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共依存する魔法少女は世界を敵に回す  作者: Red_stone
第3部:子育て編
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第80話 裏路地と理想の裏側


 異邦人の二人は、お世話になったバーを後にする。

 紫苑は店の外に出た瞬間には、その表情を柔和な苦笑から苦虫をかみつぶしたようなしかめ面の顔に変えてしまった。


「もう、紫苑ちゃんたら。そんなに失敗したことが気に食わない? いつもそうよね。自分の失敗は絶対に許せないんだもの」

「そりゃあ、油断し過ぎていたのは事実だ。確かに店主やあの場にいた人たちはボク達を密告するようなことはしないだろう」


「うんうん」

「けれど、それで終わらせるのはただの甘えだ。酒で浮かれて、使えるとも分からない金で支払いを済ませようとするなど――とんでもない馬鹿者だ」


 紫苑の人でも噛み殺しそうな顔は、自分に向けたものだ。今までの旅は幸運に頼ったものではない、実力で生き抜いてきたのだと自負がある。それだけに、先の油断は許せない。

 小さなきっかけ一つから破滅の道を転がり落ちていくのは、旅の中で何度も見てきた。拠点の確保すら忘れ、ここまで遊び呆けた自分が信じられない気持ちだ。

 ユートピアを夢見て世界を渡ったわけではない。そんな夢心地な人間ではないとの自負がある。


「ごめんね。私が発作なんて起こしてしまったから」

「何を言うんだ、陽菜。それは君のせいじゃない。君のことは必ず治して見せるから……」


 元をたどれば自分のせいだと己を責める陽菜を抱きしめる。

 どちらも自罰的な性質だ、そうでなければ運に頼る旅になってしまっただろうけど。とにもかくにも、自分を責めたがるばかりの益体のない時間は切り上げる。


「ええ、信じてるわ。私の王子様」

「……うぬぬ。こっぱずかしいことを言うのはやめてくれ。昔から君にはずいぶんとからかわれてきた。ボクたちは無二の親友で、別に結婚を夢見るような関係じゃない。そうだろう?」


「ええ、そうね?」

「なぜ怒るのさ。ともかく、情報を集めないと」


 きゃいきゃいと痴話げんかになってしまったが、紫苑は気を取り直して深刻そうな表情を作る。それで、陽菜もまた遊んでいるわけにはいかなくなる。


「わかってる。でも、この世界の人々はとっても優しいもの。そんなに心配することはないと思うの」

「確かに――余裕を感じる。酔いのためなら飢えても構わないと言う人たちを見てきたが、ここでは子供だって飢えていない。この国は、きっと素晴らしい人が王様をやっているのだろうね」


「ええ。絶対そうよ」

「それでも、油断してはならない。なぜなら魔法は……」


「――魔法少女は世界を狂わせてしまう。ええ、忘れてはいない。全部を終わりにしてしまう、世界の果てに……人は簡単に足を踏み外してしまうから。この国の王様も、人間である限りはきっと魔法に狂わされてしまうわ」

