第三章 最高のチーム?
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コールの立てた計画は順調に進んだ。
外に出た騎士と召使から奪った服で変装さえすれば、宮中に入ることなど大したことではない。
宮中に入ると、シトリンはそれぞれの任務を遂行するために二人と分かれた。
シトリンは王子を探して捕らえる役割。他の二人は犯人に仕立て上げるための騎士を数名殺し、見つかりにくいところに隠す役割。
王子を探す間、何人もの召使とすれ違っているが、コールの言った通り気づかれることはなかった。
宮殿にはたくさんの部屋がある。王や王子の大きな部屋の隣には、小さな部屋がいくつもある。それらは身の回りの世話をする召使の部屋だ。
奥に進んでいくに連れて、人の数も増えていく。
大きな扉の前では強そうな護衛が警備していた。中からは偉そうな男たちの笑い声が聞こえてくる。おそらく、かなり身分の高い者たちの集まりだろう。
一応のために、シトリンは比較的人通りが少ない道を選ぶ。
あたりを警戒しながらも、進む速さは変わらない。
そして宮殿の中の一番端にある小さな離宮に足を踏み入れた。
小さいとは言いつつも、部屋数は十数個はあるだろう。
一つ一つの扉を丁寧に確認していると、シトリンはある部屋の前で足を止めた。
その扉は今までのものと違って大きく、そして豪華な装飾が施されていた。
だがその割には、扉の前にいる召使の数がやけに少ない。
その点と昨夜のコールの話を合わせて考察すると、グラナイト王子の部屋である可能性が高い。
シトリンは静かに扉の前にいる召使たちに近づいた。
幸いにも彼女たちは、話に夢中でシトリンに気付いていないようだ。
その隙に、シトリンは部屋に入ることに成功した。
扉を静かに閉めると、目の前の小さなベッドに目が行く。
その上にはすやすやと寝息を立てて眠る小さな男の子がいた。
銀色のふわっとした髪の毛は、シトリンとは違って太陽の光を反射して光っていた。
体を小さく丸めるその姿は、まるで天使のようだった。
顔が小さく、眠っていても美しい男の子であることは見て取れる。
その寝顔を見た者は皆こういうだろう。
「なんと愛らしいのか」と。
「彼こそがマラカイトの王子に相応しい」と。
だが今の彼女がそんなことなど思うはずもなく、素早くその王子に布にしみ込ませた眠り薬をかがせた。
こうして先程よりもさらに深い眠りに落ちた王子を、彼女は抱きかかえて窓から飛び降りた。
地上までは三メートルほどあったが、草むらになっていたからか一切音を立てることも、足を痛めることもなかった。
シトリンは二人と合流するために、草むらや木陰などをうまく活用しながら目的地へと足を速める。
王子さえ見つけることができれば、あとは帰るだけだ。早く二人を見つけなければ。
やっとの思いで二人との合流地点だった小さな庭園に足を踏み入れると、そこにはこちらに笑顔で手を振る二人がいた。
「お、思ったよりも早かったな」
「俺らも今来たところだぜ。騎士を三人殺して、使われていなさそうな倉庫に隠してきた」
シトリンは二人のそばに王子を乱暴に置く。
「おいおい、もう少し優しく置けよ。目を覚ましたらどうすんだ?」
シトリンはきょとんとした顔で、二人に眠り薬入りの布を見せる。
「これでぐっすり眠らせてあるから大丈夫だって?いや、そういう問題じゃないだろう。もし頭でもぶつけて死んじまったら、俺らがここに来た意味がねえだろうが」
シトリンは納得したような表情を見せた。
「おっと、話してる場合じゃないな。早めにここから出るぞ。スピネル、お前はさっき盗んできた荷車の箱に王子を入れろ。急げ!」
「はいよ!」
スピネルは手慣れた手つきで箱の底に王子を寝かせた。その上に板をかぶせると見事な二重底の箱が出来上がった。相当厳重に検査しなければ、バレることはない。
「板の上に布をたくさん詰めておけ」
言われたとおりにスピネルは手を動かす。布は軽いので、万が一底板が王子の体にずり落ちてきても、命を落とすことはないだろう。
「よし、できたぜ!」
そういうと、スピネルは荷車を引き始めた。コールも後ろについて一緒に押していく。
召使の格好をしているシトリンは、彼らと一緒にいては不自然なので、少しあとからついていくことにした。
宮殿の外につながる大きな門の前には、本物の騎士が見張りを続けている。
「慎重にいくぞ、スピネル」
「おう!」
行きはたやすく入れたものの、このような大荷物を持っていては流石に呼び止められる。
「通行証は持っているか」
「はい、もちろんです」
二人とも、殺した騎士から奪い取っていた通行証を見せた。
それを見て騎士はうなずくと、荷車のほうを指さす。
「この中身はなんだ?見せろ」
怖そうな男を前にしても、スピネルは非常に冷静だった。
「ああ、これは宮殿で使われていたカーテンです。最近カーテンを新しいものに買い替えたんですよ。これはもう要らなくなったやつです」
スピネルは言い終わる前に、迷うことなく箱を開けた。
騎士は怪しみながら布をどかしていった。だが二重底ということには気づかず、箱を閉めてから言った。
「怪しいものは何も入っていないな。よし、通っていいぞ」
「ありがとうございます!」
そう言ってまた荷車を押し進める。
その後ろから来ていたシトリンも同じように通行証を見せると、すんなりと通してもらえた。
「案外あっさり通れたな」
「これもコールのおかげだ」
二人は路地裏で荷車を置き捨て、王子を布にくるむ。王子を担ぐ役目はもちろんスピネルだ。
そしてすぐに追いついてきたシトリンとともに、人通りのほとんどない細い道を早足で進んでいった。
「まさかこんなにうまくいくとはな」
「俺らって本当に運がいいんだと思うぜ!」
二人は楽しそうに笑っていた。
シトリンもそんな二人を後ろから見つめていた。
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