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第二十二章 許してもらおうとは思っていない、それでも伝えたい。

第二十二章です。タイトルを考えるのに、時間がかかりました。


「結局、僕は独りになってしまった・・・・・」



何かを手に入れようとする度に、自分の周りから大切な人たちがいなくなっていく。



彼女と結婚したいと願ったら、彼女が死んだ。


彼女の記憶を失いたくないと願ったら、エピドートが離れていった。



「次は・・・・誰が僕のそばから去ってしまうんだろうか」


開かれた古本を閉じ、王子はため息をつく。


「僕は・・・・王にふさわしくないのだろうか」


この十年間、立派な王となるために、様々な活動を行ってきた。

貧しい者のために食糧を配り、薬が必要な者にはわずかだがお金を渡してやった。


自分の中では、なかなかよくやっていると思っていた。これなら、きっと立派な王になれると。彼女にも認めてもらえる、そしたら好意を向けてくれるだろうと。


だが、それは間違っていた。


真の立派な王というのは、決して見返りを求めない。


今の僕は、自分のためだけに民に尽くしていた。見返りがなければ、誰かのために何かをしようなどとは一切思わなかっただろう。


「それではモルガナイト王と、何も変わらないじゃないか・・・・・・・!」



ようやく己の過ちに気が付いた。自分は十年前から、何一つ変わっていない。



だが、もう何もかもが遅い。自分の周りには、もう誰もいない。


シトリンも、コールもスピネルも、きっと許してはくれないだろう。もう一週間も彼らをほったらかしにしてしまったのだから。


「・・・・・・・」


だが、ここで逃げるのも良くない。


例え許してもらえなかったとしても、今の自分の過ちを認め、彼らに謝らなければならない。


だがもし、それで本当に彼らを失ったら・・・・・・・そう言った言葉が何度も頭をよぎる。


「いや、それでも謝るべきだ。グラナイト・・・・・・」


自分を勇気づけると、まずはシトリンに会うために部屋を出た。



シトリンの部屋の前まで来ると、王子は足を止めた。


心拍数が上がっていることが分かる。子供の姿になれば、もっと心が楽になるだろう。

だが、自分の心のうちをしっかりと打ち明けるためには、この姿のままであるべきだ。


「シトリン・・・・入るぞ・・・・・」


軽く声をかけてから恐る恐る扉を開けた。


「っ・・・・・・!」


驚くことに、部屋の中にいたのはシトリン一人だけではなかった。


「あれ!グラナイト王子じゃないっすか!どうしたんすか?最近来られなかったんで、今日も来ないかなあって思ってたんすよ!」


この独特な口の悪さ。確か、エピソードの部下のアウインという名前の男だったか。


「何故お前がここにいる・・・・・・」


シトリンとソファに座っている、この異様な光景に王子は戸惑いを隠せなかった。


シトリンはキョトンとした子をしていた。何せ子供の姿ではないのだから、相手が誰なのか分かるわけもない。


「何故お前がシトリンと親しくしているんだ。説明してもらおうか」


「ああ、それはっすねえ」


その時だった。



「こん、にち、は・・・・・・」



「っ・・・・・・!!」


シトリンが口を開いて、言葉を発した。その言葉はたどたどしかったが、だが、確実に上手な発音でそう言っていた。


「っ・・・・・これは・・・・・・どういう・・・・・・」


王子が言葉に詰まると、シトリンは口をパクパクさせながら、もう一度


「こ、んにち・・・・は・・・・・・」


と確かに挨拶をした。


「アウイン・・・・・・何故・・・・・何故シトリンがしゃべっているんだ・・・・・・・」


「すんません、驚きましたよね。団長に頼まれて、一週間前からシトリンさんとしゃべる特訓をしてたんすよ」


「エピドートが?」


「はい。『感情を豊かにする薬』を手に入れたとしても、副作用で失った記憶と声は取り戻せないかもしれないって言ってました」


