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第七章 強さとは、誰かに頼ることだ

第七章です!どうぞお読み下さい!

僕の推測を確かめるためには、どうしても協力者がいる。


コール、スピネル、そしてシトリンにはその役目を任せられない。

なぜならば、彼らはジェイダイトであり、モルガナイト王に忠誠を誓っているからだ。


僕の推測を聞いて、彼らの王を侮辱しているように捉えられてしまえば、どうすることもできない。


だから今は彼らに言うことはできないのだ。


カーネリアンは、僕の信頼できる部下である。だが今は、もう少し頭の優れる者が欲しい。



そう、エピドートのような・・・・・・・・・



「エピドート・・・・・・」


今の僕に必要なのはお前だ。お前意外に適任者はいない。


「今のままの僕では・・・・・お前を振り向かせることはできないのか・・・・・・」


過去の自分よりも、今の自分はだいぶ良くなった。だが、これでもまだ完璧な人間とは言えない。

エピドートに胸を張って、『今の僕を信じてくれ』などと言える訳がない。



だが、今はどうしてもお前の力が必要なんだ、エピドート。



自然と拳に力が入る。



「行くしかない」



そう決めると、すぐに席を立ち、王のもとへ向かった。





コンコンコン



王の部屋の扉が響く。


「ほお、ようやく来たか」


王はそう呟くと、コホンと咳ばらいをして、「入れ」と威厳のある声で言った。


「失礼します」


扉を開けて入ってきたのは王の予想通り、グラナイトだった。


「珍しいな。お前が自らこの父に会いに来るとは」


「突然の訪問、申し訳ございません。至急お伺いしたいことがありまして」


「ああ、構わぬ。さあ、そこに掛けてくれ」


「はっ」


礼儀正しく促されたソファに腰掛ける。こうして向かい合わせで話をするのも何年ぶりだろう。


「それで、そんなに急いで余に何を聞きたいのだ」


「エピドートについてです」


「ほう、エピドートか。あやつがどうしたのだ?」


「彼が騎士団を辞めてしまったのはご存じですか」


「ああ、知っとるが」


「では、彼が今どこにいるのかはご存じで?」


「いや、知らんが?何故余が知っていると思うのだ」


王は表情一つ変えずにお茶を飲んだ。


「余はこの国の王だ。たかが一人の騎士のことなど気にしていられないだろう」


「いいえ」


グラナイトは王の目を見てハッキリと断言した。



「父上は、そんなお方ではありません」



その目はどこまでもまっすぐで、お茶を飲む王の手が一瞬止まった。


「何故そう思うのだ」



「父上は、人を平等に扱うお方だからです」



「・・・・・・・」


「だから・・・・息子である僕、そして兄弟たちにもほとんどお会いにならない。子供を特別扱いせず、民との交流を大切にしてらっしゃいます。そんなお方が、一介の騎士のことに目を向けぬはずがありません。それに、エピドートはこの宮殿の騎士になってから、もう二十年ほど経ちます。そんな者が宮殿を離れることになったら、恐らく一目会いに行ったのではないですか」


「ふむ・・・・・・」


王はうなずくとテーブルにティーカップを置いた。


「お前は余のことを良く分かっておるな。だが、少しだけ読み違えている部分がある。いくら王でも、全員を平等に扱うことは難しい。お前たちのことは、誰よりも大切に思っている。多くの民たちよりもずっとな」


「父上・・・・・・」


「エピドートについてもそうじゃ。彼とはもう長い付き合いになる。ただの騎士という存在だけでなく、友のような存在だ。あやつから話を聞くまで、余もまさか騎士を辞めるとは思いもしなかった。ただ、あやつが何か考え事をしている様子だったから、声をかけた次第だ」


「やはり、辞める前にエピドートにお会いしたのですね」


「ああ」


「彼は、今どこに?」


「・・・・・・・」


「父上・・・・・・お教えください」


王は息を吐くと、真剣な眼差しを向けた。



「あやつから事の全てを聞いた。お前がエピドートを探しているということは、あやつの力が必要となったからなのではないか」



グラナイトはうなずく。


「ならばお前は、あやつがもう一度お前のもとで働きたいと思えるような男になれたということか」


「・・・・・・・」



一瞬、視線が泳いだ。



「・・・・・・それが答えだろう・・・・・・・」


そう言うと、王は立ち上がった。


「今のままのお前では、まだエピドートを振り向かせるには早い。諦めよ」


王はそう呟くと、部屋から出ようとした。



「お待ちください!」



王子が勢いよく立ち上がり、王に体を向けた。勢いでテーブルが揺れる。



「まだ僕は未熟です。それでも、今はエピドートに頼るしかないのです。でもそれは僕がダメな人間だからではありません!僕は変わりました。彼がいなくなってようやく気付いたんです。僕はまだ完璧ではない・・・・・・ですが、その欠けた部分を取り戻すためには・・・・・彼の力がどうしても必要なのです。彼に頼るのは弱いからではありません・・・・・」


そして胸に手を当てた。



「強くなるためです・・・・・・!」



その瞳には青い炎がメラメラと揺れていた。しかし、その奥に宿る信念は揺れていなかった。


「っ・・・・・・・」


王はその瞬間初めて、心が揺らいだ。



この子なら、もしかしたら立派な王になれるかもしれない。



今まで自分は様々な努力をしてきた。できるだけ民に寄り添い、身分関係なく対等に接することを意識してきた。そしてこの国は今日まで平和を築いている。


だが、自分にはいつも何かが欠けているような気がしていた。それは今日まで理解することができなかったが、今ようやく分かった。



「完璧になる必要なんてない・・・・・・時には誰かに頼ればよかったのか・・・・・・」



「・・・・・・父上・・・・・・・?」



心の声が表に出ていたことに、ハッと気が付く。そして誤魔化すように咳ばらいをした。


「エピドートが、どこにいるか・・・・・だったな。あやつは実家に帰った」


「っ・・・・・・・!父上、何故・・・・・・・・」


何故急に教えてくれたのか、グラナイトは父親の考えていることが分からなかった。


「お前の言うことも、一理あると思ったまでだ。一人で完璧になろうとしたって、それは無理な話だったのだ。誰かに頼ればよかったのだが、余には信頼できる者が誰一人としていなかったのだ」


「・・・・・・・」


「お前とエピドートの関係性が羨ましい。余には持っていないものが、お前にはある。今のお前なら、もしかしたらエピドートを振り向かせられるかもしれん。さあ、行きなさい」


「父上、感謝します」



グラナイトが笑顔で部屋を出て行こうとすると、王は「待て」と止めた。


「これを持っていけ」


そう渡されたのは、一枚の紙だった。


「これは・・・・・・・」


「エピドートの休暇許可証だ。あやつは騎士を辞めるつもりのようだったが、休暇中にしておいた。あやつは辞めたのではなく、休暇を取って宮殿を出たことになっておる。あやつが望めば、いつでも戻ってこられるぞ」


「父上・・・・・・・!何とお礼を申し上げたら良いか・・・・・・誠に感謝します!」


そう深々と礼をすると、今度こそ部屋を出て行った。



「ふう・・・・・・」



王はため息をついた。



「余が思っていたよりも、あやつは王の素質があったのかもしれんな。いや、もしかしたら・・・・・周りの者たちがあやつをそうしたのかもしれん。強さとは、誰かに頼ることなのかもしれんな」


そう呟く王の顔はいつもよりも優しく思えた。


最後までお読みいただきありがとうございました!

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