第六章 これはただの恋バナではない、重要な恋バナだ
第六章です。是非お読みください!
「・・・・・・・」
グラナイトは少し後悔していた。
「少し、強めに言い過ぎただろうか」
先ほどのベリルへの態度が少し冷たく接してしまったように感じたのだ。
「あんな風に言うつもりなどなかったのだが、何故あんなに冷たくしてしまったのか」
元々二人は幼いころから仲は悪くなかった。第二王子でありながら母親の身分が低いベリルに対して、見下すことも、蔑むこともせずに、他の兄弟と同じように接していた。
ベリルもまた、平等に扱ってくれる兄に対して敬意を持っていた。普段はもっと笑顔で接していたのだが、どうもあの時は調子が狂っていた。
「また会った時にでも、共にお茶でもと誘ってみるか」
ベリルは王子でありながら、騎士団のまとめ役という特別な立場にいる。本来この国では王子は他の役職に就くことはできない。だが、こんな自分でも誰かの役に立てればと、王様にお願いをしてまとめ役という今までになかった役職を与えらえた。
彼は国のため、民のために何かをしないと気が済まない性格である。母親の身分が低かったからこんなに民に親密になれるのだろうか。
何度も思ってしまうが、自分よりも彼のほうが王にふさわしいかもしれない。
「いや・・・・・僕はもう決めたはずだ。必ず彼女のために立派な王になってみせると」
そう宣言して硬く拳を握る。
彼女はもういない。だが、彼女が望んだ国を作ることはできる。
「彼女は現王の実の娘であったというのに・・・・・・父親に殺されるなんて・・・・・なんと哀れな」
彼女のことを思うと胸が痛む。自分がその立場であったら、どんなに苦しいだろうか。
「先代の王は優しそうなお方であったのに・・・・・それに元気そうであられた。何故急になくなってしまったのだろうか・・・・・」
現王が即位したのは四年前。先代王が病で亡くなり、そして第一王子もその後を追って自殺。そして第二王子であった現王が即位したのだ。
「・・・・・・第一王子が自殺?」
その部分がどうも引っかかった。
「僕がどれほど父上を敬っていたとしても、流石に父上が亡くなったからと言って自殺するとは思えない。第一王子ならば父親の死後、自分が王位を継承することなど、幼いころから心の準備はできていたはずだ。僕だってそうだ。同じ第一王子だから分かる。自殺なんてあり得ない」
そしてもう一つの疑問が生まれた。
「先代王だって十年前にお会いした時には、まだまだご健在であられた。孫娘がいるとはいえ、まだ白髪交じりではあったが、黒髪の六十前後のように思えた。あれから六年であんなにすぐに病で亡くなるだろうか・・・・・・」
その時、王子の頭にある一つの仮説が浮かび上がった。
「まさか・・・・・・」
いや、待て。まだ確証はない。あくまでこれは一つの仮説にすぎない。期待をするにはまだ早い。
「あの二人のもとへ行かなければ・・・・・・」
王子は自分の仮説を確かめるため、二人のもとへ急いだ。
「コール、スピネル!いるか!」
「な、何だよ急に入ってきやがって」
「どうしたんだ、何があった」
勢いよく扉を開け放った王子に二人は驚いてベッドから跳ね起きた。
「すまない二人とも。聞きたいことがあるんだ」
二人は顔を見合わせると、すぐにソファに座った。
グラナイトも二人と向かい合うようにして、向かい側のソファに腰掛ける。
「それで、聞きたい事とは?」
「ああ。この前二人には王女の話を聞かせてもらっただろう?王女が反乱を起こそうとしたとか」
「ああしたけどよお。まだ王女の件を引きずってんのか?もう違う女に目を向けたらどうだ?」
「僕は他の女に目を向ける気はないし、今はそんな話をしている場合ではないんだ」
「ただの恋バナではなさそうだな。スピネルの話は気にせず、何でも聞いてくれ」
スピネルは何か言いたげな表情だったが、口を閉じて何も言わなかった。
「感謝する、コール。それでだが、王女の時の話をもっと詳しく聞きたいんだ」
「例えば?」
「王女が反乱を起こそうとしたのは何年前だ」
「・・・・・何年前、だったっけなあ」
「頼む、大体でいい。三年前よりも前だったか、後だったか」
「ああ、そういえば。三、四年前だったような気がするな」
「それは確かか?」
「ああ、確かな。なあスピネル」
コールが聞くと、スピネルは口を閉じたまま黙ってうなずいた。
「だそうだ、王子さん。で、それがどうかしたんだ?」
すると王子の口元に笑みがこぼれた。
「ど、どうしたんだ?」
コールが引き気味に聞くと、グラナイトは首を横に振った。
「いや、何でもない。少しだけ真相に近づけただけだ」
「真相?何のだ?」
「僕の初恋相手についてだ」
「やっぱりただの恋バナだったのかよ!」
「何のことだか。僕にとってはそれはただの恋バナではなく、もっと重要な恋バナだっただけに過ぎない」
そう言われてしまったら、彼らは何も言い返せない。勝手に血液を手に入れる良い案が浮かんだのかもしれないと期待したのは、二人のほうなのだから。
「とにかく、感謝する。おかげで疑問が晴れた」
「それはよかったよ、少しでもお役に立てて」
二人は少し腑に落ちなさそうだったが、グラナイトはすぐに部屋を出て、自分の部屋へと戻った。
「よし、今ある情報をまとめてみよう」
先ほど二人には何も教えなかったが、グラナイトはとある可能性を見出した。
それは二人に言える内容ではなかったため、その時は誤魔化して部屋を出たが、もしこれが本当であれば、形勢は逆転するかもしれない。
「いや、まだ一部の確信しか得られていない。もう少し情報が欲しい」
そこでまた、グラナイトはエピドートの言葉を思い出して、優しい表情で笑った。
「やっぱり外へ行ってみたのが正解だったな。エピドート・・・・・・」
窓の外を見上げると、雲一つない青空の向こう側で、神がこちらを見ているような気分になった。
{神は鏡を通して彼らを天から見ていた。そして微笑んだ。
「面白くなってきたな。もしかしたら、あやつらは誠にこの世界を変えてしまうかもしれんな」
そう呟くと、鏡を置いてどこかへ行ってしまった}
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