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第十四章 命の代償

第十四章です。少し暗い話になってしまうかもしれません。

「コール、スピネル!どうした!」


グラナイトが二人に駆け寄ると、頭を抱えた二人の体はガクガクと震えていた。



「コランダム、ルチル、カルセドニー・・・・・」



一瞬、何を言っているのか分からなかったが、すぐにグラナイトは察した。

二人は思い出したのだ。仲間を殺し合ったあの夜のことを。


そして彼らが呼んでいる名前は、恐らくその者たちの名だろう。



「すまない・・・・・・すまない・・・・・・・」



薬のせいだとは言え、憎き王に忠誠を誓い、仲間だけではなく、他にも罪のない者たちの命を手にかけてしまったことが許せないのだ。


これが、人の命を奪った代償なのだろう。


グラナイトはしばらく彼らをそっとしてあげようとした。だが、シトリンはそんな彼らに冷たい言葉を浴びせた。



「コール、スピネル・・・・よわ、い・・・・・・・」



本人には悪気はなかったのかもしれない。だが、その言葉は二人の傷ついた心に深く刺さった。


「なんで、お前は何も感じないんだ・・・・・!お前が一番人を殺したじゃないか!なのに、なんでそんなに普通でいられるんだよ!」


スピネルが涙をあふれさせながら叫んだ。

だが、シトリンの心には何も刺さらなかった。



「かんじょ、う・・・・・ない、のは・・・・・・つよい・・・・・・・・」



その言葉に、スピネルの胸が詰まった。


過去に何度も言ってきた言葉だ。


『感情は人を弱くさせる。だから感情がない俺らは前よりも強い』


そう何度繰り返しシトリンに言ってきただろうか。悪いのはシトリンではない。自分たちが何度もシトリンにそう言い聞かせてきたのだ。


「ああ、そうだよな・・・・・・そうだよな・・・・・・・」



スピネルは天井を見上げて呟いた。



「俺が・・・・・・そう、言ったんだもんな・・・・・・・」



スピネルは両手で顔を覆って泣き叫んだ。


「いいや、お前ではない。悪いのは・・・・・・・運命だ・・・・・・・」


グラナイトはコールとスピネルの肩を抱き寄せ、二人が落ち着くまで抱きしめてあげていた。




「落ち着いたか」



「・・・・・・ああ・・・・・・・」


目を真っ赤に腫らした二人をソファに座らせると、シトリンはお茶を持ってきた。


「の、んで」


「ああ、ありがとな」


二人は熱いお茶をゆっくりと口に入れると、深くため息をついた。



「王子さん、そしてアリア。二人のおかげで、俺たちは元に戻れた。本当に何てお礼を言ったらいいか」



「気にしないでくれ。僕も君たちが元に戻ってくれてとても嬉しい。君たちには辛い記憶を思い出させてしまったが」


「いいんだ。いずれは思い出さなきゃいけなかったんだ。仲間の犠牲の上に、俺らは立ってるんだからよ」


「・・・・・・・」


グラナイトが黙ると、コールが笑った。


「暗くなるなよ。お前が悪いわけではないんだからさ。とにかく、現王を倒す方法を考えければいけないだろ?」


「・・・・・そうだな」


「だけどよお、なんでシトリンには薬が効かなかったんだ?少量だとしても、多少は聞くはずだろ?」


そう、そこが分からない。シトリンが女性だから、という答えでは納得がいかない。何か特別な体質なのだろうか。それとも他の理由が・・・・・・・


シトリンは全員に見られて首を傾げた。本人も良く分からないようだ。


「今は、シトリンが記憶や感情を取り戻さなくてよかったと思うよ」


「なんでだ?」


コールが言うと、スピネルが首を傾げる。


「俺たちはあの夜、仲間を一人も殺さなかっただろ?俺たち、弱かったからな。でもシトリンは強かった。強いがゆえに、あっという間に仲間のほとんどを殺してしまった・・・・・・」


「・・・・・・・」


「その現実を突きつけられたら、あいつの心は俺たちよりもズタズタに引き裂かれるだろうさ」


その場の空気が重くなった。その重さを感じていないのはシトリンだけだろう。


「まあとにかく、この問題は置いとこうぜ?他の騎士らも元に戻るんなら、今が現王を討つチャンスなんじゃねえのか?」


重い空気を断ち切ったのはスピネルだった。持ち前の元気さを今こそ生かしたのだ。


「ああそうだな。今は時間との勝負だ。何か策はあるのか、王子さん」


「先ほど話したように、先代王のアドバイス通りに策を講じてみた」


「ほう、聞かせてくれ」



「騎士たちが元に戻ったら現王につく者はほとんどいなくなるだろう。力を持っているとはいえ、一対一で直接戦えば、力は互角だろう。力が強くなったり、攻撃できる魔法を持っているわけではないからな」


「確かにそうだな。元々の力は感情を豊かにするってもんだしな」


「それに、あいつの体に流れる血液は完全なものではない。先代王の血が混じっていたとしても、何の力も持たない自身の血液が流れているからな」


「ってことは、あいつを恐れる必要なんてもうないってことか」


「そういうことになる。それにこちらは強い者たちが五人もいる。王につく騎士が数名いたとしても、こちらに勝算があるだろう」


「すげえな!勝てそうな気がしてきたぜ!」


スピネルが手を叩いて笑った。


コールも「この策なら」と承諾してくれた。



こうして五人は遂に王への攻撃を仕掛けることになった。




{神は天から地上の様子を見ていた。


「やはり、戦いを起こすか・・・・・・なるほど、これは興味深い」


この先、どのような結末になるのか気になるのは、我々人間だけではないようだ}


最後までお付き合いいただきありがとうございました!

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