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第十三章 ドキドキ?二人だけのバスタイム

こんにちは。第十三章です。よかったら読んでみてください!

夜中を過ぎて、シトリンはようやく目を覚ました。



体を起こし、辺りを確認する。月の光が入っているおかげで、何も見えないわけではない。


「・・・・・・」


シャンデリア、柄つきのカーテン、品のあるテーブルとソファ。そしてふかふかのベッドに暖かい毛布。


これはどう見ても、上級貴族が暮らしているような豪華すぎる部屋だ。



「・・・・・・」



シトリンは違和感を感じ、自分の着ている服を確認する。

自分がいつも着ていた汚れた黒い服ではなく、誘拐したときに王子が着ていたような白い寝間着だった。


シトリンはますます脳が混乱する。誰かが説明をしてくれないと自分で答えを見つけることは難しいのだ。


とりあえず、シトリンは大きな窓のほうへと歩いていく。そして窓を開けてみた。



「・・・・・・」



予想外なことに、窓はちゃんと開いた。シトリンはバルコニーに出ると、下を覗く。


ここは三階のようだ。頑張ればここから飛び降りられるかもしれないが、無傷では済まされないだろう。


だがシトリンは、全く飛び降りることに抵抗がなかった。


迷うことなく、手すりに足をかける。




「・・・・・・」




爽やかな風が吹き、シトリンの体を包み込む。シトリンは手すりの上に立つと、下をもう一度確かめる。






そして飛び降りようとしたその時______






「なにしてるの!」






聞き覚えのある声がして、振り向く。




「おかあさま、まって!」




扉の前には、小さな王子が立っていた。




「・・・・・・・」




シトリンは手すりから降りて、王子に駆け寄る。


そしてギュッと抱きしめた。




「もう・・・おかあさま、なにしてるの?あぶないことしないで・・・・・」




王子は涙目になる。どこからどう見ても、五歳の子供にしか見えない。


「・・・・・」


シトリンはそんな王子の頭を撫でながらも、この状況の説明を求めた。



「あのね・・・・おかあさま、ごめんなさい。いろいろとあって、きゅうでんにつれてこなくちゃいけなかったの」


シトリンは首を傾げる。『いろいろ』の中身を教えてほしいようだ。


「ごめんね、いまはおかあさまには、それはいえないんだ。でもあんしんして。スピネルおにいさまも、コールおにいさまも、ぶじだから」



それを聞いてシトリンは深くうなずいた。



「おかあさま、いったんソファにすわろうよ」



王子に促され、二人はソファに座った。座り心地は最高だった。



「ふっかふかでしょ?ぼくがよういさせたんだよ」


王子が自信満々に言うと、シトリンは首を傾げる。


「ここはね、ぼくがおかあさまのためだけによういさせた、このくにでいちばんごうかなおへやなんだ!すごいでしょ!」


王子が両手を大きく広げて紹介するが、シトリンには全く価値が分からなかった。



「みてみて!」



そう言って王子は引き出しから新しいチェス台を取り出した。


「いつでもチェスができるように、これもよういさせたんだ」


新品の豪華なチェス台。

普通の少女だったら目を輝かせてこれを見ていただろうが、シトリンは違う。



シトリンはチェス台と王子のほうを指さした。



「うん?なにがいいたいの?」



王子は少し考えた後、驚いた表情を見せた。



「もしかして・・・・・ぼくがつくったやつのほうがすきだったの?」



シトリンはうなずく。 その瞬間、王子は顔を赤らめた。



「そんなこといわれたの・・・・・はじめてだよ・・・・・」



顔をそむける王子を、シトリンはじっと見つめた。



「おかあさまは、やっぱりほかのひととはちがうね」


そう言うと、王子は扉を指さす。


「ねえおかあさま、いっしょについてきて」


そう言うとシトリンの服を引っ張って、ある部屋へと連れて行った。





チャポンッ




「・・・・・・・」




シトリンが連れてこられたのは大きい浴場だった。一つしか浴槽はないが、一人が入るには大きすぎるほどだった。


シトリンが湯船につかると、王子がその後にタオルを巻いて入ってきた。

もちろん脱衣所は男女別々なので、王子はシトリンの裸を見ていない。



「おかあさま、かみのけあらってあげるね」


王子は浴槽の脇に座り、シトリンの長い黒髪を洗っていく。シトリンの髪には、汚れがこびりついていた。


「ねているあいだ、てあしはすこしタオルでふいたんだけど・・・・」


王子は髪をぬるま湯で優しく洗い流す。


「やっぱりおふろってきもちいでしょ?あたたかくて、ほっとする」


「・・・・・」


シトリンは両手で湯をすくい、そこに映る自分の顔を見ていた。


「おかあさま、すこしだけくびもとをあらうね」


そう言ってシトリンの髪を持ち上げた途端、王子の手が止まった。



「・・・・・?」



シトリンは王子のほうを振り返る。


「・・・・おかあ、さま・・・・・」


王子はシトリンのうなじを指さす。


「このもよう、なに?」


シトリンのうなじには、太陽の模様が刻まれていた。


刺青のような人の手によって彫られたものではなく、浮かび上がっていると言ったほうがいいだろう。


「・・・・・・・?」


シトリンはうなじを触ると、首を傾げた。本人も気が付いていなかったようだ。


「ねえ、なにかこころあたりとかある?」



「・・・・・・」



「たとえば、だれかにこれをきざまれたとか?」



「・・・・・・」



シトリンは思い出そうとするが、脳に霧がかかっているみたいに何も思い出せない。



「そっか・・・・・・」


王子は残念そうな顔をする。


そんな王子の様子を見たシトリンは肩に置いていた小さな手を優しく握った。


「っ・・・・・!」


シトリンは王子の瞳をじっと見つめる。まるで、大丈夫?と言っているみたいだった。



「・・・・ごめんね、おかあさま。ちょっと、かんがえごとしてただけ・・・だいじょうぶだよ!しんぱいしないで!」



王子はぎこちない笑顔を作る。

だがその瞬間、シトリンは王子の腕を掴んで湯船に引きずり込んだ。




「うっわあああ!」




バッシャン!




王子はすぐに体制を整え、湯から顔を出した。




「ゲホゲホッ・・・・なにするの、おかあさ・・・・」



シトリンを叱ろうと思ったその時、シトリンが王子を後ろから優しく抱きしめた。



「おっ・・・おかあ、さま・・・・・」



湯船に浸かっているとはいえ、二人はタオル一枚だ。

肌のぬくもりがタオル越しに伝わってくる。



「ちょ・・・・・ちょっと、ま・・・・まって・・・・・」



一国の王子とはいえ、流石に女の子とお風呂に入ったことなど、一度もない。

王子の顔が一瞬にしてリンゴみたいに赤くなる。



「ちょっ・・ちょ、ちょ・・・ちょっとっ・・・・・・!」


そんな王子を気にする様子もなく、シトリンは抱きしめている手を緩めなかった。



「っ・・・・・!」



恥ずかしさが限界に達したのか、プシューと音を立てて力が抜けてしまった。



「・・・・・・」



シトリンは、気を失った真っ赤な王子を不思議そうに見つめる。

そして仕方なく、王子を抱き抱えて浴場を出ることとなった。



私の作品をここまで見てくださっている読者のみなさん、本当にありがとうございます。

先日ブックマークをつけてくださった方がいました。本当にうれしいです!ご期待にそえる作品を目指して頑張ります!

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