第二十三章 「さあ、会議を始めよう」
第二十三話です。どうぞお読みください!
王子はその後、シトリンと共にコールとスピネルの部屋に行き、謝罪をした。
その内容は、自分勝手な行いのせいで、三人と約束した件についてを疎かにしてしまったこと、そしてシトリンには全てを話したことの二つだ。
王子の話を聞いた二人は、互いに顔を合わせたあと、明るい顔でうなずいた。
「心配すんな。俺らは別に何とも思ってねえぜ」
「だな、人間生きてりゃ過ちを犯すことくらいあるだろ?しかもご丁寧に謝ってもくれた。気にすんなよ」
そうコールが言った後に、ハッとして口を手で押さえた。
「俺としたことが・・・・癖でまた言葉遣いが元に戻ってしまいました。申し訳ありません、王子さん」
コールが頭を下げると、スピネルが「なんだそんなことかよ。びっくりさせんな」と呟くのが聞こえた。
「いや、気にしないでくれ。拠点にいた時のような口調で話してくれて構わない。僕たちは、協力関係を結んだ、大切な仲間だ。気軽に接してほしい」
「そう言ってくれるなら・・・・・・」
コールは頭を掻きながら笑った。
「分かったよ、王子。じゃあこんなかんじでまた話すから、怒らないでくれよ?」
「ああ、もちろんだ、コール。スピネルも、気にせずにそのままで話してくれ」
「まあ、俺はあんま気にしてねえけどな。ははははは!」
スピネルの笑い声に、他の二人もつられて笑った。
これで王子の心も少しは軽くなっただろう。
「よ、かった・・・・・」
その時シトリンが小さく呟いた。
虫の声のようにその声は小さかったが、近くにいたコールたちはその声をしっかり聞くことができた。
「ああ!シトリン、本当にしゃべれるようになったんだな!」
「お前の声、初めて聞いたぜ!」
そう言って二人はシトリンを抱きしめながら喜んだ。
だが、その言葉に王子は引っかかった。
「初めて聞いた?どういうことだ?一緒に訓練をしていたときには、話す機会があったんだろ?」
「ああ、それは・・・・・・」
「ジェイダイトは二つのチームに分かれて行動してたんだ。俺らはシトリンとは違うチームだったから、一度も話す機会はなかったんだ」
「だな。もともとシトリンは、あんまり話すほうの人間じゃなかったのか、シトリンと同じチームのやつらでもその声を聞いたことがあるやつは少なかったなあ」
「そうなのか。だが一人くらいはいたんだろ?その者はシトリンと話してどう思ったんだ?話してみると意外と楽しかったとか?」
「スピネル、シトリンの声を聞いたやつって誰だったか覚えてるか?」
「いやあ・・・・・・俺の知る限り、そんなやついなかったな。お前と仲が良かったやつの中にはいなかったのかよお」
「いや、いなかったと思う。だが、誰かが言ってたな・・・・・シトリンは一言もしゃべらないから、だんだんあいつの思ってることが分かるようになってきたって、な」
「あ?つまり、どういうことだよ。それじゃあまるで、薬を飲む前からシトリンが話せなかったみたいじゃねえか」
「・・・・そう、だよな・・・・・・」
そう言って二人はシトリンを見る。
「まあでもあれか、シトリンは一人だけ女だったんだもんな。そんな簡単に男に心なんか開かなかったんだと思うぜ?コツコツと夜中に一人で剣を振ってるような真面目なやつだったからな」
「そう、だな。あの時と比べたら、随分俺たち仲良くなったよな」
そう言ってまた二人は笑い出した。
「さあ、王子。雑談なんかしてる場合じゃないな。早く薬を手に入れる方法を考えるとしよう」
「ああ、そうだな」
そう言うと、四人は王子の部屋の隠し部屋へと向かった。
王子は部屋の前に立っていた黒ずくめの女を呼び、彼女も部屋に招き入れた。
「おい、なんでこの女がいるんだよ。俺、こいつが怖えんだよなあ・・・・・」
スピネルがボソボソと呟くと、王子が女の紹介を改めて行った。
「シトリンは初めてだったよな。改めて紹介しよう。彼女の名はカーネリアン。この名前は昔、僕が彼女につけた名前だ」
「なんで王子がつけたんだ?」
「それは、彼女は生まれた時から奴隷で、名前がなかったんだ。僕が引き取ったとき、彼女に名前を与えた」
「誠に、グラナイト様には感謝しかありません。一生お仕えする所存です」
「はは、その時からこんな調子でね。ありがたいことに、僕に忠誠を誓ってくれているんだ」
「まるで俺らと我らが王の関係みたいだな」
スピネルが笑うと、王子がコホンと咳ばらいをした。
「そういうわけで、彼女は普段僕が宮殿を出る際には、隠れて僕を見守ってくれているんだ。影の護衛ってわけさ」
「なるほど。だから王子を誘拐していたときも、ずっと遠くから見守っていたって訳か・・・・・」
「はい・・・・・ですが、流石の私でも岩が転がってきたときには、王子をお助けすることは不可能でした。あの時、シトリン殿がいらっしゃらなければ、グラナイト様は助からなかったでしょう。誠にシトリン殿には感謝しかありません!」
アウインと同様、彼女の口調も何とも独特である。
ハキハキとした言葉遣いで、ありながらどこか不思議なオーラがある。
シトリンはカーネリアンに敬礼をされ、少し戸惑った後に見よう見まねで敬礼を返してみた。
「シトリンが、敬礼してるぞ!」
「はは、これはまた珍しい・・・・・!」
敬礼の似合わないシトリンを見ると、失笑した。
「シトリン殿を馬鹿にするな!」
カーネリアンは、名前に似合わず、拳骨を今度は二人にお見舞いした。
「いてて・・・・・どうして俺らには冷たいんだよ」
「そうだ。俺たちにも敬意を払ったらどうだ」
頭を押さえながら文句を言う二人を見た王子が、笑いながら言葉を足した。
「彼女は僕とシトリンへの敬意が強いんだろ。だから僕たちを悪く言う君たちのことをよく思っていないのさ。許してやってくれ」
二人はしぶしぶうなずくと、王子のほうへ体を向けた。
「さあ。互いに仲が深まったところで、記念すべき第一回目の会議を始めるとしよう」
「おう、待ってたぜ」
「ようやくだな」
「最初の議題。それはどうやって『感情を豊かにする』薬・・・・いや、王の血液を手に入れるか。僕にもいくつか案はあるが・・・・・・さあ、まずは皆の考えを僕に教えてくれ」
こうして、長き戦いへと続く、最初の会議が始まったのだった。
今回も本当にありがとうございました!
段々とここから戦いのほうへ向かっていく予定です。
笑い、そして悲しみ。様々な感情が混ざり合うものにしていこうと思っています。




