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アイアンナックル/レッド・ラスト  作者: 機乃 遙
二人の鉄腕=アイアンナックル/レッド・ラスト
18/19

巨人大乱闘

 ヤツの機関銃はスッカラカンだ。でも、それにしたってあの巨腕はどうしようもない。少しでも振り回そうものなだ、それだけでとてつもない暴力装置に変貌する。巨大なバケモノ、フォグは、そこに存在するだけで脅威だった。

 だが鉄腕にはようやく分かってきた。この巨人との立ち回り方。殺人と復讐のためだけに生み出されたマシン。感情もなく、もうどこかに消えてしまった主人の命令を遂行するために、あてのない復讐劇を演じ続ける。そうすることで、自分の存在意義を見いだし続けている、哀れな機械。その存在意義=殺人の技術を、鉄腕は肌身でもって理解し始めていた。

 遠くからは警察のサイレンが聞こえていたが、それももう期待していなかった。警察がこんなデカブツ相手に何ができるって言うんだ? 自分の方がまだ善戦してる。そんな気がしていた。

 しかもだ。そう思った矢先に、今度は真っ赤な霧が立ちこめてきやがった! そうなれば、次になにが起きるか。鉄腕は、一度それを目にしていた。そして、またそのショーが始まろうとしていた。

「おいでなすったな。『赤錆色の霧』とやら」

 赤錆色の霧が晴れ、その向こうから巨人が姿を現す。巨大な左腕を持つ、深紅の巨人。二つ眼に宝冠(ティアラ)を被ったような頭部。女性的なボディラインを持つ一方で、その特異な左腕が激しく主張している。まるで巨大なハンマーのようだ。

 自分のカラダほどもある腕をぶら下げて、その巨人は走ってきた。

「おいおい、大怪獣バトルに巻き込まれるのは勘弁――って、おっとぉ!」

 瓦礫の中を跳躍し、鉄腕は再び服飾店の影へ。すんでのところで身を隠した。

 そして次の瞬間には、例の赤錆色の巨人が突っ込んできた。巨大な左腕を振りかぶり、さらには腕から三本の鉤爪を展開。その切っ先を首なし(デュラハン)へと突き立てた!

「ハハッ! いいぞ! どこの誰だか知らねえがやっちまいな! 敵の敵なら、飛び入り参加も大歓迎だ!」

 鉄腕もそう言ってはやし立てた。

 だが――

 刹那、再び深い霧が噴出。デュラハンは両腕を大きく開くと、背中のフィンから白い煙のような霧を散布したのだ。

 とたんに視界がゼロになる。衝撃(インパクト)の名残とでも言うべき残響が響くが、視覚では捉えられない。衝撃波と、音が聞こえてくるきりだ。爆風と音圧が鉄腕の耳をつんざき、トレンチコートをはためかす。

 ――やったのか……?

 鉄腕は内心そう思い、しかし思ったところでそれが《《フラグ》》であることに気づいた。

 フラグはまもなく回収される。深い霧の中から、再び衝撃波。烈風が吹きすさび、鉄の塊同士が炸裂しあう。風は霧を引き裂いて、ついにその全貌を明かした。

「おいおい、ウソだろ……」

 開いた口がふさがらなくなった。

 彼女の目の前。晴れた霧の先にいたのは、直立不動の首なしの巨人。そして仰向けになって倒れる赤錆色の巨人だったのだ。

 ――おい、光の巨人あやうしってか?

 鉄腕は思わず身じろぎした。これで二体ともぶっ倒れれば、彼女としてはありがたいが。だが、そうなるはずがない。

 すると次の瞬間、また霧が満ち始めたのだ。それは赤錆色の霧ではなく、また白い霧だった。霧は首なしを取り囲み、三度巨影をかき消していく。

 やがてその霧が晴れたとき、首なしの巨人はどこにもいなくなっていた。


 しばらくして、また赤い霧が満ちて、あの巨人も消えていった。鉄腕はその一部始終を、荒れ果てた路地から見上げていた。

 警察がやってきたのは、すべてが終わってからだった。等身大の人間には、この巨人同士のプロレスを眺めることしかできなかった。警察も警察で、現場検証とは名ばかりの調査をして、その場を去っていった。結局、彼らにも何もできないのだ。

 ただ一人、彼女をのぞいては……。

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