定期報告(6)
自室に戻った俺は姉ことノーニャに定期報告を入れる。
今日はアプリを立ち上げると同時に白兎姿のノーニャが出てきた。
『プリヴェット! バン、荷物は届きマシタカ?』
荷物?
スマホを片手に部屋の入り口を見ると、ダンボールが置き配されていた。
それを取って部屋に戻り、中を開ける。
「おお、これは。甚平か」
ザ・夏って感じがする。暦的には秋だが、昼間はまだまだ暑いしちょうど良い。
『その通りデース! それを着て祭りへ潜入してクダサーイ!』
「潜入か。それなんだが、祭りにエルゼとココが来るかもしれないんだ」
『そうデスカ。では、上手く抜け出して使者に会うのデース!』
難しいことを言う。
だが、これも任務ならば仕方がない。
「了解だ。ところで使者ってのはどんな奴なんだ?」
『それは秘密デース! 使者から声を掛けマース!』
「分かった。定刻通りにポイントで落ち合おう」
もしかしたら俺の知り合いだったりするのかもしれない。だが、この学園にいるのはみんな吸血鬼だ。妙な詮索はしても無駄だし、ノーニャの話に集中する。
『次に姫里ココの情報が入りマシタ』
「ココが連続殺人事件の参考人されたあれだな」
前に報告を受けていた。元は俺が調査を依頼したが、ココは謎が多すぎる。
『彼女は被害者の娘デース!』
なるほど。じゃあ母の形見を持ってたのもそういうことか。
その上でココの身の上を振り返ると痛ましい。
「ココは吸血鬼に親を殺されて、吸血鬼になったってことか」
人は無理やり吸血鬼になる。望んで吸血鬼になる奴は元から人の道を外れている。
『被害者は皆、彼女の家に出入りがあったようデース。彼女の親の死を最後に事件は止まってイマース!』
まるでココが人を殺したかのような言い方だったから食い気味に答える。
「待てよ、機関はココを討伐対象にしていないんだろ?」
『いいえ、姫里ココが吸血鬼化していたなら、親がそれをかばって人間を娘に差し出す、よくある事デース!』
たしかによく聞く話だ。吸血鬼は子供を狙うから。
「じゃあ何か? ココが人を食ったかもって言いたいのか?」
『日本の警察が十歳の子供が犯人だと特定できず、コールドケースになっていマース!』
「ココはそんな奴じゃない!」
スマホを投げつける。
ベッドの上の掛け布団にボフッとめり込んだ。
こもった声が途切れながら聞こえてくる。少し残念そうな声色だ。
『バン、吸血鬼……肩入れしすぎデース……』
そんなこと自分でも分かってるんだよ。でも、会っても居ないのに疑うなんてノーニャの方が間違ってる。
スマホを投げつけたのはカッとなってやってしまった。
「ごめん。投げたのはやりすぎだった」
あわてて拾い上げるが、そこに白兎の姿はなかった。
巣穴の暗闇から声が聞こえてくる。
『これ以上、ワタシは守りきれないかもデース』
「ノーニャ」
その言葉を最後に部屋にうるさいほどの静寂が戻る。




