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第五章 二人の美しい王子

第五章です。是非お読みください!

「その必要はない」


聞き覚えのある声。そしてこの美しい長い髪。間違いない。グラナイト王子だ。


強く抱き寄せらていて、顔を見ることができなかったが、すぐに王子だと分かった。

これは母だから分かることなのか、それとも・・・・・・



「あ、兄上・・・・・・」



男が王子を見て目を丸くしてそう呟いた。


「あ、にうえ?」


シトリンが呟くと、グラナイトが補足した。


「ああ、そうだ。こいつは僕の弟であり、この国の第二王子、ベリルだ」


シトリンはチラリとベリルのほうを見た。ベリルは照れたように頭を掻くと


「申し遅れました。私はこの国の第二王子であり、騎士団を取りまとめております、ベリルと申します」


と言って姿勢を正し、丁寧に礼をした。


「この者は僕が招待した。これで確認が取れただろ?」


グラナイトが不気味に微笑みながら言った。


「ああ、兄上のお客様でしたか。美しい女性を連行しなければいけないかと思って焦りましたよ。よかったです」


「ああ、説明をしていなくて悪かった。だが、彼女は確かに僕の連れだ。怪しまなくていい」


「なるほど、分かりました。ああ、ということは・・・・・ふふふっ」


「何を笑っているんだ」



「いえ、すみません。ただ・・・・()鹿()()()は兄上だったんだなと・・・・・ふふふっ」



「ば、ばかおうじ?」



グラナイトが理解できないでいると、ベリルはシトリンの握られていないほうの手を優しくつかみ、口づけを落とした。



「なっ・・・・!?」



グラナイトは思わず息を呑んだ。シトリンは自分が何をされたか全く分かっていない。



「それではレディ。私はこれで失礼します。またお会いできる機会を楽しみにしております」



そう優しく微笑むと、礼儀正しく二人に対して礼をし、その場を去った。


「な、何なんだ。格好つけて。シトリン、あいつはお前に何かしたか?」


シトリンは王子から一歩離れると、首を横に振った。


「そ、そうか・・・・ならいいんだが。それよりも、馬鹿王子って・・・・・アウインのやつ・・・・変なことを教えるからこんなことになるんだ・・・・!」


そう言って頭を掻いた。こういう仕草は兄弟そろって子供らしい。


「なんで、ここ、にいるの?」


シトリンが聞くと、王子はそっぽを向いて呟いた。


「たまたまだ・・・・・」


半分本当で半分嘘だ。

この庭へ来たのはたまたまだったが、二人が親密に話をしているのが何故か気になって、遠くで隠れて話を聞いていたのだ。シトリンが手を握ろうとすると、考えるより先に思わず出てきてしまったのだ。


自分でも何故出てきてしまったのか分からない。あのままアウインのもとへ行ったとしても、彼女が自分の連れであることが確認されるし、手を握られたところでどうも思わないはずだ。


シトリンは初恋の相手ではないのだ。あの時のシトリンへの執着は自分の勘違いであったのに、何故だろう。他の男といると胸がチクリと痛む。


コールとスピネルが彼女の側にいても、全く気にならないのに・・・・・何故だ。


説明のできないこの謎。また一つ新たな問題が生まれてしまった。


「エピドートのやつ、外へ出たら余計に問題が増えたじゃないか」


そう呟くと、シトリンが袖を掴んで少し引っ張った。



「あり、がとう」



前よりもずっと上達したその五文字に、グラナイトの顔に自然と笑顔が戻る。


「別に・・・・大したことない。また何かあったら遠慮なく言ってくれ」


そう照れながら言うと、シトリンの顔を見た。

こんなにしっかりと明るいところで見るのは久しぶりだった。


「っ・・・・・・・」


確かにベリルが言っていたように、シトリンの顔は美しいかもしれない。多少の傷は残っているものの、最近は質の良い温泉に毎日浸からせていたので肌と黒い髪に艶がある。傷も少しずつ癒えてきているように思える。


一瞬その顔に触れてみたくなったが、首を振って意識を戻す。


僕たちはそんな関係になってはいけない。自分は死ぬまでずっと亡くなった彼女をただ一途に思っていたいから。


グラナイトは拳を強く握りしめてシトリンに別れを告げた。




「今まで女性にまったく興味を示さなかったのに、兄上があんなに必死になるなんて」


騎士団の訓練場まで戻る道のりを歩いていたベリルは先ほどの情景を不思議に思っていた。


「でも兄上って、もっと賢い女性が好みだったはずなんだけどなあ」


悪い意味ではない。ただ、昔グラナイトが『馬鹿な女には興味がない』と言っていたことを思い出して不思議に思っているだけだ。


彼女は馬鹿ではなさそうだったが、何か事情があって言葉をうまく話すことが出来ないのだろうとは、大体予想はつく。


「それにしても、兄上を馬鹿王子って言うなんて・・・・・ふふふっ面白いレディだ」


ほんの少しだけ興味がわいた。もしまた会えるなら、今度は誰にも邪魔されずに、あの女性をもっと観察してみたい。



「あ、ベリル殿!」


訓練場に着くと、剣を振っていた騎士たちがこちらに走ってきた。


「見回りお疲れ様です。少し遅かったですね。何かあったのですか?」


笑顔で話しかけてくる騎士たち。彼らにとってベリルという男がどういう存在であるのかがすぐに分かる。


「少し気になる女性と会ってきたんですよ」


「気になる女性!?もしかしてついにベリル殿にも春が来たのですか!」


そう興奮する騎士たちにベリルは笑って誤魔化す。


「いえいえ、そんなんじゃありませんよ。ただ、彼女の剣さばきを見て、あなた方もまだまだだなと思ったまでです」


「それは、どういう?」


「その女性も騎士団なのですか?」


「いいえ。違いますが、あなた方以上の腕の持ち主でした」


「そんな女性が!?是非一度その方と剣を交えてみたいです!」


「ふふふっ。残念ながらそれは無理ですね」


「どうしてですか?」



「その女性のようになるために、これからは今よりももっと過酷な訓練をあなた方に行うつもりですから」



それを聞いた途端、騎士たちは互いに顔を見合わせて



「「それだけはご勘弁をおおおお!」」



と天に向かって叫んだ。


今回もお読みいただきありがとうございました。

みなさんはグラナイト王子とベリル王子、どちらが好みの男性でしょうか?

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