二人に告られる
渾身の告白をした。自分の気持ちに嘘を吐かないことは気持ち良い。
さあ、どうだ!
エルゼをじっと見つめる。
「ひぇっ」
「おい、人の告白に悲鳴を上げるな」
「だって、どう考えても急すぎるじゃない!」
顔を赤くしてエルゼがまくし立てた。
まあ、一理あるか……。
「いや最初に仕掛けたのはお前だろ。俺は戦うために来たんじゃない」
変に早とちりしたのはエルゼだ。あと、ドラクが余計なことを言うから、告白のタイミングを逃した。
エルゼはそばにいるココへ助けを求めるように近づく。
「エルゼ様、バンくんが言ってるのは本当です」
冷静に答えるココの片手をエルゼがぎゅっと握り込んだ。
ココが「ひゃわわ」と顔を赤くした。そういえば、エルゼはココの推しなんだっけ。
「ごめんなさい、ココ。わたし、そんなつもりは無くって……」
申し訳無さそうにエルゼが目を伏せる。
それまで顔を赤くしていたココの表情が変わった。
エルゼの手を離してうつむく彼女に向き直った時には、痛みを堪えたような顔をしていた。
「ズルいです、そんな言い方」
エルゼがびくっと肩を震わせた。さっきまでココと繋がっていた手を握り込んで、指先がうっ血している。
ココとエルゼの間に走る雰囲気のせいで俺は冷静さを取り戻す。
さっきの返事、俺、たぶんフラれる流れなんだよな。そう思ったらこうして突っ立ってるのがいやに切ない。
「あのさ、お取り込み中に悪いんだけど、俺の告白の返事……」
聞かせてくれない? と言おうと思ってたら、ココが割り込んでくる。
「私もエルゼ様が好きです!」
「は?」
これは俺の。
「へ?」
これはエルゼの。
俺たちはココの突然の告白に頭が真っ白になった。
「ははっ、きみたち面白い三角関係だね」
うるせぇ、ドラクは黙ってろ。
にらみつけるとドラクは「なんだよ……」と不満そうに一歩下がった。
「エルゼ様は魅力的です! そんなつもりはない? 当然です。それが格好いいんですから。それに、私だってエルゼ様に噛まれたかった!」
ココは一気にまくし立て、俺とエルゼの問題をめちゃくちゃにした。
俺とエルゼは顔を合わせ、互いに神妙な顔つきをしているのを確認した。
それからココは俺に距離をぐっと詰めてくる。
「えっ、何、なに?」
「ついでに言うと私はバンくんのこと、……少し良いなって思ってました!」
「ええっ!?」
でもこれ告白? 少し良いなって、好き寄りの普通くらいの感じ?
今度はエルゼの赤い双眸に向き、俺をビシッと指した。
「エルゼ様がバンくんのこと気になってるのは分かってるんですよ!」
「そうね。でも、それはバンにも伝えてあるわ」
「えっ、そうなんですか!?」
ココが目を白黒させて、俺をまじまじと見た。
「ああ。エルゼに学園に残るよう引き止められた時にな」
エルゼは腕を組む。
「言っとくけれど好奇心よ。なんかあんたを見てると、歯に物が挟まったような気持ちになるの」
俺はポップコーンの皮かよ。
ココは俺たちの説明を聞いて、みるみるうちに顔が赤くなっていった。
「ごごご誤解してましたっ! 私、てっきりエルゼ様がバンくんを好きだと思ってて……」
「だから、ズルいって言ってたのね」
「はい……。申し訳ありません! エルゼ様!!」
ほとんど直角に腰を折って謝る。
「いいのよ。わたしがはっきりしないのが悪いんだわ」
エルゼは頭を下げるココの背中に優しく手を置き、俺をじっと見据える。
ココが面を上げた。まだ顔が赤い。ココが俺に小さくお辞儀をする。律儀なやつだ。
俺は自己防衛のつもりで先に動く。
「もう告白の答えがダメだってことは分かってる。で、どう断るんだ?」
「ダメだと分かってる? それはどうかしら」
「え?」
「断るのを断ると言ったら?」
否定の否定は肯定だ。
「じゃあ……!」
「ただ、条件があるの。あんたが完全な人間に戻るための協力はできない。これでどう?」
エルゼの視線は俺の首に向けられている。
俺はこのチョーカーを外せば、完全な吸血鬼になってしまう。
そうなれば二度と人間には戻れないかも知れない。
「……それは無理だ」
俺はうつむく。
エルゼのほうから、ほっ、と息が漏れる音がした。
「そうよね。じゃあ、この話はここまでとしましょう。誰かが盗み聞きしているみたいだから」
屋上への出入り口を一瞥する。
ギィ……
鉄の扉がきしんで音を立てた。その奥から恐れていた奴が現れる。




