第十七章 プツリ・・・・・・我慢の限界
遂に第十七章まで来ました!どうぞお読み下さい!
部屋へ戻ると、兄上が私を待っていた。
「やっと戻ってきたな。一体どこへ行っていた」
「兄上には関係ないでしょう」
そう言って笑うと胸倉を掴まれた。
「っ・・・・・何をするんです?」
「とぼけるな!父上をどうした!早く答えろ!」
「何をおっしゃっているのか・・・・・父上は亡くなりました。もう既に葬式まで済ませたと言いましたよね」
「ふざけたことを!父上に何かあったのなら、まずは第一王子である私に教えるべきであろう。そうしてゆっくりとこの先のことを話し合うべきだ。なぜ父上のお顔を見せずに急いで葬式をあげる必要があったんだ?本当は、父上は亡くなっていないのだろ?」
「さあて、何のことやら」
「父上はどこだ!早く言え!」
「ふふふっ・・・・・」
「な、何がおかしい」
私は笑いが止まらなかった。そして兄上を見下すような視線でこう言った。
「言えませんよ。だってあなたはすぐに死ぬんですから」
「な、何だと・・・・・・・」
【・・・・・・・コロセ・・・・・・・・・】
頭の中に繰り返し流れる声。この声が私の頭を支配していく。
「入ってこい」
私が命令すると、十数もの騎士が部屋に入ってきた。
「な、何をする気だ・・・・・・・・」
【サア・・・・・・コロセ・・・・・・ソウスレバ・・・・スベテ・・・オマエノモノ二ナル・・・・】
いや、いくらなんでも殺すのはダメだ。人の命を奪うようなことはあってはならない・・・・・
【イマヤメタラ・・・・オマエハ・・・コイツニコロサレル・・・・・・モウモドレナイ・・・・・・】
もう、戻れない・・・・・・そうだ。今ためらえば兄上に殺されるかもしれない。運よく生き残っても、罪人として牢に入れられるだろう。
私は兄上を指さして騎士に命令した。
「・・・・・・・・殺せ・・・・・・・・」
その瞬間、兄上の体を騎士が取り押さえた。
「っ・・・・・離せ・・・・・・・!」
そして一人の騎士が、ロープを持ってきて、兄上の首に巻いた。
「さあ、首を絞めろ・・・・・・・自殺に見せかけるんだ・・・・・・・」
騎士は迷うことなくロープも持つ手に力を入れた。
「ぐあっ・・・・・・・・・・・・・!」
兄上が苦しんでいる・・・・・・・止めろと命令しなければ・・・・・・・
【コレデイイ・・・・・・コレデオウノザハ、オマエノモノダ・・・・・・・・】
だが、兄上が死んでしまう・・・・・・・
【イキテイタトシテモ、ジャマナダケダ・・・・・・コロサレルマエ二コロス・・・・・・コレデイイ】
兄上が足をバタつかせている・・・・・・・早くしなければ本当に死んでしまう・・・・・・・
【コレハ・・・・・・シカタノナイコト・・・・・・シンパイスルナ・・・・・・・・】
その瞬間、兄上の動きが止まった。力が抜けたように手足がブランと垂れ下がっている。
「あ、兄上・・・・・・・・」
ピクリとも動かない兄上を見て、体が震える。
遂に・・・・・・人の命を奪ってしまった・・・・・・・・・
【コレハ、シカタガナイコト・・・・・・・・】
仕方がない・・・・・・・そう、仕方がないことなんだ。
床に置かれた兄上の遺体に近づくと、騎士が持っていた剣を奪い、兄上の手に傷をつけた。
そこから溢れ出た血肉を無我夢中で貪る。
しばらくすると、手の震えが収まり、何の罪悪感もなくなった。
「やはり・・・・・・違うじゃないか・・・・・・・」
口元についた血を拭いながら笑った。
「やはり、感情とは強さではなく弱さだったのだ・・・・・・・!ほら見てみろ!感情がなくなれば、こうも人間は強くなれる・・・・・!やはり私の推測は正しかった・・・・・!今のこの私は、世界中の誰よりも強い存在となった!神よりも!悪魔よりも!ははははははは!!」
そうして最強の存在となった私は、シトリンの部屋を訪れた。
「お父様・・・・・・・」
そう呼ぶ我が娘に対して、何の感情も湧かなかった。
ただ、邪魔だった。神によって何らかの強大な力を与えられたシトリンが、自分にとって都合の悪い存在だった。
ならばいっそのこと、その強大な力を私だけのために使わせればいい_____
その結論に至った私は彼女を取り押さえ、無理やり兄上の血液を飲ませた。
この血液を飲めば感情をなくし、私に忠誠を誓うはずだ。
だが、そううまくはいかなかった。
シトリンは副作用により、記憶と声をも失ったのだ。
そう、どうやって力を発動すれば良いのか、彼女すらも分からなくなってしまったのだ。
これは確かに誤算ではあったが、これで彼女が私の脅威になることはもうない。
これで不安要素は完全に消し去ることができた。
シトリンをどうしようか考えたが、とりあえずジェイダイトに入れることにした。
そして反乱を起こそうとした罪人として処刑したことを公表した。そしてその存在を消そうとした。
だが、どういうわけか完全に消し去ることが出来なかった。それは彼女が生きているのが原因なのだろうか。
一応のために彼女の目に映ったものを私も見れるようにしておいた。
ここまで行い、ようやく一息つくことが出来た。もう何も心配事はない。あとは領土を広げていくことに力を注ごう。そう思っていた。
だが、幸運なことに第一王子が自らこの国へ足を踏み入れてくれた。
「シトリンとお前、果たして勝つのはどちらだろうな。実に楽しみだ」
現王は頬杖をついて笑った。
「一つだけ教えてくれ」
「何だ?」
グラナイトが口を開いた。
「何故、血液を飲んでも彼女の感情は戻らなかった」
「それは私にも分からない。何か事情があったんだろうが、それは私とは関係ない」
「娘のことなのに、関係ないだと・・・・・・・・・」
「シトリンはもう私の娘ではない。私の邪魔になる存在は誰であろうと排除する。生かしているだけありがたいと思え」
その瞬間、頭の中で何かがプツリと切れた。
「もう我慢できねえ・・・・・・・・お前だけは絶対に許さねえ・・・・・・・」
グラナイトは遂に我慢が出来なくなった。
「僕も、彼女も、絶対に助ける・・・・・・・誰も死なせはしない・・・・・・!」
今回もありがとうございました!




