120 憧れからかけがえのない世界へ
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最終話となります♪
魔王の復活を企んだ黒ローブの組織。
その組織がどうなったのかはわからない。
壊滅したのか、まだ存続していて陰で動いているのか……少なくとも、魔王を復活させるためにシャトロワ王国に潜り込んだ黒ローブ達は全員この世界から消えているだろう。
そして、そんな黒ローブ達に協力していた人物達が明らかになった。
騎士団の中で黒ローブに協力していたのは10人。
そのうちの6人は、魔物達との戦いで命を落としている。
彼らは全員黒ローブの組織の人間ではなく、黒ローブ達が閉ざされた町に向かうため、言葉巧みに利用されただけの騎士団の騎士達だった。
だから、生き残った彼らから情報を聞き出そうにも、黒ローブの情報は殆ど持っておらず、残念ながら黒ローブに関する調査は行き詰まっているらしい。
「え、あの騎士も協力者だったんです?……あ、だからあんなこと言ってたんだ」
「あんなこと?」
「こんなはずじゃなかったって言ってたんですよ。あの時は、シャトロワ王国の騎士団が壊滅状態だったから、そのことを言っているのかと思ってましたけど……違ったんですね」
ミオは今、クリスタルでエリアスから報告を受けている。
なんと、騎士団の中で黒ローブ達を手引きしていた騎士の中に、エリアスの婚姻の儀で城壁からミオの靴を持って来てくれた騎士も入っていたのだ。
全く気がつかなかった……
彼は自ら自首して来たらしく、拷問などしなくても知っていることは全て話してくれたようだ。
まぁ、自首したからといって、魔王復活に加担していたわけだから、厳しい処罰を逃れることは出来ないだろう。
「でも、協力者がわかって良かったですね。誰だかわからないままだと、全員が敵に見えてきますし」
「あぁ、そうだな」
「じゃあ、スッキリしたところで、エリアス様もしっかりと休んでくださいね」
「やることは山積みだ、休んでなどいられるか」
「仕事をこなすためにも、休むことは大切なんですよ」
「無理ばかりするお前には言われたくないな」
「私は無理なんてしてませんよ。ちゃんと休んでますし」
「そうは見えないが」
「それは、エリアス様が疲れすぎて頭が働いてないからですよ」
「は?」
しばらくそんなやり取りをして、クリスタルでの通信を終えた。
黒ローブについて、全容を解明していくのはおそらく難しいだろう。
―――――――
―――――
―――
平穏な、いつも通りの日常が戻り、久しぶりにネーオールの森周辺の見回りに同行しているミオ。
何事も起こる予感がしない見回りというのも何時ぶりだろうか?
何もなさすぎて物足りなさを感じてしまう程だ。
せっかく平和なのに、物足りないなんて言ったらバチが当たりそうだけれど。
「ミオ様」
「なんですか?ルヴィエ副団長」
「魔王の件以来、アリスが大人しくなったような気がするんですが……何かありました?」
「あー、そういえば私にも絡んで来なくなりましたね。何でしょう?難しいお年頃が落ち着いてきたとかですかね?」
魔王が復活し、大量の魔物との激戦を終えると、それ以前よりもアリスが大人しくなったような気がしていた。
気が強いところや口調などは同じだけれど、ミオが一緒にいなくても1人で見回りに同行出来るようになったし、騎士達も前よりも扱いやすくなったと感じているらしい。
アリスも、いつまでも子供なわけではないので、心が成長したのだろう。
ミオ的には、絡まれなくなったことが心の底から嬉しいと思っている。
「よくわからないですけど、落ち着いたのはいいことです」
「そうですね。それと……ルシヨットの魔導師達は、いつまでペリグレット王国に滞在してくれるんです?」
「それは特に決まってないですよ。ラウルさんも、永住したければそれでもいいって言ってましたし。帰りたくなったら帰る感じですね、たぶん」
「永住も許可されてるんです?」
「はい。ルシヨット魔導国には悪いなと思いますけど、永住してくれたらとても嬉しいなって思ってますよ、魔導師が増えますもん。あ、でも帰りたくなったら無理には引き止めませんよ?」
ルシヨットの魔導師がいてくれると、便利なものが増えそうだし、魔導師が増えればルシヨット魔導国みたいに人々の生活も豊かになりそうな気がしている。
願わくば永住して欲しいものだ、無理強いはしないけれど。
「魔導師が増えれば、ミオ様が見回りに同行しなくても良くなりますね」
「え、同行しますけど?」
「でも、ミオ様は王女様ではないですか」
「そ、そうですけど……本業は魔導師だと思ってるので」
「さすがに、そういうわけにはいかないのでは?」
「……もしかして、迷惑でした?」
「そんな、迷惑だなんて思いませんよ!ただ、王女様を見回りに同行させていいものかと悩むところですが……」
「うーん……エリアス様だって、シャトロワ王国の騎士団長やってますよ?」
「それとこれは何か違うような……」
「同じですよ。あれです、私を王女だと思わなければいいんですよ。ただの魔導師です、そう思ってください」
ミオがシリルに笑顔を向けると、戸惑ったような笑顔を浮かべたけれど……え、お願いですから魔導師としてこれからも同行させてください!
