表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/45

第八章 二人の絆

第八章です。今回は少し短くなっています。

エピドートは、宮殿を出た後は実家へと戻っていた。


「母さん、庭の草むしり終わったよ」


エピドートは土で汚れた頬を拭いながら家に入ってくる。


「ありがとね」


中で料理をしていた年老いた母親がこちらを見た。


「懐かしいねえ。あんたが宮殿に行く前は、毎日のようにそうやって草むしりをやってくれただろ?」


「そうだったな、母さん」


「もう宮殿には戻らなくていいのかい?」


「宮殿は辞めたんだ。多分、もう戻ることはないよ」


グラナイト様なら、自分がいなくとも自らの力で道を切り開いていくはずだ。少し寂しいが、彼の成長のためには自分が身を引いたほうがいい。


「グラナイト様のためにも、あのお方の側を離れるべきなんだ」


「確かに、グラナイト王子のためにはなるかもだね。でもね、あたしが心配してるのは、あんたのほうだよ」



「え?」



「家に帰ってきてからというもの、あんたはずっとソワソワしてるだろ?王子が元気にやっているか心配なんじゃないのかい?」


「母さん、それは・・・・・」


「あたしには分かるよ。だってあたしの息子だからな」


「・・・・・・・」


「いつか王子のほうから、お前に会いに来るさ。お前と王子は切っても切れない仲なんだよ。一緒にいる時間が多ければ多いほど、縁も切れにくい」


「王様にも、同じようなことを言われたよ・・・・・」


それを聞くと、母親はうなずく。


「王様は、あんたを相当気にかけてくれてるみたいだねえ。素晴らしいお方だ。あんたら二人のことをようくご存じのようだ」


そう言って母親が窓の外を見ると、何かに気が付いてニコッと笑った。



「噂をすれば、だねえ」



「え・・・・・・?」



その瞬間、扉が勢いよく開け放たれた。



「エピドート!」



「ぐ、グラナイト様!?」



扉を開けて入ってきたのは、まぎれもなくグラナイト王子であった。


「な、何故ここに・・・・・」


「お前を迎えに来たんだ」


「わ、私は既に騎士団を辞めた身ですよ?そう簡単に宮殿へは戻れません・・・・・・」


「いや、お前は辞めてなどいない」


「え?」


グラナイトは王から受け取った休暇許可証を広げて見せた。


「こ、これは・・・・・・」


「父上がお前がいつでも戻ってこられるようにと、この外出期間を休暇として申請して下さった」


「・・・・・・・王様」



『お前の力が必要となった時には、またあの子のそばについてやってくれないだろうか』



あの時の王の言葉は、本心だったのだ。王は初めから本当にエピドートに戻ってきてほしいと、準備をしていたのだ。


「あなたは本当に・・・・・・素晴らしい王様です」


そう呟くと、口元がかすかに緩んだ。


「エピドート。もう一度だけ、また僕のもとに戻ってきてくれないか」


エピドートはまた真剣な顔に戻って王子に問う。


「私がいなくなって、あなたは成長したのですか?私が去った理由をお忘れで?」


「ああ、よく覚えている。僕がまだ未熟であったからだろう」


「そうですね。それで、あなたは完璧な王子になれたということですか?こんな短期間で?」


「いや、まだ未熟だ」


「ならば・・・・・・」



「だが、僕は自分一人で何かを成し遂げることは、不可能だと理解できた。誰かに頼りすぎることは確かに良くない。だが、自分一人では何も成し遂げられない・・・・・・」



「・・・・・・」



「お前がいなくなって気が付いたよ。一人で何かをしようと頑張った。だが、無理だった。もう前みたいに正しい道から外れるような行動はしない。だから、また僕のもとへ戻ってきてくれ。お前がいなければ僕は未熟なままだ。お前と、そして他の仲間と共に、成長していきたいんだ」



「・・・・・・」


エピドートは考え込んだ。返事に困っている様子だった。



「迷うことなんてないよ」



エピドートの背中を押したのは、母親だった。


「人間、時には間違えることもあるさ。だがね、それを共に乗り越えていける仲間がいれば、どんな困難も易々と乗り越えられるもんさ。お前の心は何て言ってるんだい?少しでも戻りたいって気持ちがあれば迷わず行けばいいさ」


「だが、母さんは・・・・・・」


「あたしはまだ元気だからあんたがいなくたって何とでもなるよ。さあ、どうするんだい?」



「・・・・・私は・・・・・・・」



胸に手を当てて自分に問う。



また宮殿へ戻りたいか、グラナイト様のお側で仕えたいか。



「ああ、仕えたい・・・・・・」



エピドートは顔を上げた。



「宮殿へ戻りたい・・・・またグラナイト様のお側に戻りたい・・・・・・」


「っ・・・・・・エピドート・・・・!」


王子はエピドートの手を強く握った。


「ああ、帰ろう。そしてお前と共に成長していきたい。必ず、立派な王になってみせる!」


エピドートはそれを聞くと、笑顔でうなずいた。



もしかしたら、このお方なら本当に立派な王になれるかもしれない。いや、きっとなれる。私がお側でそうなれるように誠心誠意で支えますから。



エピドートは胸を叩いて、息を大きく吸った。



「これからまた、よろしくお願いします!」



そんな二人の様子を側で見守る母親の目から、一筋の涙が零れ落ちた。


今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