はやとちり
部屋は、きれいだったけど…
家に帰り、オレは鏡をみてびっくりした。
ねぐせが…
前髪が、変な感じで上がっていた。
…
たしかになんかさ、たまにいつもないへんなやつがピコンピコンってさ、視界に入ってくるとは、思ってたんだよ…。
気のせいじゃなくて、こいつのせいだったのかよ…。
「今日…髪型…かっこいいね。もしかして、出かける予定だった?」
「えっ?これは…ねぐせ」
「そうなんだ?似合ってるよ」
…
「ねぐせ似合ってるとか…微妙かも」
「ふふ、たしかにそっか。」
那月が笑ってる…
オレの部屋で那月が笑ってるぞ?
これは…
これはいったい、なんのご褒美なんでしょうね?
もうさ、ほんとそれだけで幸せだ。
たとえこのまま、ごめんなさいでもオレはこの、今…那月が笑った事実を、思い出として大切に脳内にしまって、いつでもタイムスリップします。
記憶ってやつは、過去に戻れる唯一の秘密道具なのかもしれないな。
大発明じゃん‼︎
てか、みんなタイムスリップできるか。
脳内タイムスリップ…
言い方によっては、ただの思い出にふけっている人…
…
「あのさ冬季、話…なんだけど…」
⁉︎
きた…
ついにこの時が…きてしまった。
「あ、うん…」
少し動揺しつつも、お茶を差し出した。
「あ、ありがとう。でね…話っていうのは…その…好き」
⁉︎
「えっ?お茶⁉︎」
「あ、うん。もちろんお茶も好きだけど…」
…
「あー、そうだよね。お茶もね…」
…
⁉︎
「えっ⁉︎お茶も⁉︎てことは…」
「うん。好き…冬季がずっとずっと好きでした。」
「え…てか、なんで泣いてる?」
那月は、涙を流していた。
「やっと言えたなって…卒業して、別々の大学いくことになってさ、冬季…あっさり、じゃ‼︎っていっちゃうし…ずっとずっとわたし嫌われてると思っててさ…休みに家帰った時も、冬季いなくて…一年ぶりにやっと帰ってくるって思ってたら、全然知らない人いるってなってさ…まぁ、あれはわたしの勘違いだったけどさ…でも、全然帰らなかったでしょ?大学入って一年くらい…。ずっと会いたかった」
…
「え、オレに?」
「うん。」
…
「オレ…なんかに会いたかったの?だってオレ、あの時…太ってたよね?」
「たしかにぽっちゃりって感じだったけど、それも可愛かったし、好きだったよ。でも、冬季は…全然わたしなんて興味なかったんでしょ?今でもさ…」
…
「…いや、オレこの前告白したじゃん」
「え?いつ?なんの告白⁇」
「えっ⁉︎電話でさ、いや…直接?あの、那月が泣きながらカフェでてったあとさ、オレ追いかけて、告白したじゃん。」
…
「…なんて言ったっけ?」
「オレ、ずっと好きだよ。那月が名前で呼ぶなって言っても、オレのこと嫌いでも、オレはずっと那月が好きだよって…さ?」
…
「え、ま…まって…早口言葉すぎない?え…え…名前で呼ぶなとか、嫌いとか拾ってたかも…わたし…勘違いしてた?だとしたら、これは、嬉しすぎるよ…フラれる覚悟で、最後に告白して、終わろうって…そう思って、きたのに…」
那月は、また泣いた。
「オレの方が嬉しすぎるよ、那月…ゆっくりいうね。オレは、那月がだいすきです。ずっとずっと前から那月が好きで好きで仕方なかったよ。那月…かわいい」
泣いている那月を、そっと抱き寄せた。
細くて、今にも折れてしまいそうな那月は、オレに抱きついた。
「冬季…もう、離さないよ?」
「うん、オレこそ絶対に離さない。那月、大好き」
「わたしも、冬季が大好きすぎるよ」
ぎゅ〜♡
めっちゃすれ違い遠回りしてたっぽい…
那月には、長いこと申し訳ないことをしていた…
さらに、この前まで別人疑惑で怖がらせてたし…
「那月、オレ今まで辛いおもいさせちゃったぶん、巻き返すから‼︎絶対に幸せにするから‼︎」
「ほんとに?」
「うん‼︎」
「じゃあ、毎日好きっていってくれる?」
「うん、いう」
「あ、でも約束事務的ってのも…ただの自己満でやっぱり嫌だな。今の、ナシにしてもらえる?」
「そっか…じゃあ、さみしいときは、いつでもいってよ。すぐ駆けつけるから‼︎」
「じゃあ、さみしい」
「え、今⁉︎もういるのに?」
「そっか、たしかに。」
「じゃあ、さみしくないようにおまじないしよ」
「どんな?」
…
チュ〜♡
「おまじない完了。さみしくなったら、今の思い出して」
「え…びっくりした…」
「いやだった?」
「ううん。」
「なら、もういっかい」
チュチュチュ〜♡
「那月は、すぐ忘れちゃいそうだから、いっぱいしといた」
「忘れるわけない。大好きな人とのファーストキスなんて」
チュチュチュ〜♡
今度は、那月からキスをされた。
「びっくりした」
「びっくりして、忘れないようにもういっかいする?」
「うん、しよ」
チュチュチュ〜♡
こうして、オレたちは何度も何度もキスをして、愛をたしかめあったのであります♡
そして、十年後の今もオレは、毎日大好きを那月に伝えている。
傷心は、すっかりいなくなった…と思いきや、実はまだいます。
正確には、いたりいなかったり?です。
やっぱり心の傷ってやつは、なかなかいえないんですね。
いえない…?
家ない?
言えない?
ん?
…
そこは、広げなくていい世界だった。
とにかくです、たとえ…イチャイチャにゃんにゃんであっても、あの頃の気持ちを思い出すと、あぁ…あのときは、辛かったなとか…こんなふうに落ち込んだよなって、蘇ってくるんです。
なので傷心ってやつは、いつでもこんにちはって、やってきます。
でも、いいんです。
そのおもいが甦るのも、またオレを強くしてくれる。
あのとき、こんなことがあったからこそ、今を大切にいきれるってなもんです。
傷心にも、感謝だ。
ありがとう傷心。
そして大好きだよ、那月〜♡
♡ ♡ ♡ ♡ ♡
おしまい♡




