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第十二章 王子の本性と目的

第十二章です。これを書くのに四時間ほどかかりました。

情景が伝わるような作品になってくれたら嬉しいです。

コールとスピネルは、宮殿の最深部にある『謁見の間』へと通された。

両手は縄で縛られていて、逃げる隙も無い。


二人は部屋の中央まで連れていかれ、そこで跪かされる。すでに日は沈みかけていた。

誰かを待っている間、コールはあたりをじっくりと見渡す。


ここにいるのは自分たち二人、そして黒ずくめの女が一人。

女は黙ったまま、二人が逃げないように見張っていた。


だがしばらく経っても、シトリンが連れてこられる気配はなかった。

コールは首を傾げる。自分の予想が正しければ、シトリンもすでに捕らえられているはずだからだ。


やがて日は沈み、辺りは暗くなる。だが、誰もロウソクの火をつける素振りは見せない。



その時だった___



コツ コツ コツ


扉の向こうから、硬い靴音が聞こえてきた。そして重たい扉が開く音がする。

そして華やかな装飾が施された玉座に座ると、頬杖をついて口を開いた。


「かおをあげて」


聞いたことのある声が響いた。二人が顔を上げるとスピネルが「あっ」と声を上げた。



「ごきげんよう。コールおにいさま、スピネルおにいさま」



そう言って笑うのは、二人がよく知る男の子だった。


「おいガキ!どういうことだ!シトリンは?シトリンはどうした!」


スピネルが叫んだ。


「しんぱいしないで。おかあさまは、ほかのおへやでねむってる」


それを聞くと、スピネルは安堵の表情を浮かべた。



「それでガキ、何がどうなってるのか説明してくれ!」



「それはコールおにいさまがせつめいしてくれるよ。きっともうわかってるんでしょ?」


そう言うと、微笑みながらコールを見た。


「はっ、種明かしは他人に任せるのかよ」


そう言い放った瞬間、コールの首に剣先が突き付けられた。


「口に気を付けろ」


女が後ろから怒気を含んで言う。


「だいじょうぶだよ、かなたをしまって」


「はっ」


女が剣をしまうと、コールは話し始めた。


「俺はこの国に来て、情報屋のジルコンと出会った。そいつは確かに昔、モルガナイトの密偵としてマラカイトに派遣された男だった。そいつは王や王子たちを含め、様々な宮殿の情報を提供してくれた。俺はその情報を全て鵜呑みにして、今回の計画を立てた。ジルコンもその計画に賛同し、協力してくれた。だが、それが罠だったんだ・・・・ジルコンは、その時すでにマラカイト側についていたんだろ?」


子供は興味深そうに話を聞く。


「ジルコンはこの国には王子が五人いると言った。だから俺は、その中でも幼い第五王子を狙うことに決めたんだ。だが、それは噓だった。第五王子なんていやしなかった。そして騙された俺たちは、相手の思うままに、実在しないはずの第五王子を誘拐した」


「まさか・・・・・そういうことだったのか・・・・・」


話を聞いていたスピネルがつぶやく。


「逆に、俺たちの拠点に潜り込んだ偽王子は、俺たちからモルガナイトの様々な情報を手に入れることに成功した・・・・・お前たちは、ずっと俺たちを遠くから見張っていたんだろ?俺たちがそれに気づいたら、すぐに捕まえられるように」


「うん、そうだよ」


子供はうなずく。


「拠点の中では偽物の王子が、外出先では監視役が。そう、俺たちは一日中見張られていたんだ。だがシトリンですらも、人通りも多い街の中ではなかなか気づけなかった」


「うんうん」


「だが事前に仕組んでいたこととはいえ、偽王子と監視役がどうやって連絡を取り合っていたのか、そこが少し明確な答えが出ないんだが・・・・・恐らく、俺たちの様子が向こうに分かるような何かをつけていたんじゃないか?」


