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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
最終章 魔王と異世界生活
131/132

119 永遠の平穏を願う

のんびり更新中♪

 ミオは、目を覚ました翌日に魔導師団の執務室へと足を運んだ。

 そこには、いなくなる前と変わらないショウの姿があり、ミオは安心したように笑顔を向けた。


「元に戻って良かったです、ショウさん」

「ミオが俺をここまで運んでくれたんだってな。サンキュー。で、元に戻ったってどういうことだ?」

「運んだのはたぶん氷竜さんですけど……あ、やっぱり覚えてないんです?」

「あ?何をだよ」


 ミオがシャルルと並んでソファーに座ると、カミーユが紅茶を入れて向かい側に座って、ショウとミオの会話に入って来た。


「コイツは暗闇に閉じ込められてたらしいぞ」

「そうだぜ」

「え、違いますよ?ショウさんが魔王になってましたよ」

「はぁ!?」

「やっぱり、そういうことか」


 カミーユは、ショウが魔王になっていたことに何となく気づいてはいたらしい。

 ショウには全くその自覚がなかったようだけれど。


「私が魔王の封印場所に行ったら、めちゃくちゃ目が充血したショウさんがいて、「俺は魔王だ」とか言うし、めちゃくちゃ強いしで大変だったんですから」

「マジか」

「はい、マジです」

「じゃあ、ミオのあの怪我は……」

「あれは、闇竜と戦ったり、ショウさんと戦ったりで……それに、凍った地面に何回も叩きつけられて転がったので。凍った地面って、めちゃくちゃ硬いし痛いんですよ!ポーションも足りなくなっちゃって、回復出来なかったですし」

「そんなに酷い怪我だったのか?」

「そうだ。生きてるのかわからない程だったんだ」

「え、そんなには酷くなかったですよね?」

「「そんなにだ!」」

「それは……本当に悪かったよ」

「大丈夫ですよ、この通り元気ですし」


 ショウは心底申し訳なさそうな顔をしながら俯いた。

 でも、ショウが自らの意志で魔王になるために閉ざされた町に向かったわけではないので、誰もショウを責めたりはしなかった。

 心に闇を抱えていたショウも被害者なのだ。


「それにしても、まさかの闇落ちキャラだったとは思いませんでしたよ」

「闇落ちキャラとか言うんじゃねぇよ。俺だってそんなキャラだとは思ってなかったんだからよ。てゆーか、闇落ちしてねぇし」

「まぁ、異世界あるあるですけどね」

「やめろ!恥ずかしいだろうが!」


 笑いながら話すミオと、本気で嫌がっている様子のショウ。

 そんな2人の会話を、不思議そうな顔で聞いているシャルルとカミーユだった。

 この世界は、ミオが思い描いていた異世界とはどこか違うけれど、たまにこうした異世界あるあるに遭遇すると、やっぱり異世界なんだなと思ってみたり。

 何にせよ、ショウが魔王となってこの世界を滅ぼすことにならなくて良かったと、心から思うミオだった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 ペリグレット王国での魔王復活による被害は、魔物達の襲撃が早かった北側にある、フェルドーやサンブリー、レヴィナス領、ロイヤー領付近が最も酷く、復興のために第一騎士団からも多くの騎士達が派遣された。

 ラウルが連れて来てくれた魔導師達もほとんどが復興作業へと借り出されている。


「ラウルさんが魔導師をたくさん連れて来てくれて、本当に助かったよ」

「お役に立てて嬉しいよー」

「でも、ルシヨット魔導国のこともあるし、ラウルさんもそろそろ帰らないとだよね?」

「それなんだよ。俺的にはここにずっといたいんだけどね」

「王様なんだし、そんなわけにもいかないでしょ」

「やっぱ、早く転移魔法を何とかしないとね!」

「うんうん。凄く期待してるよ」


 ラウルの父親は転移魔法が使えていたんだから、ラウルが転移魔法を確立するのもそう遠い未来ではないだろう。


 ミオとラウルは、アルバンや騎士達と一緒に王都周辺の復興に来ている。

 魔物達との戦いで、抉れてしまった地面を元に戻したり、折れた木などの瓦礫の撤去をするのだ。

 アルバンが地面を魔法で元に戻し、ミオが召喚した雪熊狼と騎士達が瓦礫を運び、かなり減ってしまった森の木を植え替えるのに、ミオのロック鳥とフェンリルが大活躍している。

 森の木の植え替えには、魔物の森の木を使っている。

 あんなに木が生い茂っているんだし、多少引っこ抜いて持って来ても問題はないはずだ。

 魔物の森からロック鳥で木を運んで来て、フェンリルが掘った穴に木を植える、なんて素晴らしい連携プレイだろうか!

