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第十六章 父と娘の縁

第十六章です!どうぞお読み下さい!


「っ・・・・・・!」



グラナイトはとっさに剣を抜き、シトリンの攻撃を受け止めた。



「シトリン、何故だ・・・・・・・!」



シトリンは何も言わない。ただグラナイトに向かって剣を振り続けるだけだ。



「ははは!どうだ、王子。初恋の相手に殺されそうになる気分は」


「っ・・・・・・・・!」


シトリンの攻撃があまりにも強すぎて、何も言い返すことができなかった。


「おいおい、シトリンどうしちまったんだよ」


スピネルが頭を抱えると、現王が説明した。


「王子も使っていたではないか。誰かの見た景色を、他の誰かも見ることができる方法を」


「っ!?」


グラナイトはハッとした。シトリンと一歩距離を置くと、息を整える。


「シトリン、一度止まれ」


現王が命令すると、シトリンは止まって跪いた。


「それができるのは・・・・・・シェルだけのはず・・・・・何故その力を持たないお前にそれができるのだ」


「はははははは!お前は気づかなかったのか?シトリンのうなじにある模様に」


「まさか、あれは・・・・・・」


気が付かなかったわけではない。あの模様は確かに自分の体にあるものと似ていた。神から力を授かったときに、その証として付けられた模様。

自分のは月の模様で、シトリンのは太陽。太陽の模様があることを知らなかったがゆえに、彼女もシェルであることを見抜けなかったのだ。



「そうだ。私の娘であるシトリンこそ、三人目のシェルだったのだ」



「何だって!?」


コールとスピネルが驚いて声を上げた。


「だとしても分からない。何故彼女が僕たちに歯向かう!それに、何故彼女の感情をなくした!」



「お前の言いたいことは分かった。ならば説明しよう」



これはとある孤独な王の物語である。



「お父様!」


娘のシトリンの声が聞こえて振り向く。この頃は、まだこの子のことが何よりも大切でなによりも愛おしかったのだと思う。


「どうしたんだ?シトリン」


「お父様、私全然神の力が発言しなくて・・・・・・是非お父様に教えていただきたいのです!」


その瞬間、心臓が跳ねた。自分だけでなく、やはり娘にも神の力は現れない。


こうなってくると、信じたくはないが私の父親は父上ではないのだろう。


時間が経つにつれ、この苦しみから解き放たれると思っていた。だが違った。時間と共に、この心は蝕まれていった。


周りへの当たりもキツくなり、もう自分が一体何のために生きているのか分からなくなった。


自分が父上と血がつながっていないことがバレたら、この宮殿を追い出されてしまうのだろうか。



そんな不安が心を侵食し、やがて自分では制御出来なくなっていった。


兄上に睡眠薬を飲ませ、血液を採り、騎士たちの食事に混ぜた。

すぐに彼らは感情を失い、私の命令に従うようになった。


そして父上を死んだことにし、幽閉してさらに多くの血液を自らの体内に入れた。


自分がおかしくなっていることには気がついていた、だが、どうしても自分を止められなかった。



そんなある日、気が付いたら自分は禁忌の扉の前へ向かっていた。



禁忌の扉。ここは初代王が神と交信する場として作られた空間だ。

初代王が逝去されて何百年も経った今でもこの空間は残されており、その間誰も踏み入れたことがない。


一度入れば命の保証はないからだ。


『この扉は決して開けてはいけない』


そう何度も父上から教えられてきた。父上すら入ったことがないという。


だが私の心はその忠告を聞かなった。命を懸けても力が欲しかった。何だって良い。私に力をくれ。



そうして私は禁忌の扉を開けてしまった。



「っ・・・・・・・」


中は暗く、そしてとても広かった。


いや、広い訳ではない。そこは部屋ではなく、また別の空間に入ってしまっていたのだ。


「ここは、何なんだ」


そう呟いた時、突然目の前が明るくなった。


目を開けると、目の前には白髪の老人が立っていた。

足元を見ると、自分が雲の上に乗っていることが分かった。


「あ、あなたは神様なのですか」


私が聞くと、その老人はうなずく。


「お会いしたかったです。お願いです。私に力を授けてください」


「何故そなたに力を授けなければならないのだ」


神は冷たく言った。


「わざわざこの私に会いに来てくださったのですよね。この扉を開いてあなたに会うことが出来れば、神の力を授けてもらえると聞きました。私を認めてくださったのではないのですか」


