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篠崎ミズホの冒険 クロと闇の冒険物語  作者: 旅立 マス
第6章 セントラル・ノヴァ学園
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第71話 ミズホとキャッツの予定

私たちは拠点に戻ってきた。

玄関のドアを閉めた瞬間、ようやく肩の力が抜ける。学園長室の空気って、なんであんなに重いんだろう。悪い人じゃないのに、目が鋭すぎるんだよね。背筋が勝手に伸びる。


「とりあえず、塔の情報が手に入ったのは大きいニャ」


リビングのソファの背に、いつの間にか黒い影――クロがちょこんと座っていた。

「クロ、戻ってたんだ」

「戻ってたニャ。……まあ、戻らざるを得なかったとも言うニャ」


クロは、自分の力の戻し方を調べるために精霊界へ行っていたはず。戻ってきたってことは、何か掴んだのかと思ったんだけど。


「何か分かったの?」

「分からないニャ。我の力を使った“魔王”の事は、何故か何も分からないニャ」


……魔王。

聖魔戦争の話だ。クロの闇の力を使って、他の異界にまで戦火を広げた魔導士が“魔王”と呼ばれている、ってところまでは知ってる。でもそれ以上は、精霊界でも掘れないらしい。


「精霊界にも情報がないんだ……」

「意図的に消されてる匂いがするニャ。気持ち悪いニャ」


クロが珍しく不機嫌そうに尻尾を揺らす。

確かに、闇の精霊の力を使って異界を壊した存在がいたなら、精霊界でも騒ぎになっていいはず。なのに、何も出てこないって変だ。


(……まあ、魔王が何のためにクロの力を使ったのかは、どこかで必ず知る機会が来るはず)

いま焦っても、答えは出ない。私は切り替えた。


「それは後で追うとして……私たちのこれからだね」


学園長から届いた「塔の情報」。端末にマップが落ちてきたとき、胸が一気に熱くなった。

火の塔の場所は分かってる。でも、そこはホーリーライトが占拠しているうえ、ベジタブルマウンテンの危険地帯。しかもギルドレベル4が必要。だから、今は後回し。


じゃあ、次に近い塔は――。


「この水の塔が次に近いわね。ミズホ、どうするの?」

エリーが端末の地図を広げて、私に見せる。地図の線が、異界と異界を繋ぐ“経路”として描かれていて、見てるだけで頭が遠くなる。


「近いって言っても……二つくらい異界を通らないといけない距離ね」

「そうね。移動だけでも日数はかかる」


異界渡りの厄介なところはこれだ。

行きたい場所にパッと飛べない。隣の異界を経由して、さらに隣……って、国境を越えるみたいに手続きも必要で、時間もかかる。学園に来る時だって、一つ別の異界を通ってきた。地図上の距離が近くても、実際の“手間”は別物。


「水の塔に行くなら、最低でも一週間は見積もった方がよさそう」

私が言うと、エリーが頷く。

「学園にも長期休暇がある。夏休みみたいな。そこを狙うのが現実的ね」


確かに。授業をサボって塔へ、はさすがに無理がある。今の私たちは学生でもある。

……学生。私が言うのも変だけど。


「じゃあ、とりあえず次の大きな休暇の時に行ってみようか。まずは学園生活を乗り切ろう」


私が言うと、エリーがすぐに補足してくれる。

「うん。だとしたら、しっかり計画を立てないとね。しばらくはギルドの仕事をこなしつつ、少しでもランクを上げる努力をしましょう」


「まあ、それでいいんじゃねえか。その間に力をつけてやるぜ」

ルアナが拳を握ってニヤッとする。いつだって頼もしい。


……でも。


「ルアナ、アンタは勉強の方も頑張りなさい!赤点なんて取ったら許さないわよ」

フライヤが即座に釘を刺した。


「大丈夫だって。心配すんなよ、フライヤ」

「その言い方が一番信用できないのよ!」


……はい、いつもの。

このやりとりがあるだけで、拠点が“家”になったみたいで、私はちょっと笑ってしまった。


(よし。方針は決まった)

学業とギルド。休暇で塔へ。火の塔はそれまで保留。水の塔が次の現実的な目的地。

大変そう。でも、ワクワクする。怖いだけじゃない。進んでる感じがする。


その時だった。


ピロン、と軽い電子音。

私のスマホ――ギルド支給の端末に連絡が入った。


「もしもし〜、ミズホちゃん?」


コグリちゃんの声。明るいけど、どこか急いでる。


「どうしたの?」

「マヨイ先生から“集まれないか”って連絡来てるみたいで。ミズホちゃん来れる?」


嫌な予感。

私は端末のメールを開く。


……本当だ。ついさっき届いてる。

しかも――二時間後に集合。


「……え、すぐじゃん」


思わず声が漏れる。時計を見る。夜の十時。

二時間後って、深夜だよ? え、学園、夜更かし推奨なの? それともZ……いやAZクラスだから特別とか?


「OK。一段落したし、行くよ」

返事しながら、私は自分の声がちょっと乾いてるのに気づいた。


エリーが首を傾げる。

「ミズホ、どうしたの?」

「担任のマヨイ先生から、クラスのメンバーに集まりがあるって」


「え?今から!?」

ルアナが目を丸くする。フライヤも眉を寄せた。クロは「嫌な匂いがするニャ」みたいに尻尾を揺らす。


私はもう一度時計を見る。

夜の十時。確かに今から。確実に今から。


「うえー……」


口から出たのは、そんな情けない声だった。

でも胸の奥がざわついてるのも本当だ。

だって“普通じゃないZクラス”って言われたばかりで、その担任が深夜に集合をかけてくるんだよ?


……絶対、何か起きる。


私は端末を握り直して、みんなを見回した。

「行ってくる。……なんかあったら、すぐ連絡する」

言いながら、心の中で小さく覚悟を決めた。


(学園生活、いきなりハードモードかもしれない)

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