第十五章 負けるのはお前たちだ
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現王がいる王の間へ行く直前、アリアが不思議そうな顔をして呟いた。
「変だなあ」
「アリア?どうしたんだ?」
アリアは自分の体を触りながら言った。
「体が変だ。なんか、ソワソワする」
すると、それを近くで聞いていたスピネルが笑った。
「便所に行きたいんじゃないか?早く行っちまえよ!はははっ」
「違う。そんなんじゃないんだ。何て言うか、また何かに引っ張られてるような・・・・・」
「引っ張られている?」
「ああ」
そう言いながら、この力に導かれるように、体を傾けていく。
「あっちだ。あっちに引っ張られてる」
そう指を指した先にいたのはシトリンだった。
「いやいや、なんでシトリンに引っ張られるんだよ」
「ワチにも分からんだ。だけど、今までに感じたことのない力だ!きっとシトリンを守るために、ワチは生まれて来たんだ!」
「はははっ!何を言うかと思えば」
「笑うなスピネル!」
またアリアは拗ねてしまった。
そしてシトリンに近寄ると、足にべったりと張り付いた。
「あなたを守るためにアリア頑張る!」
急に愛想を振りまき始めると、コールは失笑した。
「この光景、過去にどこかで見たような、はははっ」
グラナイトのほうを見ると、グラナイトはそっぽを向いて「誰のことだか?」と知らないふりをした。
「あり、がとう」
シトリンはアリアの頭を撫でると、グラナイトは少し嫉妬した。
その様子を見ていたコールが
「前まではどこかの第五王子さんが頭を撫でられる立場だったのに、アリアに取られたな」
と周りに聞こえるように言うと、グラナイトはコールを睨んだ。
コールは視線を感じながらも、気にする素振りもなく、余裕の表情で呼びかけた。
「さあてと、それでは行こうか。憎き王の元へ」
こうして五人は王の間へと走った。
シトリンは状況をよく理解していなかったが、特に嫌な顔を見せずに彼らについていった。
感情を取り戻す前の二人とは違って、王への忠誠心はあまり強くないようだ。
それもそうだろう。記憶がないのだから。やはり、他の者と比べても、シトリンだけは違うように思えた。だが、今はそんなことを考えている場合ではない。
グラナイトは胸に手を当てた。緊張で鼓動が早い。だが安心しろ。我々は五人で一つだ。
五人いれば、必ず成功する。
「着いたぞ。ここが王の間だ」
先頭を走っていたコールが足を止める。
「コール、スピネル・・・・・・」
「心配すんな。覚悟はできてる」
あの日、ここで多くの仲間を失った彼らにとって、この場所へ戻ることは決して良い気分ではないはずだ。
「感謝する。ここまで来てくれて」
「ははっ。死ぬわけじゃあるまいし」
スピネルが笑うと、コールは重い扉をゆっくりと開けた。
中は広く、そして窓からは月明かりが差し込んでいる。
美しく、そして少し不気味なその空間の奥には、現王らしき男が椅子に腰かけていた。
「来たのか。お前たちにとっては、ここはあまり来たくない場所だと思っていたのだが・・・・・なあ、コール、スピネル」
現王は威厳のある低い声で話し始めた。
「はっ、心配してくれなくても、俺たちはもう仲間の死を克服したんだ」
「そうだぜ!あいつらのためにも今日ここで、お前を殺してやる!」
そう言って二人は腰から剣を抜いた。
「はははっ。そう簡単に行くかな」
「こんな状況でも、まだそんなに強気なのかよ!笑えるぜ!お前を守ってた騎士は、もう感情を取り戻してるんだぜ?お前を守ってくれるやつはもういない!」
「ああ、知っているとも」
「ならどうしてそんなにも強気なんだ!」
「待てスピネル・・・・・・・」
コールがスピネルの言葉を遮る。
「何かおかしい・・・・・」
「お、おかしい?」
スピネルが聞くと、グラナイトが駆けつけてきた。
「やはりお前もそう思ったか」
「ということは王子さんも?」
「ああ。どういうわけか、こちらの情報が筒抜けだ。まるで我々の会話を全て聞いていたようにな」
「な、何だって?」
スピネルが叫ぶと、現王が大声で笑った。
「ようやく気が付いたか。残念だが、お前たちの策は全て知っている。それだけではない。この数か月、お前たちに何があったのかも全てな」
「何だと!?」
「信じられぬというのなら、教えてやろう。まずは第一王子よ。お前はシトリンと二人でお風呂に入ったようだな。しかも抱きしめられると、興奮してその場で倒れてしまったとか」
「なっ・・・・・何故それを・・・・・・」
グラナイトが顔を真っ赤にすると、コールたちが口を押えて叫んだ。
「ふ、風呂に一緒に入ったのか・・・・・!?」
「もうそんな熱い仲になっちまったのか!?俺らが知らないうちに、そ、そ、そんな先まで発展してたなんて・・・・・・・」
「ち、違う!!!」
「今お前、認めてただろ!何故それを!とか言ってただろ!」
「いや、あれは事故であって・・・・・・・タオル一枚は互いに着ていた」
「「タオル一枚だと!?」」
二人の顔が赤くなる。一体どんな妄想をしているのやら。
「いや・・・・・その・・・・・とにかくだな、何故そんなことまで知っている!これはエピドートしか知らないはずだ!」
「エピドートには話して、なんで俺らには話さねえんだよ!」
「仲間外れかよ、結局俺たちは」
「ち、違う・・・・・あれも、事故であってだなあ」
「ああうるさいな。お前たちの声は癪に障る」
現王の発言によって、三人は静かになった。
「何故そんなことまで知っているか、と聞いたな」
「ああ、そうだ」
「その答えは今に分かる」
「どういうことだ!」
「お前、余の娘を想っていたのだろう?」
「っ・・・・・・・!」
「そして、そいつはもう死んだと思っている」
「何が言いたい!」
グラナイトが叫ぶと王は前のめりになって言った。
「先代王である私の父はまだ生きているではないか。兄は確かに殺して葬式も行ったが、娘の遺体を見たものは誰かいたのか?」
「っ・・・・・・・!まさか!」
「そうだ。娘はまだ死んでなどいない。まだ、な」
「ま、だ・・・・・・・?」
「そう、死ぬか生きるかはお前たち次第。余はこの時のために長い間準備をしてきたのだ!」
現王は両手を広げて不気味な笑いをこぼした。
「さあシトリン。あやつらに見せてやるのだ。王である余に背くと、どんな地獄を見ることになるのかをな!」
その瞬間、シトリンの体が勝手に動き出し、グラナイトの目の前まで剣が迫った。
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