 召喚した魔物達には、ご褒美として存分にヒールで癒しを与えている。

 皆の移動もロック鳥を使っているため、馬で移動するよりも効率よく回れていて、今日だけでもかなり復興作業が進んだ。


「凄いなぁ、ミオの魔物達。よくここまで調教できたよね」

「調教とは違うんだけどね、アル君」

「え、違うの?」

「うん。私に懐いてるだけ」

「調教しなくてもここまで魔物に言うこと聞かせられるって、凄いよミオ。さすがは僕のミオだな」

「あのさ、アルバンのミオちゃんじゃないからね?」

「煩い。ラウルは何でついて来てるんだよ、何もしてないじゃん」

「俺はミオちゃんの応援と護衛」

「僕がいるんだから必要ないよね!」

「何言ってるの?俺がいないと駄目に決まってるでしょー」

「別にラウルがいなくても問題はない」

「2人とも、仲良くしてね……」


 仲が悪いとかではないのだろうけれど、この2人は一緒にいるといつもこんな感じだ。

 似た者同士というか何と言うか……

 まぁ、作業に支障はないので問題はないし良しとしよう。


「この辺りはだいたい終わったし、明日からはフェルドーとかサンブリーの方を手伝いに行った方がいいのかな?」

「そうだねー。さすがにアルバンほど地面を直せる魔導師はいないからなー」

「ラウルは来なくていいからね。僕とミオの2人で行くから」

「何言ってるの?俺も一緒に行くけど」

「来るなよ!」

「行くよー」

「あはは……」


 とりあえず、今日の作業は終えることにして、王宮へと戻ることにした。

 カミーユに報告をして、明日からはフェルドーやサンブリーに手伝いに行くことにする。


 こうして、魔王の封印から約1ヵ月。

 ペリグレット王国の復興作業はほとんど終わった。

 結局ラウルは、ペリグレット王国の復興作業が終わるまで滞在してくれたのだけれど……ルシヨット魔導国は大丈夫なのか?

 ユニオール国王からの報告では、魔王の復活による影響は全くなかったので、何の問題もなく平穏に過ごしているとのことだった。

 のんびり帰って来いなどとユニオール国王は言っていたけれど、船で1ヵ月はかかるのだから、そうのんびりもしていられないだろう……などと思っているのはミオだけのようで、ラウルは特に急ぐ様子もなかった。


「何かさ、意気投合しちゃって残りたいって魔導師もいるんだけど」

「え、そうなの?残ってもらえるなら嬉しいけど……でもそれだと、ルシヨット魔導国に悪いんじゃ……」

「俺は別に構わないけどね」

「ラウルさんがいいならいいけど……本当にいいの?」

「誰が何処に住むかなんて、その人の自由だからねー」

「まぁ、そうなんだけど……」

「そんなわけで、俺もここに住みたい!」

「え!?」


 ラウルの言葉に本気で驚いたミオだったけれど、さすがにルシヨット魔導国の国王であるラウルが、ペリグレット王国に移住など出来るはずもなく。


「冗談だよ。ホント、ミオちゃんって騙されやすいから心配だよね」

「べ、別に騙されたりしないわよ」

「心配だなぁ」

「大丈夫よ!」


 ルシヨット魔導国の魔導師は半分くらいがペリグレット王国に残ってくれた。

 それに、宿舎にシャワーなどを設置してくれたサラや、コルトも引き続き滞在してくれるらしい。


「本当に、こんなに残ってもらって大丈夫なの?コルトさんまで」

「だってさー、残りたいって言うんだから仕方がないじゃん。俺だって残りたいけどさー」

「じゃあ、早く転移魔法なんとかしてね」

「それはホントに全力で頑張る!」

「いろいろありがとう、ラウルさん。気をつけて帰ってね」

「またね、ミオちゃん」


 ルシヨット魔導国の船が、ラウルと魔導師達を乗せてオルレーヌの港から出航して行った。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 3月も後半となったので、王都周辺はポカポカと暖かい陽気に包まれてすっかり春を感じる季節となっていた。

