第三章 僕が首になろう
第二十六章です。是非お読みください。
「お、俺らを使うって・・・・・どういうことだ?」
スピネルが問うと、王子は人差し指を立てて補足する。
「君たちと共に僕が宮殿に赴く」
「それって、わざわざお前から捕まりに行くもんじゃねえかよ!」
「いや、違うぞ?もう既に捕まっているんだ」
「な、何言ってんだ?」
スピネルは困ったように頭を掻いた。
「なあ、コール。お前は分かんのか?」
「ああ、おおよそはな」
「さ、流石だな・・・・・」
「スピネル、ちゃんと君にも分かるように説明するさ。僕の話を聞いてくれ」
そう言って王子はできるだけ分かりやすく説明をする。
「恐らくだが、君たちが僕たちと会っていることは、モルガナイト王に知られているはずだ。マラカイトには、君たち以外の密偵もたくさんいるだろうからな。その者たちが王に密告してるだろう」
「だな。あのじいさんだって元々はモルガナイトの情報屋だったからな。そういった類の者は何人か送られてきてるはずだ」
「ああ。だからこそ、君たちはこのまま国へ戻ったとしても、マラカイト側についていると思われる可能性が高い。裏切者ではない証拠さえあれば、その疑念は晴れる」
「なるほどな。つまり俺たちは王の首を手に入れるためにわざとお前に捕まって王に近づいた。ということにすればいいと?」
「そういうことだ」
王子はうなずくと、スピネルはまた頭を抱えた。
「ああ?じゃあ俺らがマラカイト王の首を持って帰ってもいいってことか?」
「そんなわけないだろ。流石に父上のお命を犠牲にはしない」
王子の声が一気に冷たくなった。
「・・・・・だよな・・・・・じゃあどうすんだ?」
「王の首ではなくとも、第一王子の首もそれなりの価値があると思うが?」
「ちょっと待ってください!」
王子の言葉にカーネリアンが焦った様子で止めに入る。
「お、お気持ちは分かりますが、そう早まらないでください!確かに愛する人を失ったらこの世界に生きている意味なんてない、って思ってしまうのは理解できます・・・・・ですが、生きていれば良いことも一つや二つはあると思います・・・・・・ですから、どうか死なないでください!」
「カーネリアン・・・・・・」
王子は今にも泣き出しそうな様子の彼女のほうへ体を向けた。
「君は・・・・・・何を言っているんだい?」
「え?」
カーネリアンが腑抜けた声を出すと、王子は思わず笑って吹き出した。
「はははっ、何を勘違いしているんだい?僕は死のうとなんてしていないよ。ちゃんと最後まで説明を聞いてくれ」
「で、ですが・・・・・自分の首って言っていたではありませんか!」
「説明を最後まで聞かないから早とちりしてしまうんだ。ほら見てみろ。スピネルも君と同じように思っていたみたいだ」
カーネリアンがスピネルを見ると、確かに理解できていないと言わんばかりの顔をしていた。
「はははっ、二人はよく似てるな。一旦落ち着いて、僕の話を最後まで聞いてくれ。質問はその後受け付ける」
そう言われたら、カーネリアンは黙るしかなかった。
「確かに、君たちには僕の首を持って行ってもらいたい。だが、僕が死ぬわけではない。僕が首になればいい」
「はあ?やっぱ死ぬんじゃねえかよ!」
「スピネル、黙っていてくれ」
「あ・・・・・」
スピネルは慌てて両手で口元を隠した。
あれほど最後まで聞けと言ったのに、黙って聞くことすらできないのがこの男だ。
「僕は神の力によって、年齢、そして性別まで変えられることは話したと思うが、実はもう一つだけ変えられるものがある。それは体の一部を透明にすることができる、というものだ」
その瞬間、王子がまた指をパチンと鳴らす。すると先ほどと同様、全身からまばゆい光が発せられ王子の体を包み込んだ。
「な・・・・・・!」
目を開けた途端、スピネルが驚嘆の声を上げた。
スピネルだけではない。その場にいた全員が目の前の光景にくぎ付けになった。
「どうだ?これで納得できただろ?」
そう言って笑う王子の顔の下には、胴体がなかった。
顔だけが浮いているように見えるが、実際は首から下が透明になっただけなのである。
それにしても、目の前の光景は現実味がなく、気持ちが悪いものであった。
「これで説明は終わった。さあ、何か質問はあるか?遠慮なく聞いていい」
「ありすぎだろ!何から突っ込めばいいか分からねえよ!」
ようやく口を開けるようになったスピネルが勢いよく叫んだ。
「あの・・・・とりあえず・・・・・胴体を元の姿に戻してください・・・・・・!」
王子を直視することができないカーネリアンが懇願する。だが、シトリンは一切動じることなく、その姿を直視していた。
「おっとすまない」
そう言うと、すぐに元の姿に戻った。
「これで問題ないか?」
「はい。問題ありません」
カーネリアンは視線を戻して、いつもの真面目な表情に戻った。
「今ので分かったかと思うが、こうすれば生きたまま首を持っていくことができるだろ?これならモルガナイト王を騙せるはずだ」
「だが、我らが王を騙すなんて俺らにはできねえぜ・・・・・」
「騙すのではなく、疑いを晴らすために必要なことなんだ」
「そうか・・・・・・?」
そう言ってチラッとコールを見ると、コールは納得してうなずいた。
「それであれば不忠ではないと俺は思う。時にはこういう行為も必要だ。俺たちが永遠に我らが王を支えていくためにはな」
「そ、そうだよな」
スピネルもコールに説得されて、大丈夫だと思えてきた。
「じゃあ俺らが、首だけになったお前を王の前に持っていけばいいんだよな?」
「ああ。王の首をとるために、わざと捕まって宮殿へ連行されたことにすればいい。王の首は無理だったが、王子の首は持って帰れたと首を見せれば信じるだろう」
「なるほどな」
四人は納得できたようだった。カーネリアンは胸に手を当てて心を落ち着かせていた。
「四人とも、宮殿へ入る計画はこれで問題なさそうか?」
そう聞くと、四人は次々とうなずいた。
「感謝する。それでは次にどうやって王の血液を手に入れるか、という問題だ」
「そこが一番の難問だな」
コールは顎に手を当てて考える。
「ああ、僕自身もこれと言った案が出てこないでいるんだ。コールは何かいい案はあるか?」
「いや、自信を持って言えるようなものはない。もう少し時間が欲しい。だが、お前が透明になれるんだったら透明人間になればすぐに解決できるんだろうが、その案を出さないということは、何か問題があるのか?」
「痛いところをつくな。その通りだ。流石の僕も、全ての部位を透明にすることはできないんだ」
「つまり、一部はそのままになってしまうんだな」
「ああ。だから先ほどは首を透明にすることはできなかったんだ。首を透明にすると、今度は手か足が元に戻ってしまう」
「その欠点をどうするか、もう少しだけ考えさせてほしい」
「分かった。三日間、考える時間を設けよう。他の三人も考えてみてくれ。僕もできる限り案を出してみる」
こうして四人は一旦それぞれの部屋へと戻り、三日後にまた集まることとなった。
今回もお読みいただきありがとうございました。
少し気持ち悪いと感じさせてしまったらごめんなさい。




