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第23話 領主

「クラモト、領主様が会いたがっている。どうする?」


 異世界でロバートに会ったら、そう言われた。


「どんな人?」

「気さくな人だな。ただ間抜けではない。利はしっかり確保する人だ」


 どうするかな。

 後ろ盾が欲しい気もする。

 もし嫌な奴でどうしようもなかったら、最悪は空蝉(うつせみ)に言って侵略だな。

 そうならないように最善は尽くすけど。

 できるだけ平和にやりたい。


 断るのは愚策なような気がする。

 会ってみてだな。


「よし会おう」


 街に行き、領主の館に入ると、待たされずにすぐに面会が叶った。


「カンツ・エリエル子爵だ。ようこそ、異世界の住人には初めて会うな」

「クラモトだよ。お会いできて光栄です」


 ありがたくもないが、まあ社交辞令だ。


「魔導金属の代金をポーション類に換えて持ち帰っているそうだな」

「ええ」

「好感が持てる行為だ。エリクサーの増産事業で経済が活発になった。現在、売っているのは魔水と魔導金属だな」

「ええ」


 結論を言えよ。

 魔水がもっと欲しいのか、それとも魔導金属か。


「金には少し余裕ができた。投資するべきだと考えた。特産物を作りたい。何かアイデアはないか」


 ポーションと魔導金属で作る魔道具以外ってことだよな。

 俺が宿屋に泊まって考えるのは、魔道具は便利なんだから、生活用品も作るべき。

 家電に相当する魔道具だ。


「掃除、洗濯、その他生活に必要な魔道具を作るべきかと」

「ふむ。景気が良いなら、民の購買意欲も盛んになるか」

「魔木を持ち込めます。魔木なら魔導金属ほど物騒ではないかと」

「それは良いな。魔道具職人を呼べ」

「はいただいま」


 お抱えの魔道具職人が集められた。


 掃除機、洗濯機、コンロ、扇風機、冷蔵庫、エアコン、テレビのアイデアを出した。


「離れた所に映像を届けるだって! できるわけない!」

「テレビは駄目か」

「当たり前だ。聞いた電波という物がさっぱり分からん」


 テレビとかできたら良かったが、これは開発に時間が掛るものらしい。

 今回は諦めた。


「みんな、順番に片付けようぜ」

「おう、掃除魔道具からだな。風を作る魔法陣はあるから簡単だぜ」

「フィルターってのはどうするんだ」

「布を重ねたらどうだ」

「それしかないだろうな」

「この風を送るプロペラってのはどうなんだ。風の魔法陣じゃなんでいけない」

「それは、風の魔法陣がぱっと出て来なかったから」


 俺は説明した。


「ふむ、だが作ってみるか」


 木が削られプロペラが魔法で作られた。

 そして回転すると風が起こった。


「妖術だ!」

「回転するだけで、こんなに風が起きるわけない」


 えっと俺にとっては魔法の方が何倍も不思議なんだが。


「プロペラの風はなんだか柔らかい感じがするな。これもありなのか」

「回転が安定してないからそうなっているようだな。風魔法は一定だからな」

「ふむ、完璧な回転じゃない方がいいのか」

「風魔法もゆらぎを付けられるぞ。複雑にはなるが」


 1時間もしないうちに試作品ができた。

 基礎は攻撃魔道具であるからだろう。


「掃除魔道具、こんなの欲しかった」


 何日か後、ニッキが試作品を使ってみてそう感想を漏らした。


「洗濯魔道具も良いわよ」


 クラウも気に入ったようだ。


「温度調節魔道具が気に入ったぜ。なあリーダー」


「俺は風呂上りに扇風機魔道具だな。あれを使いながら冷蔵庫魔道具で冷やしたエールを飲むのは格別だ」


 エリエルの街は生活魔道具の一大生産地に向かって歩き始めたようだ。

 ファンタジーフィギュアの小物は売れている。

 なので、マニアックに行ってみた。

 野営道具なんかも作ったのだ。

 フィギュアの寸法に合わせた、テントやかまど、それに調理器具。


 やっぱり作る人によって、形も寸法も様々なので、同じ商品がない。

 どこかちょっと違う。


 マニアが世界中にできた。

 海外から注文があってパートのおばちゃんがビビった。


 里奈も俺も、英語は大学でやっただけでネイティブ並みとはいかない。

 活躍したのは護衛。

 ブラックバイパーの社員は英語圏の人だから当たり前だが、流暢に話した。

 ボーナスを出さないとな。


 エリクサーであるMP777の評判が凄い。

 テレビ特集も組まれている。

 なぜ薬として正式に認可しないのかと、インタビューを受けた人も評論家も言っていた。

 総理からは、困ったな、なんとかしてくれよと言われた。


 薬効成分が見つからないからだな。

 俺も認可が下りれば良いとは思っているけど、どうにもならない。


 何か薬にならない成分をでっち上げるとかすれば良いとは思うが。

 そうしたらきっと研究機関でその成分に薬効はありませんとか言うんだろうな。

 研究者は間抜けではないからな。

 簡単に騙されない。


 うーん、いかにすべきか。

 いっそのこと、薬じゃなくて、健康食品にするか。

 1個1億円越えの健康食品。

 それしかないな。


「というわけなんだが」


 空蝉(うつせみ)に話してみた。


「健康食品と言い張るわけですか。たしかに薬効成分はないですからね。禁止薬物に指定するにしても成分が出なければ打つ手がない。薬事法云々は病気が治るとさえ言わなければ問題ありません。宣伝などしなくても売れますからね」


 MP111とMP777は健康食品になった。

 ところが、効果のない偽物が現れた。


 だよね。

 常に品切れだからこうなると思っていた。

 ただ、ブラックバイパーの社員が優秀で詐欺師は軒並み刑務所にぶち込んだ。

 スパイ舐めるなよ。


 MP111は魔水さえあれば作れる。

 ただ異世界の人員が不足しているんだ。

 なので、ポーション作成機を作って異世界に持ち込んだ。

 煮て漉すぐらいはオートで出来る。

 魔力を込めたりする工程は魔道具の出番だ。

 魔導金属万歳。


 MP111の需要に応えられるだけの生産はなんとかなった。

 あとはエリクサーだな。

 こっちは材料が少ないから、増産は見込めない。

 あとで何とか考えよう。


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