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第十三章 赤い液体

第十三章です。どうぞお読みください!

「それで、これからどうなさるおつもりで?」


先代王の言葉に、グラナイトは少し考え込む。


「本来、僕がここにきた真の目的は、現王が神の力を持っていない確証を得て、その後で何か対策を練ろうと思っていたのですが・・・・・あなたのおかげで想定以上に情報を得ることが出来ました」


「それは何よりだ。この老いぼれも、少しは役に立てたようで」


「ですが、これから何をすれば良いのか、最善策が見つかりません」


「・・・・・グラナイト王子。確かあなたは自分もシェルであるとおっしゃりましたね」


「ええ、そうですが」


「私も神の力を持っていますが、遺伝的なものとは違い、あなたは神から直接その力を与えられた。ならば、私やスフェーンよりもあなたの力は比べ物にならないほど強いでしょう」


「ですが、僕の力は戦いに向いていません。現王のもとへ攻めに行ったとしても、その周りの騎士によって殺されてしまうでしょう」


すると先代王はアリアに目配せをした。


「ほら、受け取れ!」


アリアはポケットから小さな小瓶を取り出してグラナイトに渡した。中には赤い液体が入っている。


「これは、まさか」


「私の純粋な血液です。今の私の体には、スフェーンの血液が混じってしまった効力のほとんどない血液ですが、これは採血される前に採っておいたものです。もしかしたら、こんな日が訪れるかもしれないと・・・・・・・」



「っ、・・・・・感謝します・・・・・・」



「これを使ってジェイダイトを含む、騎士たちの感情を取り戻させてください。その後、あなたのその能力と頭を使って、現王を倒してください」


「あなたは・・・・それで良いのですか・・・・・・・・」


「私はたくさんの者たちをスフェーンに奪われました。彼は罪を償うべきです。あなたにお願いをするのも最低な話ですが、あなたがこの国のためにやってくれるというのなら・・・・・私の全てを懸けさせてください」


その言葉を聞くと、グラナイトは膝をついて先代王の手を強く握った。



「必ず、やり遂げて見せます。王の座を、必ずあなたにお返しすると誓いましょう」



これがグラナイトが初めて誰かに忠誠を誓った瞬間だった。



「それでは、行って参ります」


また倉庫へ戻って、騎士が首を回収しに扉を開ける瞬間を待つという策だ。


グラナイトが抜け道をくぐろうと膝をついたその時だった。


「待て、ワチも行く」


アリアが先頭へ回ろうとした。


「お前は倉庫とこの部屋しか行き来できないのだろう?なら倉庫まで来ずともこの部屋にいれば良いのではないか?」


「いいや?ワチも現王殺しに行くんだ!」


「いやいや、どうやって外へ出ようと言うんだ?」


「お前となら行けるみたいだ!そんな気がする」


グラナイトは首を傾げた。


「どういうことだ?」


「ワチにも分からねえんだ。だけど、そんな気がするんだ。なんか磁石みたいなんだ。今まではずっとこの部屋に引っ張られていたのに、お前が来たら今度はそっちに強く引っ張られるみたいな」


「まるで意味が分からないな」


「ワチだって分からねえんだ!でもお前が離れようとすると、ワチまで連れていかれそうなんだ。そんな感覚がある。だからお前と行くのは嫌だが、お前についていかなきゃならないんだ!」


