第四章 謎と美を宿す男
謎の男の正体を考察しながら読んでみてください!
翌日、王子は悩んでいた。
三日という短い期間で案を出してほしい、と言ったのはあまりにも過酷だっただろうか。
だが、計画を先延ばしにするわけにもいかない。
あまり長く彼らをここにとどめておくと、より一層怪しさを増す。そうなれば王はさらに警戒心を強め、血液を手に入れるのが難しくなる。
「王から直接血液を採決するためには、僕が透明になって近づく必要がある。だが、僕はすべてを隠すことができない。手足が見えていたら、すぐにバレてしまう・・・・・どうすればいいだろうか」
その時一つの案が浮かんできた。
「っ・・・・・!僕の首が本物か確かめるために王が近づいてきたとき、王を襲うか?向こうから近づいてくるのであれば、きっと簡単に傷をつけることができる。そこから滴り落ちた血液を少しもらって飲ませることができたら・・・・・・・」
だがすぐに首を横に振った。
「いや、ダメだ。コールたちがそれを許すわけがない。王の体に傷をつけたら、むしろ僕を殺そうとするかもしれない」
そうなれば全ての計画が水の泡になる。それだけは何としてでも避けなければ。
「問題が多すぎる・・・・・・・クソ・・・・・頭が痛くなるな・・・・・」
そう呟いて頭を掻く。苛立ちのあまり、隠していた素の自分が出てきてしまった。
「どうしたらいいと思う、エピドー・・・・・・」
そう言いかけて、途中でハッと気が付いた。
「あいつはもう・・・・いないんだったな・・・・・」
ハアッと大きなため息をつくと、また机に向き直る。
頭を抱えながら違う案を考えてみることにした。
「現王の血は無理か・・・・・なら先代王の血はどうだろうか・・・・・・」
違う線で考えるが、やはりこれも無理がある。そもそも先代王の血がそんなにたくさん残っているとは考えにくい。
「そもそも何故先代王の血液を飲ませたんだ?自分の血液でいいだろ。そんなに自分の血液がなくなるのが嫌だったのかよ」
しばらく色々と案を考えてみたが、全く妙案が浮かばなかった。一旦諦めて部屋を出てみることにした。
『どうしても良い案が浮かばないのであれば、たまには気分転換に外に行かれてはいかがでしょうか。もしかしたら良い案が浮かぶかもしれませんよ』
過去にそうエピドートが言っていたのを思い出して、チクリと胸が痛くなった。
その頃、珍しくシトリンも部屋を出ていた。
先日コールとスピネルから「体が鈍るといけないから、たまには運動したほうがいい」と言われたからである。特訓のおかげで多少は自分の意思で話せるようにはなったが、まだ二人の意見に頼りがちだった。
今もアウインが一日に数十分ほど部屋に来て特訓を支えてくれている。そうお願いしたのはエピドートだったが、今では彼も努力している彼女に積極的に教えていた。
「・・・・・・」
運動しろとは言われたが、どこへ行き、何をしたらいいか分からなかった。
何しろ、王子は最近部屋には訪れず、この宮殿のどこに何があるかの説明をろくにしなかったからだ。
だがシトリンは王子を誘拐した際に、多少は宮殿の地図を頭に入れていた。
その記憶を頼りになんとなくといった感じで歩いてみる。
立場上、密偵である彼女はあまり宮殿をウロウロとするのは良くないのだが、シトリンの部屋があるこの一角周辺だけは許可が下りている。
「・・・・・・」
シトリンがたどり着いたのは部屋の窓からも見える、近くの花畑だった。白い石畳の横にはピンクのバラが一面中に咲き誇っている。
だがもちろんシトリンにはこの美しさが分からない。とにかく運動が出来そうなひらけた場所を探していた。
「・・・・・・」
シトリンはある場所で足を止める。そこのその周辺だけにはバラが咲いておらず、運動しやすそうなほどよい硬さの芝生が広がっていた。
シトリンはここで剣の練習をしようと決めた。白い薄いワンピースを着ていたが、格好なんてどうでもよかった。むしろ下着が見えようが見えまいが、彼女にとっては足元がとても動きやすい格好である。
シトリンは剣を構えると、勢いよく空気を切った。何度も何度も繰り返し同じ動きをする。
まるで目の前に見えない敵がいるかのように。
すると木の陰から気配を感じた。シトリンはすぐに振り返り目を凝らすが、太陽のせいでこちら側があまりにも明るいので陰の中の人物を特定できなかった。
「だ、れ?」
覚えたての単語を口にすると、陰の中から声が聞こえた。
「す、すみません。あまりにも綺麗な剣さばきでしたので、つい見惚れてしまいました・・・・・」
そう謝りながら太陽の下へ出てきたのは、一人の若者だった。成人しているかしてないか、といったところだろう。短髪の金髪は、太陽の光を受けると直視できないほどの輝きを持っていた。目の色は碧く、少し垂れ目で優しそうな印象を受けた。
「すみません、こっそり見られるのは嫌でしたよね。すみません」
どこか緊張した様子で頭を掻きながら話す彼は、会ったことはないが、どこか見覚えのある顔つきをしていた。
「女性が剣をあんな風に振れるなんて、すごいなあって思ったんです。あ、すみません。女性だから、とか言っちゃいけませんよね。見下してるわけじゃないんです。本当にすごいなあって思っただけなんです・・・・・すみません・・・・・」
そうオドオドと謝る彼にシトリンは首を横に振って言った。
「だい、じょうぶ・・・・・」
その瞬間、彼の表情が安心したような笑顔へと変わった。
「ありがとうございます。そういえば、あなたどういった方でしょうか?騎士団に所属している方々のお名前と顔はほとんど頭に入っていますが、あなたのような方は初めてお見かけしました。もしかして大事なお客様でしょうか?」
そう問われ、シトリンは困惑してしまった。丁寧な言葉遣いには慣れていないし、自分の立場がよく分かっていない。
シトリンは首を傾げるしかなかった。
「わ、わからない・・・・・」
「え、分からないのですか?どうしてここにいるのかも?」
彼の問いにシトリンはうなずいた。
「アウ、イン・・・・ことば・・・・・・ばか、おう、じ・・・・・・」
「え?アウインですか?アウインという方は知っていますが・・・・・馬鹿王子とは一体・・・・・・」
「ばか、おうじ・・・・・はつこ、い・・・・・まちがえ、た・・・・・・わ、たしと・・・・・・」
「す、すみません・・・・・何をおっしゃりたいのか分からないです・・・・ですが、アウインとおっしゃりましたね。アウインがどこにいるのかは知っていますよ。よければアウインのもとへお連れしましょうか?」
シトリンは少し考えてから首を横に振って言った。
「だい、じょうぶ」
「そ、そうですか?ですが、私もこのまま帰るわけにもいかないのです。あなたがどういった立場の方なのか分からないと、私もあなたを侵入者として捕えなければなりません。アウインのもとへ行って、あなたが宮殿へ招待された方だと確認が取れましたら、何もせずに帰りますので。確認だけさせてください」
そう言って優しく手を差し出した。
シトリンは理解できない様子だったが、ゆっくりと彼の手を握ろうとしたその時_____
「その必要はない」
目の前に人影が現れたと思うと、素早くシトリンの手を握って抱き寄せた。
みなさんが想像する美しい金髪の男はどういう男性でしょうか。人それぞれ少しずつ違うと思います。
是非自分の好みの男性を想像しながらこの先も読んでみてください!