こうして、ネーオールの森に入り、二手に分かれて見回り、ミオ達が湖の傍を通りかかった時。
突然、盛大な水しぶきが上がり、水竜が飛び出して来た。
そうだった……久しぶりですっかり油断していたミオは、水竜の水しぶきを防ぐことを忘れてしまい、騎士達とともにずぶ濡れになってしまった。
呆然と立ち尽くす騎士とミオ。
そんなミオに、水竜は無邪気に話しかけて来た。
―――ミオ!凄く久しぶりだね!元気だった?僕はこの通りとっても元気だったし、魔王から王国を守るために凄く頑張ったんだよ!今日はミオに会えて、僕とっても嬉しいんだ!
お久しぶりです、水竜さん。王国を守ってくれて、本当にありがとうございます。水竜さんのおかげで、オルレーヌの町には被害が出ませんでしたから。
―――でしょでしょ!ミオも魔王を封印してくれてありがとう!
いえいえ、私の仕事ですから。じゃあ、ご褒美です。
ミオは水竜にもヒールを使ってみると、とても心地良かったようで喜んでくれた。
水竜にもヒールの癒しは効果があるのだとわかり、これからはご褒美にはヒールを使おうと思ったミオだった。
今から見回りだということを伝えると、水竜はすぐに水中へと戻って行った。
ミオがずぶ濡れになった皆を魔法で乾かし、見回りを再開する。
オルレーヌの港にケートスの様子も見に行ったけれど、さすがにその時は油断せずに構えていたので、飛び出して来たケートスの水しぶきでずぶ濡れになることはなかった。
こうして、ずぶ濡れになった以外は何事も起こることなく見回りを終えて、ミオ達は王宮へと帰って行った。
「ミオ、お前明日は休んでいいぞ」
「え?」
騎士団との見回りを終えてカミーユの所に行くと、明日は休むよう言われてキョトンとしてカミーユを見上げたミオ。
「ゴタゴタしていてしばらく休めてなかっただろ。明日休みにしたからのんびりして来い」
「休めてないのは、師団長もですよね?私は大丈夫なので、師団長が休んでくださいよ」
「俺のことはいいんだ。とにかく、明日は休みにしたからな」
「……じ、じゃあ、休ませていただきますね」
魔王との戦いが終わると、王国の復旧作業とシャトロワ王国の復旧作業などがあり、休む間もなかったのは事実だ。
でもそれはミオだけではなく、全員が同じことだ。
それに、ミオは魔王の封印後に5日間も眠り続けていたのだから、皆よりも休んでいるのではないかと思うわけで……まぁ、休めというのだから有難く休ませてもらうけれど。
こうして、本日の仕事が終わってミオが魔導師団の執務室から出て行くと、見回りから帰って来たシャルルが、カミーユの所にやって来たところだった。
「シャルルさん、今帰って来たんですか?お疲れ様です」
「お疲れ様、ミオ」
「師団長なら執務室にいますよ」
「そうか。ミオは部屋に戻るのか?」
「はい。夜ご飯まで、お風呂でのんびりして来ようかなって思ってます」
「ふふ、のぼせてしまわないようにな」
「大丈夫ですよ」
ミオは笑顔で答えると、お風呂の準備をしに宿舎へと入って行った。
そんなミオの後姿をジーッと見つめていたシャルルは、目を閉じて何かを決心して息を吐き出すと、カミーユの所へと向かった。
―――――――
―――――
―――
「おはよう、ミオ」
「おはようございます、シャルルさん」
「もう、出かけられる?」
「はい、大丈夫ですよ」
昨夜、夕食の後にシャルルに声をかけられて、今日は一緒にモンフォワールへと出かけることになったミオ。
魔王との戦いでボロボロになってしまった冬用のローブを新調しに行き、あとはのんびりと街をブラブラして来る予定だ。
ミオの部屋までシャルルが迎えに来て、一緒に宿舎から出た。
「そうだ、父が美味しい紅茶が欲しいって言ってたので、パトリックさんのお店にも行きたいんですけど」
「構わないよ。それじゃあ、帰りにパトリックの所に行こうか」
「ありがとうございます」
馬車でモンフォワールへと向かうと、仕立て屋で冬用のローブを注文する際に、あれこれと提案されて多少のアレンジを加えてもらうことにして店を出た。
その後は、特に何の目的もなくブラブラとしたのだけれど、やっぱり隣にシャルルがいてくれるととても安心感があって、居心地の良さを感じながら過ごすことが出来た。
相変わらず周囲の視線は気になるところだけれど。
まぁ、シャルルはイケメンなのだから、視線が集まるのも仕方がないことだろう。
「ミオ」
「はい?」
「塔にはまだ連れて行ったことがなかったかな?」
「塔ですか?行ったことがないですけど……え、この街に塔なんてあったんです?」
「街を見渡せる塔があるよ」
「そうなんですね。知らなかったです」
「だったら、今から行こうか」
「はい!」