「すごいすごい!ほとんどせいかーい!」


そう言って笑顔で拍手をした。


「まほうでぼくと、みんなのひとみをきょうゆうさせたんだ」


「共有・・・・?」


「うん。ぼくがみたもの、そしてみんながみたもの、ぜんぶみんながみれるようにしたんだ!だよね?」


子供が視線を送ると、女がうなずく。女の片目にも、その魔法がかけられていたようだった。


「でもあんしんして!もうまほうはといたから。これでもう、みんなからみられることはないよー」


コールはそんなことはどうだっていい、と言わんばかりの表情を浮かべる。



「それで・・・・」



子供は前乗りになって聞いた。



「かしこいコールおにいさんなら、もうぼくのしょうたいに、きづいているんだよね?」



「ああ、もちろんだ」


コールは男の目を見て言い放った。



「マラカイトの第一王子、グラナイト様だろ?」



「・・・・だ、だ、第一王子だって!?」


スピネルが驚嘆の声を上げた。


「うるさい。黙ってろ」


そう言って女が拳骨を一発かました。


「いってて・・・・いやいや、第一王子はこんなガキじゃねえだろ!年齢が違いすぎるって!」


「ガキなどと失礼なことを言うな!」


黙らないスピネルに、女がもう一発拳骨をかます。

すると今度こそ効いたようで、スピネルはすぐに静かになった。


「ははははは!スピネルおにいさまは、ほんとうにおもしろいね」


子供はそう笑うと、立ち上がってこちらに近づいてきた。


「ようくみててね」


そう言って指をパチンと鳴らす。


その瞬間、光が子供の体全身を包み込む。瞬きをする間もなく、子供のから大人へと姿を変えた。


髪の長い、高身長の麗しい男。

銀の髪は、月光に照らされて輝く。

まつ毛は長く、吸い込まれそうな碧い瞳。


まるで月の精霊が降臨したみたいだった。



「そう、僕がこの国の第一王子、グラナイト・ホークスアイだ」




二人は一瞬言葉を失った。

こんな人間離れしたような男と、あんな狭い空間で一緒に生活していたなんて。


「うん?僕の美しさに見惚れたのか?」


「いや、俺のほうが人間らしくていい」


「はははっ。感情のない男のどこが人間らしいんだか」


「そんなことよりも、そろそろ俺たちをここに連れて来た目的を話したらどうだ?」


「おやおや、一体なんのことだか・・・」


「とぼけるな」


コールは王子の言葉を遮る。


「お前が情報欲しさに俺たちに近づいただけなら、俺たちをこうして宮殿まで連れてくる必要はないはずだ。何か別の目的があるから生かしておいているんだろ?」


それを聞くと、王子は目を丸くした。


「ははははっ!コール、君は本当に頭がいいんだな。そこまでたどり着くなんて」


「ああ、俺は頭がいい。だからこそ、お前の正体に気付けなかったのが残念すぎる」


「心配するな。そう落ち込む必要はない。僕のほうが一枚上手だっただけさ」


「・・・・・」


全くその通りだ。コールは何も言い返せない。


「おっと、話を戻そう。君たちを何故生かしたか、だったっけな。それは簡単なことだ。モルガナイト王を殺すために、君たちに手伝ってもらいたい」


「は?おいガキ、何言ってんだ?」


スピネルが首を傾げると、女が三発目の拳骨をかました。


「王子様と呼べ、王子様と!」


「だって、そうだろ!密偵の俺らに対してふざけてるとしか思えねえよ」


「スピネルの言うとおりだ。俺たちは既に我らが王に忠誠を誓った身。そんな簡単に寝返るわけないだろう」


コールも考えることは同じだった。


「ああ、君たちならそう言うと思ったよ。だからこちらも条件を設けよう」


王子はそう言って二人の前に膝をついた。


「君たちは感情をなくす薬を飲んだらしいな。しかも先代の王の血だと」


「ああ、それがどうした」


「だから感情を取り戻すことなど、ほぼ不可能だと」


「ああ、言ったさ」


「もし、感情を取り戻せる方法があったら?」


二人は顔を見合わせた。


「そんな方法あるのか?」


「ああ。確かに難しいが、不可能ではない」



「っ・・・・・!」



「もし感情を取り戻せたら、君たちは今のように王に忠誠を誓えると思うか?」


「当たり前だ!」


「本当に?薬を飲まされる前は、仲間と共に抵抗したんだろ?」



「あれは・・・・・」



二人は言葉に詰まった。


「あれは・・・・・きっと、俺らがどうかしちまってたんだ・・・・・」


「本当にそうだったのか、知りたくないか?」


「・・・・・・」


「感情を取り戻して、それでもまだ王に忠誠を誓えたら、君たちを安全にモルガナイトまで送ろう。だが、少しでも心に迷いがあったら、僕に協力してくれ」


「ははっ。俺たちが前にお前につきつけた条件を、そのままつき返すとはな」


「人の意志というものは、周りの環境によって異なってくる。ジルコンもそうだった」


「・・・・・じいさんは、なんでそっち側についたんだ?」


「それは、あとで彼に聞くんだな」


言い終わると、王子は立ち上がる。


「二日後に答えを聞かせてもらおう。万が一断ったら、君たちの亡骸をモルガナイトへ送らなければいけなくなる。ようく考えるんだな」


そして女に命令した。


「この二人を牢に入れておけ」


「はっ」


女が二人を連れて扉を閉めようとしたその時____



「待ってくれ。一つだけ、分からないことがあるんだ」



コールが王子のほうを振り向く。



「シトリンはお前にとってどういう存在なんだ?あいつに向ける視線だけは、演技とは思えなかった。お前はこの先、あいつをどうするつもりだ!」


月光に照らされた口元に柔らかい笑みが浮かぶ。


「さあ、な」


その瞬間、重い扉が静かに閉まった。

少し長かったかもしれませんが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

明日も頑張って投稿したいと思います!

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