第24話 名誉騎士
「ありがとう。生活魔道具のアイデアは良かった。おかげで景気がさらに良くなった」
領主からお礼が言いたいと言われて面会となった。
「お褒めに与り恐縮です」
さあ、次は何を言う。
「褒美を取らそう。何が良い? 独身だと聞いている。婚姻はどうだ?」
「接吻したら、死ぬような関係では夫婦生活を送れないかと」
「ふむ、そうだな」
褒美は金貨が良いな。
「お館様、名誉騎士などどうでしょうか」
領主のお側付きが意見を述べる。
「そうだな。名誉騎士にしてやろう」
しぶちんだな。
名誉騎士では一銭も領主の懐は痛まない。
「ありがたく頂戴致します」
紋章を決めろと言われたので、実家が使っている家紋を教えた。
シンプル過ぎるとも言われたが、代々使っていると言ったら何も言わなくなった。
家紋入りの色々な道具が作られる。
要らないと言えたらどんなに良いか。
代金は俺が持つなんて、どんな罰ゲームだ。
「上手くやったな」
ロバートの意見は違うらしい。
「ここだけの話。大してありがたくないんだが」
「冒険者の前ではそんなことを言うなよ。冒険者の最終目標のひとつなんだからな」
「年を取ったら引退して騎士になるのが夢なのか?」
「そうだ。冒険者の引退後の職業は警備兵、門番、教官など色々とあるが、騎士はその中で憧れに近いからな」
よく考えてみたら、海外の王室で騎士とかに任命されたなんてことは、ニュースになるようなことだものな。
「そうだな。光栄なことだ」
「分かれば良い」
生活魔道具のアイデアとして、魔木電池のアイデアを出した。
ぶっちゃけると、手ごろな大きさに魔木を切っただけだ。
魔力の源として使う。
その規格を作ったのだ。
魔木電池は大体5年ぐらい持つみたいだ。
リサイクルも出来る。
魔穴のすぐそばに置いておけばまた魔力が充填される。
普通の木を魔穴のすぐそばに置いておけば魔木電池になりそうだと思うが、どうやら一度、魔木にならないと効率が悪いらしい。
魔木は高濃度の魔力で構造が変化しているようだ。
ただこの構造は魔力構造なので、地球の分析機では感知できない。
エリクサーの量産か。
ドラゴンの血がネックなんだよな。
血なら、豚の血が手に入る。
俺は、豚の血を異世界に持ち込んだ。
結果は見事エリクサーが出来上がった。
それも品質の良い奴だ。
エリクサー製造機も出来上がり、異世界での稼働が始まった。
MP777の値段が下がるのも間近かな。
「値段は据え置きでよろしいかと。でないと医療を破壊してしまいます」
空蝉の考えはそうらしい。
それに量産体制が整ったとはいえ、全世界の需要を賄うほどではない。
まあ、当分は100万ドルかな。
日本円では1億とちょっと。
在庫がだぶつくようなら値下げを考えよう。
「助けて……」
やつれた佐奈子が俺の所に来た。
「よくも俺の所に顔を出せたな!」
「お金がないのよ」
「まだ、裁判は終わってないだろう。損害賠償を払ってないのだから金に困ったりしないはずだ」
「それは……」
「おう、兄ちゃん。この女のこれか?」
チンピラが現れて小指を立てた。
「いや関係ない。赤の他人だ」
「佐奈子さんよぉ。借りた金は返さないと。内臓を売るか? 2つある臓器もあるんだぜ」
「嫌っ! それだけは嫌!」
「なら、知り合いの店で働いてもらおうか。ビデオ出演も良いな」
何となく分かった。
贅沢が忘れられなくて、闇金から借金したんだな。
こんな女、誰が助けるか。
「俺は行って良いよな」
「待って!」
佐奈子が俺に抱きついた。
俺は強引に引きはがす。
「お前、何か言うことがあるだろ」
「えっ、何?」
謝罪の言葉がないんだよ。
悪かったと思ってないんだな。
こんな女だと分かっていたら、付き合わなかった。
「それが分からないようだから助けない」
「じゃあ、来てもらおうか。頑張って、借金返しましょうね」
佐奈子はチンピラに連れて行かれた。
口だけで謝られてもそれだけじゃ許さない。
心の底から謝ってもらわないと。
そうなったら許すが、助けない。
プラマイゼロになっただけだからな。
そろそろ、横領の罪をなすりつけた絵世との決着もつけたいな。
インテリジェンスブックに真実の本という魔道具のことが記録されてた。
本の形をしている魔道具で、ぶっちゃけ本は関係ない。
重要なのは、起動すると真実しか喋れなくなることだ。
これを使えば絵世の自白を引き出せる。
だが、真実の本の製法は門外不出。
裁判に使っているらしい。
異世界ではその使用には制限が掛けられている。
まあ、分かるよ。
悪用されたら困る魔道具だからな。
もちろん、金を積んだからと言って売って貰える物じゃない。
となると領主に頼るしかないな。
1円玉を1000枚ぐらいでなんとかならないかな。
うん、ならんかも知れないな。
法律を破れと言っているわけだからな。
日本で使うんだよと言っても、保証がないからな。
それに俺が借りたまま返さないと大変なことになるだろう。
もちろん借りた時はちゃんと返すつもりだが。
いきなり法律を破ってくれと領主に言うのは悪手だな。
無礼者とか言われそうだ。
おとがめなしになれば良い方で、罪を問われたり、追放なんかもあるかもな。
とにかく、タイミングを計らないとな。
ゆっくり、領主と仲良くなって、冗談交じりに真実の本を貸してくれと言えるようにならないといけない。
それが近道な気がする。




