 うちを潰すと言った本気度がうかがえる。


 うちも同時間に記者会見を開いているがそれはまあ良いだろう。

 佐奈子が俺を見つけるとそばに寄って来た。


「どう、もう商品が売れなくなる感想は?」

「問題ない」

「強がりを言っちゃって」


「今、うちも記者会見を開いてる」

「そうなの。精々最後の悪足掻きをするのね」

「あの」


 豊山の社名が入った作業着を着た人が佐奈子に声を掛けた。


「何?」

「専務がお呼びです」

「そう、ちょうど良いわ。倉本も来なさいよ。あなたの会社を二束三文で買ってあげるわ」


 面白そうなのでついて行く。


「何だ。お前を呼んだつもりはない。だが、話したい事がある」

「そうかどんな話だ」

「やりやがったな。産業スパイを送り込むとは卑怯だぞ」

「知らんな」


「倉本が何かしたの?」

「こいつ、うちと同じ戦略を取った。漫画やアニメのキャラクターの版権を取ってしかもうちより安価で売り出すつもりらしい。版権が被っている作品も多数ある」

「じゃあ、豊山も値段を下げたら?」

「そんなことをすれば売れば売るだけ赤字だ。ただでさえ他の役員に評判が悪いのに」


「うちは100円で売っても問題ない」

「くそっ、価格競争に持ち込むつもりか。不当に安くすればそちらも赤字になるんだぞ」

「いや、ならないから」

「ハッタリだ」

「そう思うならやってみろよ。じゃあな」


 うちのフィギュアは1個2000円に値段を下げた。

 石のコインは100円だ。


 ぜんぜん赤字じゃないからな。

 1円玉1個を異世界に持ち込めば、フィギュアが1万個以上は作れる。


 まあ、見本のフィギュアを見て作っているから、できの悪いのがあって不良品になるのもあるけど。

 ただ、ポーズは1個1個変えている。

 なので、多少の当たりハズレもご愛嬌だ。


 発売から1週間。


 フィギュアの作りが優秀な冒険者はピックアップして、指名依頼を出したから、不良品率が下がってよりいい物が出回っている。

 営業はブラックバイパーに代行してもらった。

 全国の玩具店で豊山の営業と戦いになったが、大抵の売り場で勝利。

 勝敗は見えた。

 豊山のフィギュアは玩具店で山積みになった。


 専務の田楽(たらく)にアポを取った。


「くそっ、汚い手を使いやがって。なぜブラックバイパーが背後にいる」

「顧問だから」

「顧問如きでは経営に口は出せないはずだ」

「どうだ。在庫を全部買ってやろうか。価格の2割でな」

「くそっ、足元を見やがって」


 佐奈子が入ってきた。


「このゴキブリ男。もう許さない」

「許さないなら何だ?」

田楽(たらく)、どうにかして」

「こうみえてわしは反社とも付き合いがある」

「全く、商売で負けたからと言って暴力か」


 その時、ぱっと見で良いスーツだと思われるを着た男性が入ってきた。


「これはこれは倉本様」


 その男性がにこやかに笑いながら俺に挨拶した。


「社長、こいつは商売敵ですよ」

田楽(たらく)君、状況が分かっているのかね。フィギュアなどお遊びに過ぎない。うちの主戦力は昔も今も自動車だ。新電池の供給をブラックバイパーに止められたらどう責任を取るんだ」

「顧問如きにそんな権力はない!」


 俺はスマホで電話を掛けた。

 そして豊山の社長にスマホを差し出した。


 電話でやり取りして、社長の顔が青くなった。

 社長は田楽にスマホを渡した。


「なぜだ! なぜ、ブラックバイパー日本の社長がお前の言いなりなんだ!」

「顧問だから」

田楽(たらく)君、謝罪したまえ。それと君は専務から平社員に降格だ」

「役員会の同意はあるのか?」

「ブラックバイパーにへそを曲げられたら、うちは終りだ。役員もそう言うに決まっている」


「何よ! 何でこうなるの!」

「この女は何だね。君の秘書かね?」

「それは……」


「社員の名札がないな。部外者を入れたのか」

「えっと……」

「私の降格の判断は間違ってないらしい」


「この疫病神が! 出ていけ!」

「何よ! 何なのよ!」


 元専務が佐奈子を乱暴に部屋から出した。


「これでよろしいのでしょうか。ああ、佐奈子とは縁を切ります。銀座の店にも苦情を入れます。もうどこも佐奈子を雇わないでしょう」


 佐奈子も馬鹿だな。

 専務とよろしくやっていればいいのに。

 そうすれば金もたんまりもらえてやって行けたのにな。

 俺に喧嘩を売ったのが運の尽きだ。


 まあ、そういう所が性悪の佐奈子らしいが。


「アナザーワールド貿易のフィギュアは全国区になったわね」


 会社に帰ると里奈がそう言ってきた。


「大きくするつもりはなかったんだけどな。まあ良いか。俺は作った物を運ぶだけだから」

「どこで作っているの?」

「地下に研究室と工場があるんだ」

「嘘ね」


 里奈には通じないらしい。


「秘密だ」

「いつか話してくれるのよね」

「いつかな」


 佐奈子はまた何か妨害工作をしてくるかな。

 まあ来ても返り討ちだが。


 銀座で働けなくなればまた借金地獄に落ちるのだろうな。

 俺が気にすることでもない。


 豊山との価格競争は終わった。

 値段は2500円に落ち着いた。

 掲示板をみると豊山製品もそれなりに好評だ。

 山と積まれたのは、生産量を見誤ったらしい。

 元専務が独断で決めたと、豊山社長がこぼしていた。


 これからは車の試乗会の景品やサービス品などに使って在庫を消化するつもりらしい。

 まあ、俺が関与することではないけどな。


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