妙な符合
「バン。わたしたちは次に獣が出る場所に行くべきだわ」
「確かにそうだが、分かるか? 次に出る場所なんて……」
「これっぽっちも分からないわ」
あまりに堂々とした言い方だった。むしろ、分からないから堂々としていられるのかもしれない。
「今まで出た場所なら分かるんだけどな」
「そうなの?」
「ああ、エルゼはプリントもらってないのか。ポケットに入れてた気がする……あった、これだ」
俺は四つ折りにしたわら半紙を開く。
それは獣に注意のお知らせで、学園の地図に三つ、ばつ印が付いている。
エルゼが額を突き合わせるように覗き込んだ。
「ふ~ん。このばつ印のところに獣が出たのね。そしてこの階段で四つ目」
「その通りだ。エルゼは近頃よく一人で出歩いて居ただろ? 何か変わったこと、な、無かったか?」
尋ねながら顔を上げる。あまりに顔が近くて一瞬だけキョドった。意識してるみたいで格好悪い。
一方、エルゼはそんなのお構いなしだ。
「どうかしら。わたしは単に血の匂いを探っていただけだから」
「ああ……、色んな場所を探していたみたいだな。どこを探してきたんだ?」
「全部で六箇所よ。探した順で言うと、プール、体育館、教会、調理室、女子寮裏、この階段」
「なるほど。そういえば血の匂いがするって噂もあったな。関係あるかも」
関西さんが言ってた噂だ。でもこれはどうやら血液ドリンクの匂いらしいっていうのがエルゼの見解。
これだけ血の匂いしても噂止まりなのは、ほとんど特別な理由が無い限り立ち寄らないような場所だからだろう。
「は? 何を言ってるの? わたしたちが探すのは獣。人じゃないわ」
案の定、否定された。
たしかにその通りだが、血の匂い、血液ドリンク、そして獣。
何か繋がりがあるような気がしてならない。
「そっか、すまん。血の匂いは人の血だよな……」
「そうよ。そんなことよりバン、今まで獣が出た場所に共通点は無いのかしら?」
「さあ、どうだろう。プール、調理室、女子寮裏、この階段だ。何か共通点があるか?」
エルゼはあごに手を当てて思案し、しばらくしてぼそりとつぶやく。
「無いわ」
だよな。
その時、ふと脳裏に電流が走る。
「……あれ? エルゼが血の匂いがしたって言ってたのはどこだっけ」
「プール、体育館、教会、調理室、女子寮裏、この階段」
「獣が出たのはプール、調理室、女子寮裏、この階段だ」
「あ!」
エルゼが俺を指差した。
俺はこの妙な符合から推論を導き出す。
「血の匂いがして、まだ獣が出てないのは体育館と教会だ」
俺たちは目を合わせ頷き合った。
階段を滑るように下りる。
人の血と獣、いったい獣の正体は何なのだろう、と考えながら。