「変な幽霊だな」


「幽霊じゃねえだ!妖精だ!」


アリアは拗ねると、抜け道をササクサと行ってしまった。仕方なくグラナイトもその後を追いかける。



騎士たちが扉を開けたのは思ったよりも早かった。


計画通り、扉が開いてすぐに二人の騎士を押さえつけ、一滴ずつ瓶の液体を飲ませた。すると、思った通り目に光が宿り始めた。


「思ったよりもお前強かったんだな」


グラナイトがアリアの腕を褒めると、アリアはとても誇らしげに笑った。


「そりゃあ力強い可愛い妖精さんだもんな!ひひひっ!」


そんな会話をしているうちに、騎士の二人がそわそわしながらこちらに話しかけてきた。


「お、俺たちは一体何を・・・・・・」


「これはどういう状況だ・・・・・・?」


グラナイトは事の経緯を端的に説明した。


二人はとても驚いていたが、感情を失っていた時の記憶を少しずつ思い出していったようだ。


「マラカイトの王子とはいえ、我々をお救いくださり、ありがとうございました。何か我々にお手伝いできることがあれば何でも言ってください!」


ありがたいことにそう申し出てくれたので、他の騎士たちにもこの液体を飲ませてほしいとお願いした。

もちろん、彼らは快く引き受けてくれた。

近くに置いてあった空の花瓶に液体を入れて持たせると、二人とはそこで別れた。


グラナイトとアリアは先を急いだ。手元に残っている液体はほんの僅かだ。

これを早くコールたちに飲ませなければいけない。


「そこを右だ!その後あそこを左!」


アリアは何故か宮殿の道に詳しかった。だが、グラナイトにしてはかなり心強かった。


見回りをしている騎士に気付かれないように細心の注意を払いながらも、コールたちと会う約束をしていた部屋までたどり着くことができた。



静かに扉を開けると、食事をしていた三人がこちらを見て目を丸くさせた。



「王子さん!良くここまでこれたな!」


「大丈夫だったか・・・・ってお前誰だよ!」


アリアに気が付くと、スピネルが腰に手を当てて叫んだ。


「ワチはアリア!この宮殿の可愛くて強い妖精さんだ!」


理解できていない三人にグラナイトはここまでの経緯を簡単に説明をした。


「先代王がまだ生きてるだって!?」


「まさか、我らが王がそんなことをするはずがない。きっと何かの間違いだ」


やはりそう言うと思った。早くこの液体を飲んでもらわないと、この先の話には進めない。


「とりあえずはこの液体を飲んでくれ。話はその後だ」


三人に液体を差し出すと、コールとスピネルはためらった。


「前にも言っただろ?俺たちは飲まないって」


「ああ、我らが王を裏切ることはできねえんだ」


やはり無理か。そう簡単には飲んでくれそうにない。


「分かってる。なら、シトリン。せめてお前だけでも飲んでくれ」


「ああそうだな。俺らはお前のためにこの薬を探してたんだからよ。飲んだら俺らみたいに毎日が楽しく過ごせるぜ?」


シトリンはうなずくと、迷うことなく液体を口に入れた。



「・・・・・・・」



全員が静かに彼女を見守る。ついにシトリンの感情が戻るのだ。彼女はどんな性格で、どのように笑うのか。この中の誰もその姿を知らない。


どれほど時間が経っただろうか。シトリンは何の表情も見せずに、ただそこに立っているだけだった。先ほどの二人の騎士のように目に光が宿るわけでもなく、特に何の変化も起こっていないように思われる。


「し、シトリン。何か変わったか・・・・・・?」


スピネルが興味津々で聞くが、シトリンは首を横に振る。


「な、にも・・・・・・・」


その瞬間、期待をしていた全員が大きなため息をついた。


「おい、全然だめじゃねえかよ。何の薬だよそれ」


スピネルが残念そうに吐き捨てると、グラナイトは液体を観察した。


「おかしいな・・・・・・」


先ほどの騎士の様子だと、効き目は確かにあったように見えたが、この状況は一体どういうことだ。


「確かめてみたらどうだ?ワチが思うに、コールとスピネルが飲んでみたら何か分かるんじゃないか!」


アリアがそう言って液体を差し出すと、二人は「確かにな」と言ってあっさり液体を飲み干してしまった。



「の、飲んだ・・・・・・・!?」



グラナイトはあれほどまでに嫌がっていた二人に、こうも簡単に液体を飲ませてしまったアリアに驚いた。


アリアがグラナイトを手招きすると耳元で小さく囁いた。


「ワチは話術にも優れてるんだ。まずそうなものを誰かが飲んで『うまい』と言ったら、周りのやつも飲みたくなるもんだろ?それを使ってみたのだ!」


シトリンに効果がなかったことを残念に思うのではなく、それを活用した妙案だった。



「お前は一体何者だ・・・・・・・?」



「可愛くて力強くて賢ーい妖精さんだ」


アリアは笑うとコールたちに声をかけた。


「どうだ?何か変化はあったか?」


コールたちは自分たちの手や足を見つめて首を傾げていたが、急に膝をついて苦しみ始めた。


「うっ・・・・・・・!」


「ぐあっ・・・・・・!」


二人は手で口を押えながら地面に這いつくばった。どうやら薬を飲みすぎたせいで、効き目が強く出てしまったようだ。


だが、しばらくすると、二人は落ち着いた様子でゆっくりと立ち上がった。


「・・・・・・・ここはどこだ・・・・・・・?」


「俺たち・・・・一体何を・・・・・・・」


やはり騎士二人と同様、初めは記憶障害が起こるようだ。だが、二人は失っていた感情を完全に取り戻したようだ。


「コール、スピネル。僕を覚えているか」


グラナイトが自分を指さして聞くと、二人は呼吸が激しくなって叫びだした。


「「あああああああああああ!!」」


窓がガタガタと揺れるほどの叫び声と共に、二人はまたガクッとその場に崩れ落ちた。


最後までお読みいただきありがとうございました!

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