第18話 怪しい薬
「ボス、あの薬は好評です。ひとつ10万ドルで売っています」
様子を見に行ったブラックバイパー商事で空蝉にドヤ顔で言われた。
10万ドルというと1000万円を超えるな。
「誰が買うんだ?」
「要人が保険で買ってます。銃で撃たれても即死でなければ無傷ですから。それとプロスポーツ選手ですね。じん帯が切れても元通りだなんて使うしかないでしょう」
要人もプロスポーツ選手も金持ちだからな。
そりゃ飛びつくか。
「実は欠損や癌が治る薬がある」
「100万ドルでも買う人がいますね」
「数はあまり用意できないのが難点だが」
それに異世界人がその薬を使って助かるはずが助からないとなれば、摩擦を生む。
憎まれたくはない。
消費期限が近いのを譲ってもらおうかと思う。
「代金はブラックバイパーの株で良いんですか?」
「ああ、あぶく銭だからな。現金は毎月100万円も貰えば、あとは株で良い」
まあ株なら配当も出るし。
【都市伝説スレ・その45】
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最近、これと言った新しい話題がないな
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お前が提供すれば、俺もとっておきを話す
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ここは情報が早いが、どこからかのコピペだから
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メジャーリーガーの○○だけどじん帯損傷を奇跡の薬で治したらしいぞ
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奇跡の薬?もっと詳しく
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まだ臨床段階だそうだ
そのうち出回るかもな
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そんなの都市伝説でも何でもないだろ
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黒服の男達がジュラルミンケースに入れられた薬を持ってくるらしい
薬はラベルも何にもなし
薬のことは喋らないと誓約書を書かせられるみたいだ
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エイリアンが開発した薬かな
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誓約書を書いているのに何で漏れているんだ?
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そりゃ話す奴もいるだろう
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エイリアンの薬か
本当かな
ソースは?
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ソースはSNS
速攻で消された
ネット上で保存したのも消されたらしい
個人のパソコンに保存したのもいつの間にか消えてたって
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うぉ、それはやばいな
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大手の製薬会社が噛んでいるのかな
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常識的に考えたら、エイリアンだろう
空蝉にこの掲示板を見せられた。
「情報封鎖も限界がありまして、大々的に発表したいんですが、薬効成分が解析できないんですよね」
ポーションの薬効成分は薬草だろう。
だが、魔力が絡んでいるのだろうな。
魔力は普通の検査機器では検出できない。
なんて言おうかな。
「未知の物質としか言えないな。それじゃ駄目なのか?」
「いいえ、臨床の段階から進めないというだけです」
「まあ、数もそんなに用意できないし、臨床で良いんじゃない」
「ではそのように致します。本国からは製作者を出せと言ってますが、どう致しましょう」
「製作者もどんな原理で治るのか分からない。それと製作者を表に出すのなら、もう作らないと言っていると言っておけ。金の卵を産むガチョウを殺すことは愚策だとな」
「はい、その線でやってみます」
いずれやばいことになりそうだな。
国ひとつ相手取るのは俺では無理だ。
家族とか人質に取られたらなすすべがない。
それに異世界に侵略とかなったら嫌だ。
赤い国旗の国に嗅ぎ付けられたらもっとやばいことになる。
星条旗の国とは仲良くやりたい。
大統領と密約とか結べたらな。
一介の貿易商人の考えることでもないな。
何か考えないと。
「何か問題?」
会社に戻ったら里奈にそう問い掛けられた。
「俺は平和に商売したいだけなんだ」
「奇跡の魔法薬は欲望を刺激するには十分よね」
「どうしたら良いと思う?」
「大統領に手紙でも書いてみたら。正直に書いてだめなら強硬手段に打って出る」
俺のことは大統領に報告されているだろうな。
空蝉以外にも別組織があると考えた方が良いな。
きっとそうに違いない。
まだ倉の秘密はばれてないだろうけど。
『奇跡の魔法薬の製作者です。静かに生活するのが望みです。放っておいては貰えませんか。少しぐらい融通を利かせられる余地はありますから』、こう書いて手紙を出した。
空蝉に渡したら速攻で返事があった。
『よろしい。君が協力的である限り手を出さないでおこう』とある。
一度は信じてみるか。
上級回復ポーションの名前が決まった。
MP111だ。
掲示板を見たら、都市伝説の正体はただの薬だったと書かれていた。
ただ、価格は10万ドルなのは変わらない。
ぼったくりだな。
成分が不明なので、日本で使っている医者は皆無だ。
プロスポーツ選手は星条旗の国に行って薬を飲んでいるらしい。
値下げと、日本の認可を下ろせとの声が凄いが、数が用意できないから、どうしようもない。
そして、どこかの国が俺に目をつけた。
尾行があったのだが、護衛がけりをつけた。
確保してからどこに連れて行ったかは定かではない。
空蝉が赤い国旗の国の工作員でしたと報告。
やっぱりな。
これはちょっと参ったな。
異世界の技術に頼ろう。
「相談だ」
「金貨5枚な」
ロバート達は仕事に忠実だ。
全力で応えてくれる。
「他国の工作員に目を付けられた。何とかならないか」
「そりゃ何とでもなるだろう。高純度の魔導金属さえあればな」
「穏便な方法で頼む」
「リーダー、呪いの森を作ったらどうかな」
クラウがそう言った。
「それがあったか! 穏便といえば穏便だな」
ロバートがポンと手を打った。
「呪いの森って、なんか響きが穏便でないけど」
「迷いの森って言えば分かるか」
小説に良く出てる奴だ。
人間が近寄ろうとすると迷ってしまう。
「ああ、エルフが使う奴ね」
「そうだ。隠遁した賢者なんかも使う。魔導金属の魔力を使えば、街ひとつは包み込める」
呪いの森の魔道具を作ってもらった。
「これって俺みたいな者にも効くのか? 魔法は魔力を放出していると通らないはず」
「念の力だからな。通るぞ」
ああ、テレパシーって奴ね。
倉に呪いの森魔道具を設置した。
条件は、俺に害意をもって犯罪を実行しようとすると近づけなくなる。
今の街にいる限り俺は無敵だ
ただ、ドローンとかは防げない。
慢心は禁物だ。




