第20話 展示即売会
Side:甲斐・均
総理大臣の秘密の趣味を知った。
これを上手く使えば、親父の会社はもっと大きくなる。
苦労して、手作り一品物のフィギュアを手に入れた。
30万もしたから、総理はきっと気に入ってくれるはず。
だが、数日経って送り返されてきた。
「何でだ」
「なに?」
婚約者の佐奈子が段ボールの中を覗き込んだ。
「総理の好みだと思ったんだけどな」
「オタクは細かいこだわりがあるそうよ。だからじゃない」
そして、手紙も一緒に届いてる。
総理からと思ったが、倉本の会社からだ。
ドーム球場で展示即売会を開くらしい。
俺の妨害工作が効いているに違いない。
だから、一発逆転に打って出た。
きっと、展示即売会はガラガラだろう。
行ってあざ笑ってやるのも良いかもな。
「佐奈子、ストーカーの奴、ドーム球場でイベントをやるらしい。行って笑ってやらないか」
「ええ、楽しみ」
展示即売会の日になった。
球場に入ると、観客席は人で一杯だった。
ブースとステージがあり、ブースでは販売が行われ、ステージでは歌手が歌を歌っていた。
あの歌手は知っている。
あんな有名な歌手を連れて来られるなんて。
「くそっ」
「何でこんなイベントをやれるほどお金があるのよ?!」
「どうせ借金したんだろうな」
「この分じゃ失敗ではない?」
「いいや、フィギュアの値段見たが3000円だ。売りまくっても赤字になるはずだ」
「良い気味。じゃああいつは破産確定ね」
「ダニ男、良い所で会った」
ストーカーの倉本が現れた。
「倉本、俺がダニだって言うのか!」
「そうだ。業務妨害と損害賠償で訴えたから」
「なんのことかな? 言い掛かりはよしてもらおう」
ちっ、不味いことになった。
警察に調べられたら、商品を発注してキャンセルしたのがばれてしまう。
だが、金で何とかなるだろう。
こいつはきっと金に困っているはずだ。
告訴を取り下げるに違いない。
「そうよ、そうよ。あなたこそ、ストーカーで訴えるわよ」
「ああ、そう言えば、総理が言ってたぜ。フィギュアを送りつけてきた気持ちの悪い男がいたって」
「何だって!」
「俺、総理と友達になったから」
「嘘よ! この男にそんなことができるはずない! イカサマしてるに違いないわ! 詐欺よ!」
「信じないのであれば好きにすると良いさ。ちなみに大統領とも友達だから」
「ホラを吹くのもいい加減にして!」
「君という人間が良く分かったよ。根っからの詐欺師で悪党なんだな」
「そうよ。そういう奴だわ」
「信じなくても俺は損はしないから」
「いくらだ。いくら欲しい?」
「なんの話?」
「告訴だ。いくらで取り下げる」
「取り下げたりなんかしないさ。前科1犯になってもらう。どうせ執行猶予がつくんだろうが、安心するなよ。交通違反でも何でしたら、現場を押さえて刑務所にぶち込んでやる。見張っているからな」
「くっ」
不味いことになった。
執行猶予がついても、見張られたら何も出来ない。
こうやって、脅しのネタを作るつもりか。
飲みに行って騒ぐことすらできなくなるなんて生活は嫌だ。
だが、脅しのネタを掴まれたら最後だ。
刑務所行きを阻止するためならきっと1億ぐらい要求されても払ってしまいそうだ。
謹慎生活を送るしかないか。
「ねぇ、このストーカー男をぎゃふんと言わせて」
「黙れ! いや、ごめん。イライラした。悪かった」
だが、変な縁ができたのもたしかに佐奈子のせいだ。
佐奈子さえいなければ犯罪など手を染めなかった。
「ちなみに、今までやった悪行も全て押さえてあるからな」
くそっ、こいつはどこまで知っている。
「何のことかな?」
「惚けるなら別に良い。お前、コンピューターを使った嫌がらせは初めてじゃないだろう」
くそっ、何でそれを。
大学時代から悪評を流したり、色々とやっている。
脅迫まがいのことをしたこともある。
「知らんな」
「まあいいさ」
帰り道、佐奈子との会話がなくなった。
「怒っているのか」
「ううん、あなたがイライラするのは分かる。私もイライラしたから」
表面上は仲直りした。
だが、佐奈子との間に溝ができたような気がする。
家に帰ると、親父が待っていた。
「これは何だ。裁判所からじゃないか」
「父さん、俺の手紙を開けたのか?」
「そんなことはどうでも良い。訴えられたんだな? 勝てるのか?!」
「勝つよ。どんなことをしても」
くそっ、何でこんなことに。
だが、裁判で負けるとは決まってない。
「裁判で負けるようなことがあれば、会社の跡継ぎは次男だ」
「そんな!」
「知ってるぞ。大学時代から色々とやっているな」
父さんに知られていたのか。
「あれはちょっとした遊びだよ」
「今までは、裁判沙汰にならないから放っておいた。だが、こうなった以上、責任を取れ」
「はい」
くそっ、なんとしても告訴を取り下げてもらわないと。
倉本はきっと1億ぐらい要求するんだろうな。
そんな金はない。
出せても2千万が精々だ。
とりあえず1千万でどうだと言ってみるか。
倉本の弁護士に電話する。
「甲斐と言います。倉本さんの告訴ことで電話しました。1千万の示談金でなんとかなりませんか」
「倉本からは10億積まれても断れと言われております。そんなはした金には興味がないそうです」
くっ、足元を見やがって。
どうしたら良いんだ。
もっと良く調べてから嫌がらせをするんだった。
あんなちっぽけな会社にこんなに力があるなんて。
完全に後手に回った。
なんとか挽回しないと。