 あと1か月で、ミオがこの世界に来て3年目に入る。

 月日が流れるのは随分と早いものだなと感じた。


「シャトロワ王国の復興作業はどんな感じです?」

「まだ時間はかかりそうだ」


 夜、エリアスから連絡が来て、ミオはクリスタルを通じて話をしていた。

 シャトロワ王国の被害はかなり酷かったようで、復興作業は難航しているようだ。


「お手伝いに行きましょうか?うちの副師団長は地面を元に戻せるし、ペリグレット王国は復興作業終わりましたし……騎士も何人か連れて行けると思いますよ?私もお手伝い出来ますし」

「だが……」

「魔王の封印が解かれた時は、ペリグレット王国を守ることで精一杯で、何もお手伝い出来ませんでしたけど、復興作業なら別です。困った時にお手伝いするのも、友好国としての役割ですよね?」

「それはそうだが、こっちに来るには時間もかかるだろう」

「え、すぐに行けますよ?そうですね……今から師団長に話をしてくるので、少し待っていて下さい。あとで連絡します」

「あ、オイ、ミオ!?」


 ミオはクリスタルでの通信を切ると、カミーユの部屋に行って事情を説明し、カミーユと一緒にシャルルの所に行って話をして、3人で国王の所に向かい明日復興作業の手伝いに行くことを決定した。

 こういうことは、善は急げである。

 翌日、ミオはシャルルとアルバン、数名の騎士達とともに、炎帝ロック鳥に乗ってシャトロワ王国へと向かった。

 もちろん、魔物の森を抜けて行ったため、シャトロワ王国まではそう時間はかからずに到着したので、エリアスにはとても驚かれた。


「ミオはここで見ていろ」

「何言ってるんですか。私もお手伝いしますよ」

「は?」


 ミオは、ペリグレット王国での復興作業と同じように、ロック鳥とフェンリルと雪熊狼を召喚して作業を手伝った。

 ペリグレット王国ではもう見慣れた光景だけれど、さすがにエリアスもシャトロワ王国の騎士達も目を点にして驚いていた。

 魔物が復興作業を手伝うなど……想像すらしたことがないだろう。

 さらに、魔物の森から木を引っこ抜いて来て植え替えたことにも、エリアスが驚きながら動揺していたけれど……そんなに動揺することなんです?


「魔物の森から持って来てもいいものなのか?」

「ダメです?」

「いや……魔物の森はペリグレット王国だ、そちらが良いと言うのであれば問題はないだろうが……だが、魔物の森だぞ?」

「え、あの森ってペリグレット王国だったんですか?だったら問題ないですよ、私が引っこ抜いてきたんですし」

「……そうか」

「それに、あんなに木が生えてるんですから、数本抜いたくらいでどうってことないですよ。魔物達が困るってこともないでしょうし」


 エリアスが困ったような顔をシャルルに向けると、シャルルが苦笑いを返した。

 この2人、言葉はなくとも通じる何かがあるらしい。


 それにしても、まさか魔物の森がペリグレット王国の敷地だったとは……何も考えずに引っこ抜いていたけれど、シャトロワ王国の領土じゃなくて良かった。

 ミオが知らないことは、まだまだたくさんあるのだなと知らされた出来事だった。


 こうして、ミオ達がシャトロワ王国に通いながら復興作業を手伝い、難航していた復興作業にも終わりが見えて来た。

 やはり、少しでも人手が増えれば作業が進むのも早くなるものだ。

 友好国として貢献出来たことは、ペリグレット王国の王女としてもとても嬉しく思うミオだった。


「助かった。礼を言っておく。後日、正式に謝礼をさせていただくと、ペリグレット国王にも伝えてくれ」

「え、いいですよ、そんな謝礼だなんて。困っていたらお互い様って言うじゃないですか。父もそう言うと思いますし」

「そんなわけにはいかないだろう。とにかく、伝えておいてくれ」

「……わかりました」


 ちょっと手伝っただけだし、謝礼などいらないのにな……そう思いながら、ミオはシャルル達と炎帝ロック鳥に乗って、ペリグレット王国へと戻って行った。


 他の王国の復興作業も無事に終わったようで、これで魔王の復活による被害を受けた王国の、全ての復興作業は終了した。

 この世界に、また元の平穏が戻ったのだ。

 この平穏が永遠に続くことを願う。



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お読みいただきありがとうございました!

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