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謝ることはない

 ドラクと戦ったあの教会にやってきた。

 吸血鬼の学園だからか、よく見ると十字架が一つもない教会だ。

 教会の奥の祭壇に腰掛けたエルゼは、ほっ、と短く息を吐いた。


「あんたが来てくれてちょうど良かったわ」


 ん~っと伸びをすると、エルゼが華奢な体をしているとはっきり分かった。

 中学生程度に見えていたが、失礼承知で形容すると単に小さいだけだ、これは。

 エルゼは何か言いたげな目線だけをこっちに向けた。


「え、何?」


「あんたが良からぬことを考えている気がするわ」


「まさかそんな」


 こわ。心が読めるのか?


「単に小さいだけとか思ってなかったかしら?」


 こわっ! 心が読めるのか!?


「だ、断じてそんなことは……」


「あら、そ」


 どうやら心が読めるわけではないらしい。

 それくらい気にしてるんだろうな。


「ああ、だからドラクにあれだけ怒ってたのか。すごい殺気だったぞ」


「ドラク? ……わたしを未熟者と侮った奴のことかしら?」


「ああ」


「ふん、わたしのどこが未熟者なのかしらね。失礼だわ」


 平たい胸の上で腕を組んで、ぷぅ、と頬を膨らませた。

 いや、どう見ても子供じゃん。


「いや、どう見ても子供じゃん」


「はぁ!?」


 やばい、また心の声が――!?


「うぐっ……」


 気がついたら俺はエルゼのとんでもない怪力で首を掴まれ持ち上げられている。

 さっきまで座ってたのにいつの間にか間合いに入っているし、やはりこいつ只者ではない。

 ギロリと瞳孔が開いた赤い瞳を俺に向ける。


「誰が……、こ、子供ですって……?」


 まずいことになった。怒りのあまり、毛が逆立っている。

 ドラクが首をもぎ取られた光景が脳裏をよぎった。

 しかし、そうやって怒るところがまた子供っぽく見えるのも確か。


「ううっ、すまん。エルゼが……、気にしてることに、触れちまったことは……謝る」


 首を掴まれているせいで言葉がとぎれとぎれになる。


「ふん、それで? 他に謝ることはないのかしら?」


 ぎりぎりぎり……


 首がしまって息ができなくなる。

 くそ、今日の俺はマジで油断してばかりだ。

 目の前にいるのは子供でも少女でも無い。吸血鬼なんだ。


「ぐぅう……、謝ることは……ない……」


「あら、そ。じゃあ死になさい」


 ビリッ、首から裂けるような嫌な音がした。

 それと同時に俺は教会のカーペットに崩れ落ちる。

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