「・・・・・・」


「だから団長は、発声練習から教えてやってほしいって俺に頼んで来たんすよ」


するとアウインはシトリンを見る。


「シトリンさんはすっげー賢いんす。一週間もしないうちに、もう短い言葉を発することができるようになったんすから」


そう説明するアウインの表情はどこか誇らしげだった。


「他にも話せる言葉があるのか?」


「はい。もちろんっす。シトリンさん、さあ見せて下さいよ、俺たちの努力の成果を!」


はしゃぐアウインに背中を叩かれて、シトリンは背筋をピーンと伸ばす。


「な、んで?」


言葉はたどたどしかったが、ハッキリと言った。


「ね、すごいでしょ!ほら、他にも見せてあげてくださいよ!」


「・・・・・・ば・・・・・・・・」


「ば?」



「・・・・・バカ、おう、じ・・・・・・」



「・・・・・・・・」


その言葉が発せられた瞬間、笑顔のアウインの額には冷や汗が浮かんだ。


「アウイン・・・・・これは一体どういうことだ?馬鹿王子、とは・・・・・・」


「えっとお、その・・・・・一体どこで覚えたんすかねえ。そんな言葉・・・・・アハハハハ・・・・」


笑いを絶やさないまま、アウインは立ち上がってぎこちなく扉へと向かう。


「そ、それでは、俺はこの辺で失礼しやすね・・・・・・それでは・・・・・・!」


そう言い残すと、焦ったように扉を開けて出て行ってしまった。


「全く、裏で僕の悪口を言ってたんだな・・・・・・」


王子がため息をつくと、シトリンが袖を引っ張った。


「お・・・・おか、えり・・・・・・」


「っ・・・・・・・!」


王子はシトリンの横に並んで座った。


「僕が、誰なのか分かっているのか・・・・?」


そう聞くと、シトリンはうなずく。



「バカ、お、うじ」



「っ・・・・・・・・」


アウインが変なことを教えたせいで、シトリンの口が悪くなった。


だがシトリンは、姿が変わっても自分が誰なのか分かっているようだ。


「すまない・・・・・・君も色々と思うことはあるだろうが、改めて全て説明させてほしい」


そう言って、王子はシトリンに全てを打ち明けた。


自分は第一王子であり、そしてシェルでもある。何のために三人をさらい、そしてどうしてシトリンだけを部屋に閉じ込めていたのか、など全部話した。


シトリンは何も言わずに王子の話を聞いていた。どこまで理解しているかは分からない。


「だから・・・・・本当にすまなかった。君には本当に申し訳ないことをしたと思ってる。この罪は一生をかけて償おう。だから薬を手に入れるまでもう少しだけ待ってくれないか」


王子は頭を下げて謝った。もちろん、これで全て解決するとは思っていない。すぐにでも薬を探す準備はできている。


すると、頭に優しい感触があった。


「っ・・・・・・」


それはシトリンの手だった。昔みたいに頭を優しく撫でてくれている。


「・・・・・僕は・・・・・子供じゃないんだよ・・・・・ずっと騙していたんだ・・・・・・なのに・・・・・・どうして・・・・・・・」


いつもは何も言わないシトリンだったが、今日は違う。必死に覚えた言葉を発しようとしていた。



「・・・・・だ・・・・・・だい、じょ・・・・うぶ・・・・・」



「っ・・・・・・・!」



「だい、じょう・・・ぶ・・・・・・」



シトリンが頑張って伝えると、王子の視界が涙でにじんだ。


「ありがとう・・・・・・本当に、ありがとう・・・・・・・」


胸がいっぱいになり、優しくシトリンを抱きしめる。


「・・・・・・・?」


シトリンにはまだこの状況を理解することは難しかったが、それでも優しく抱きしめ返してあげた。




その時、必死に我慢していた涙が、一粒目から零れ落ちた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!

タイトル通りの物語になっていたでしょうか?

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