表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/67

勘違いとすれ違い

 学校の工事が終わり、今日から通常授業だ。教室に入るとまだ緊張感が漂っていた。まあ、あんな事件があって、関西さんもドラクも教室に戻ってきてないなら仕方ない。


 ……ジト。


 だが、なんだろう、このいやな目線は。


「あのー、いいですかー?」


 そんな目線を向けていた一人が俺に声を掛けた。

 たしか関西さんと一緒にいた子だ。名前なんだっけ。


「何?」


「えっとー、あの子のこと痴漢したって本当ですかー?」


 ……ハァ?

 関西さんの机を軽く叩きながら彼女は言った。


「えっ、痴漢!? 俺が? してないしてない!」


 当然、俺は抗議する。


「あのねー、気を失ってた時、どさくさに紛れて胸をまさぐられたって言ってるんですよー?」


「はあ!? 胸をまさぐるなんてことしな……あ」


 あれか……。

 関西さんが体育館で倒れていた時のことだ。

 でもあれは血が関西さんのものじゃないってエルゼが言ったからで。


「あら? 朝から何の騒ぎかしら?」


 珍しく遅刻せずエルゼが登校してきた。


「ちょうど良いところに! エルゼ、実は」


 勘違いされている事情を話す。そりゃもう必死に。冤罪だからな。

 それを真剣に頷きながら聞いて、舌打ちした。俺の机を挟んで彼女に向き合う。


 ドン! バキッ


 俺の机が真っ二つに爆ぜた。

 彼女は腰が抜け、青ざめた顔でエルゼを見上げている。


「わたしのバンがそんな下劣な真似をすると思っているのかしら?」


 完全にキレていた。


「で、でも……」


 抗議の声は尻すぼみに小さくなった。

 エルゼが足元に転がった木片を踏み割ると誰も文句を言う人はいなくなる。


「ふん。分かればいいの」


 満足気にエルゼは鼻で笑っている。

 これは分かったんじゃなくて単にエルゼに畏縮しただけだ。


「いやいやいや! そこまでしなくて良いからさ! もっと穏便に、な?」


「……?」


「可愛く小首をかしげても粉砕された俺の机は戻ってこないよ!?」


 こいつ、事態の重たさを分かってない! 関西さんは恋とか標的とか抜きに話せる唯一の相手なんだよ! その友達にこの態度はアウトだ。

 このままじゃ俺の青春学園ライフが終わる……。

 そんな時、教室にやってきた人物にエルゼが声を掛けた。


「あら。おはよう、ココ。わたしより遅いなんて珍しい」


「あっ、エルゼ様。おはようございます!」


 エルゼに向かって深々とお辞儀をした。

 それでやっとココだと分かった。教室に入ってきた時はうつむいていて誰か分からなかったからだ。


「おはよう、ココ。昨日はごめん。大丈夫だったか?」


「……はい」


 なんか反応が遅いな。海外で電話を掛けているようだ。

 顔が青白く見える。いや、吸血鬼だしこれで普通か?

 ココが大丈夫なら、俺を助けてほしい。


「ココ、手を貸してくれよ! 俺が痴漢に疑われて、エルゼが机を破壊して大変なんだよ!」


「……そうですか」


 うっすい返事をしてココは自分の席に座った。

 いや、いやいや、こっちは一大事なんだぞ。

 結局ディンゴ先生が教室に来るまで俺は針のむしろ状態だった。



 ◆



 昼休みになった。

 そういえばココに屋上の鍵を返さないままだったし、これからも借りたい旨を一応断りに行く。

 ココは自分の席に座って文庫本を読んでいた。


「ココ、鍵なんだけど、もうしばらく貸しててくれないか?」


 そう話しかけると、文庫本から一瞬も目を離さずに答える。


「別に良いですよ、返さなくて」


「えっ。でもこれはココのだし……」


「……」


 俺とココの間に沈黙の壁が出来ていた。

 突き放されてしまった。

 機嫌が悪いというより、何か避けられているような感じがする。


「じゃあ、しばらく借りるぞ」


「……」


 つーんとした態度だ。

 エルゼならいつものことだが、ココだと何かあったんじゃないかと思ってしまう。

 というか、何だろう。こんなに冷たくされているのに、ドキドキする。変な気分だ。


「おーい、バン。今日こそ昼のバスケに参加しないか?」


 そんなところへ声を掛けてきたのはクラスの男子生徒だ。

 ここ最近よく誘われているが、昼飯を食うタイミングを無くすから断ってきた。


「いや、俺は今日もちょっとココと勉強会をだな」


 チラッとココに同意を求めるが、完全に我関せずだ。


「本読んでるじゃん。行こうぜ、人が足りないんだよー」


「でも俺お前らの超次元バスケに付いていける気がしないんだが」


「あ、羽なし? 大丈夫ハンデあるから」


「そういう問題じゃないんだよ」


「じゃあどういう問題?」


「えっ、あ~。ココ、どういう問題だろう……」


 ココに助けを求めるが、返ってきたのは咳払いだった。

 俺は問答無用でマッチョなクラスメイトたちに体育館へ連れてかれる。

 くそ~、ココ! 助けてくれ~!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