「何を言っておる。そなたみたいな欲まみれの男にわしの力を与えられるはずがなかろう」


「では何故、私の目の前に現れて下さったのですか!」


「そなたに会いに来たのではない」


そう言って神は私の後ろを指した。


振り向くと、そこにはシトリンが立っていた。



「何故、お前がここに・・・・・・」



「そなたのことが心配だったのだろう。わしはこの子の純粋で優しい心に導かれ、ここに来たのだ」


そう言ってシトリンの前まで来ると、膝をついて目線を合わせた。


「心優しきお前に力を授けよう。お前はどのような力を望むのだ」


シトリンは一瞬ためらった後、こう答えた。


「この世の身分制度をなくせる力です」


「シトリン!お前、何を言って・・・・・・・」


私が止めようとすると、神は「黙っていろ」と私の口を閉ざした。


「何故、それを求めるのだ。お前はこの国の王女ではないか。身分がなくなれば、もう贅沢な暮らしが出来なくなるのだぞ」


「分かっています。それを承知の上でお願いしているのです」


「ほう?」


私はシトリンを止めようとした。この立場、そしてこの贅沢な暮らしを失うのはなんとしてでも避けたかった。


「私は、貧しい者たちがいない世界を作りたいのです。貴族とか、奴隷とか・・・・・そういうのがあるからこの世はいつまで経っても変わらないのです。お父様も、身分を失いたくない思いで壊れてしまった」


私は手を伸ばした。身分を失うことが怖くて、命を懸けてここに足を踏み入れた。それなのに、シトリンは自らそれを手放そうとしている。それだけはダメだ・・・・・絶対に・・・・・・・


「それなら何故お前は王になりたいと願わないのだ。王になれば、そなたはなんでも出来るのだぞ」


「権力とは恐ろしいものです。優しさを与えることもできますが、ほとんどの場合凶器になる。私は、そんなものなど望みません。むしろ自分で働いて得たお金で暮らしてみたいです。それはとても素晴らしいことです」


そう言うとシトリンは私を見た。今までに見たことがない笑顔。それは嬉しさというよりは、哀れみを含んだ表情だった。


「お父様も身分さえなければこんなに不安になることなどなかったのです。いっそのこと身分を捨ててしまいましょう?そうすればきっと楽になるはずです」


そしてシトリンは私に手を伸ばした。


「ね?お父様」


私はそう微笑むシトリンに手を伸ばし、勢いよく頬を叩いた。


シトリンは態勢を崩した後、ゆっくりとこちらを見て来た。その目には動揺と怒りが映っていた。


「ど、どうして・・・・・・・」


私は無理やり口を開けると、叫んだ。


「お前が身分など要らないと馬鹿なことを言うからだ!」


「お、父様・・・・・」


「普通に働いて暮らすことが素晴らしいことだと言ったな!そんなことはない!この世で最も大切なことは身分と権力だ!そんなことも分からないような娘に育て上げた覚えはない!卑しい奴隷と同じ身分でこれから暮らせと言うのか!そんな世界にすることは許さない!絶対だからな!」


呼吸が荒くなる。それでも言葉は止まらない。


「もしそんなことを次また言ったら、今度こそ親子の縁を切ってやる!お前のような娘など、この世から消してやる!」


そこまで言い捨てると、神はまた私の口を閉ざした。


「さあシトリン。父はそう申しておるが、お前はどうしたい。何の力が欲しいのだ。なんでも言ってみるが良い」


シトリンは左頬を赤く染めながら、拳を強く握った。

そして決断する。


「私はもう一度だけ父を信じます。なので、父をここから生きて出してあげて下さい。それと・・・・」


シトリンはこちらをチラリと見てから消え入りそうな声で言った。


「私に授けて下さる力は、あなた様が決めて下さいませんか」


「・・・・・そんなことをお願いされたのは初めてだ。なるほど、それがそなたの願いか?」


「・・・・・・・はい」


「分かった。そうしてやろう。だが、わしは人間に神の力を与えることでその願いを叶えておる。初代王は幼少期から両親からの虐待によって感情を失った。人間は感情があるからこそ強くなれると信じておった。それゆえ感情を豊かにする力を与えたのだ。ならば、お前にはどのような力を授けるべきか・・・」


神は顎に手を当てて考えた。


「よし、決めたぞ」


そう言って神は手を開いてシトリンに向けた。


「ある条件下でしか発動しない強力な力を授けよう。この力が発動する条件はお前にしか分からないように術を施してある」



まばゆい光にシトリンの体は包まれ、気が付いたらシトリンと共に扉の前で倒れていた。


ここからさらに盛り上がっていくと思います!

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