もうすぐこの世界に来て3年目に突入するわけだけれど、モンフォワールにそんな塔があるなんて知らなかった。
モンフォワールの街のことは随分と詳しくなったつもりでいたミオだったけれど、まだまだのようだ。
シャルルに手を引かれながら歩いて行くと、街のはずれの小高い丘の上に、見たことのない塔が見えて来た。
そもそも、こんな丘があったことも知らなかった。
「モンフォワールの街に、こんな丘があったなんて知りませんでしたよ」
「街のはずれなど、そんなに足を運ぶこともないだろうからな。坂道だが……疲れていない?」
「大丈夫です」
「疲れたなら、私が運んであげようと思ったのだが」
「だ、大丈夫ですよ!」
「ふふ、顔が赤いよ」
笑いながら顔を寄せてくるシャルルに、ミオの心臓は飛び出しそうだ。
本当に異世界のイケメンというのは距離が近い。
こうして、道なりに丘を上がって塔の前にやって来ると、想像よりも大きな塔だった。
塔の中は、壁沿いにぐるりと階段が設置されていて、最上部まで登れるようになっていた。
当然、エレベーターなどという気の利いたものは設置されていない。
外でやわらかい風に当たりながら少し休み、ミオはシャルルに手を引かれて塔の階段を上った。
さすがに息は切れたけれど、シャルルがゆっくり休みながら上ってくれたので、そんなには辛くはなかった。
まぁ、でも……1人だったら途中で降りていたかもしれない。
丘からも街を見渡すことは出来たけれど、やっぱり塔の上から見渡す景色は素晴らしかった。
どの世界でも、高い場所から見る景色というのは綺麗なものだなと思う。
これで夜景も楽しめるようになったら、観光客がもっと増えるだろうな。
「街を歩いてても素敵な街ですけど、こうして高い場所から見ると、もっと素敵な街に見えますね」
「そうだな」
「シャルルさんは、よく来るんです?」
「よくは来ないが……ここは、大切な人と来る場所なんだよ」
「大切な人?」
シャルルがミオの手を取って膝をつき、ミオを見上げた。
え、何ですかコレ……ミオの心臓が煩く音を立て始める。
「ミオ」
「……はい」
「私と、結婚してくれないか」
「…………え?」
けけけ、結婚!?
今、結婚とおっしゃいましたか?
聞き間違いではなく、結婚と言ったんですか?
突然、何を言い出すんだこのイケメンは!?
ミオは頭の中がパニックすぎて言葉を返せずにいた。
何か、何か言わなければ……
「え、えーと……あれ、ち、ちょっとよく聞こえなかったんですけど、なんか、結婚って聞こえたような気が……しなくもないというか……」
「結婚してくれないかと言ったのだが」
「わわわ、私とですか?その……私なんかとですか?」
「そうだよ。私はミオに結婚してくれないかと言ったんだ」
ミオの顔はきっといつも以上に真っ赤になっているだろう。
頭から蒸気が出ているような気もする……もしかしたら気のせいではなくて、本当に蒸気が出ているかもしれない。
心臓がバクバクしすぎて眩暈がしてきそうだ。
「あああ、あの……私なんかで……いいんですか?」
「私は、ミオと結婚をしたいんだ。結婚したくもない相手に……こんなことは言わないかな」
「そ、そうですよね……」
ミオは眉尻を下げながらシャルルを見下ろしている。
困った、困ったぞ。
こういう場合はどう返事をするんだ?
「え、えーと……その……こういうの、初めてで……どうしたらいいのか……」
「ふふ、私も初めてだよ」
「そそそ、そうですよね……あの……わ、私なんかで良ければ……その……よろしくお願い……しま……す」
シャルルが立ち上がってミオを抱き寄せた。
まるで祝福するかのように、優しい風が2人を包み込む。
「断られたらどうしようかと思っていたよ」
「そそそ、そんな……断るだなんて……」
「ミオ」
「……はい」
「愛している。ずっと、私の傍にいてくれるか?」
「……はい。私もです」
シャルルの唇がミオの唇に重ねられた。
―――――――
―――――
―――
異世界に憧れていたミオがやって来た世界は、思い描いていた異世界とは少し違っていて大変なことも多いけれど、とても居心地の良い世界だった。
異世界らしく魔王なんてものもいるけれど、この世界にやって来たことを後悔なんてしていない。
ミオにとってはかけがえのない世界だ。
ペリグレット王国の王女として、王国を守る4体の竜を守る魔導師として、ミオはこの世界で生きていく。
大切な人達とともに。
The end
お読みいただきありがとうございました!
ありきたりな物語でしたが、楽しみながらここまで書くことが出来ました。
ほんの少しでも面白いと思って下さる読者様がいれば嬉しいです。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!