「そうだ。なぜなら、究極域に達した魔法少女には上限がない。それは、どこまでも果てがないという絶対的な脅威」


「ええ、”それ(魔法)”はとても恐ろしいものだもの。私が一番よく分かってる」

「だからこそ、ボクらはもっと慎重に行動しなきゃいけなかった。君がそうだと、バレてしまっては手遅れだ。疑われるだけでも度し難い失敗だというのに……」


「わかっているわ。わかってるの、紫苑ちゃん。でも、私……」

「――しっ!」


 紫苑は陽菜の口を人差し指で塞ぎ、陽菜を暗がりに連れ込む。そして注意を外に向ける。

 この町のストリートは恐ろしく静かだ。繁華街であれば不夜城のごとき場所もあるはずなのだが――どんなに耳を澄ましても騒音が聞こえてこない。

 すべての店が暖簾を閉じて営業を終わらせていた。先のバーも、一見様では見つけられない隠れ家だった。

 しんと肌に染み入るような静寂を破ったのは、スピーカーの”ぶん”という唸り声だった。


〈やっほー。みんな、もう寝る時間かな? ふわりんも、もう寝たいよー。でもね、クリックが寝るならこれ放送してからにしろって言うからさー〉


 電子音に変換された、親しく語り掛けるような少女の声が響いてきた。


「ふわりん、何?」

「――」


 紫苑はほうっと魂が抜けたような表情でスピーカーを見上げる。


〈さてさて――みんなとお話するのは楽しいけど、おねむの邪魔しちゃダメだよねー。そんなわけで、もう本題に入ります。だから、そんなせかさないでよー〉


 誰かに指示を受けているのか、そんな舞台裏を感じさせる様子だ。

 無邪気で真摯、それにどこまでも無垢な声は心の中にずっと入り込んでくる。この人の言うことが間違っているはずがないとの確信が湧いてくる。

 ――そのような魔法で、彼女だから、このアーティファクトに選ばれたのだから。


「ああ……」

「紫苑ちゃん……!」


 ふらふらとスピーカーに向かって歩いていこうとする紫苑を抱きしめて止める。明らかに異常というか、操られていた。


〈実はね、{異邦人《エトランゼ》がこの世界に迷い込んできたんだよー〉


 声の主は滔々と手慣れた様子でずっと語り掛けてくる。


〈よくわからないよね? そもそも異邦人も何も異世界からしてなんだよって話だよね。でもね、魔法少女なら皆分かってること。アーティファクトはね、この世界の外から来たんだ〉


〈んで、多分アーティファクトがやってくる世界ってのもたくさんあるんだー。ふわりんたちが今居る世界だって、その一つでしかないの。だから、よそからここに誰かやってきたっておかしくないんだよ〉


〈なんでわかったって? そんなの、クラックに聞いてよー。ふわりん、ぜんぜん知らないんだからー。ま、どーせあいつのことだから移動の際に世界の境界をぶっ壊したのを感知したとかそんなんでしょ。多分きっと〉


 異邦人だの異世界だのに関しては、適当で説明にもなっていない。

 というか、ふわりん自身が人ならともかくその背景に関心をもっていないのがよくわかる。難しいことなどよくわからないと、声その通りの幼女のような姿勢で、それがどこまでもしっくり来ていた。


〈うんうん、わかるよ。そんな危ない奴が居ると不安だよね? でもさ、クラックにやれって言ったらあいつ多分街ごと消し飛ばすから。ちょーはつ、しちゃダメなんだよ。それにさーふわりんにも色々あってさー、放送できるのって、実際コトが起きた数時間後だよ。けっこー前の話なの、これ〉


 やれやれと肩を落とす様子が伝わってくる。なんとも面倒なことになった、と思っているのを隠さない。もっとも、余裕もたっぷりだから不安を抱かせるようなこともないが。

 ただ、少し手間を取らされるそれだけだとわかる鷹揚な態度だ。少女ながらも支配者とはかくあるべきを体現していた。


「あ……あああ」


 ふわりんに否定された紫苑は顔を青ざめさせ、力なく膝を着いた。”受け入れてもらえない”のなら死ぬしかないという気分になっていた。

 もっともその実のところ、洗脳の効果はそんなに強くない。ふわりんの魔法は広域放射に適さない。

 だから、これは紫苑にずっとあったもの(心の闇)。世界を滅ぼす元凶になれるほどの力も、意思もない。ただの人間にはそんなのある訳がない。だから、これは幾多の死を見届けたゆえの――無力感から来る希死念慮。

 未来への不安やその他お先真っ暗な気分が、魔法にこじ開けられて心の奥底から噴出していただけのこと。


「紫苑ちゃんっ! こっちを見て」

「ボクは、もうダメなんだ。生きている意味なんて――」


 陽菜ががしっと頬を掴んで無理やり目線を合わせた。だが、紫苑は力なく視線を逸らすだけ。


「馬鹿っ!」


 パァン、と平手打ちの音が高らかに鳴り響いた。


「紫苑ちゃんのバカ、アホ、オタンコナスっ! 私を治して、ずっと一緒にいようって言ってくれたのに――どうして簡単に諦めちゃうの!?」


 よほど陽菜の方が痛そうな顔で、紫苑の頬を叩いていた。まあ力の入れ方がめちゃくちゃでこんなに音が鳴る叩き方は、普通に手の平の方が痛いものだけれど。


「……諦め? ああ、諦めるのは――嫌いだな」


 ふっと紫苑の瞳に色が戻る。魔法の影響を脱していた。痛みよりも、陽菜の苦しそうな表情の方がよほどキく。

 そして、スピーカーを親の仇のような形相でにらみつける。


「心を操る魔法だな。いいや、これはそれほどのものではないか。あるいは扇動といった方がいいのかな」

「それとも、無理やり範囲を広げたために矮小化しているかだね。……でも、危険だよ。そんな使い方」


「しかし――ずいぶんとふわりんとやらを信用しているな? こんな自由にしゃべらせて、王様周りの連中は怖くないのか。一言で民衆が暴動にかきたてられるぞ」

「そう……だね。どういうことなんだろう。そういえばバーの客がふわりんのことを口にしてた……! これ、今回だけじゃない。いつも放送されてるんだ」


「まあ、これだけ手慣れてフレンドリーに話しかけてるものね。それもそうか……思ったよりも、この世界の事情は複雑らしい」


 二人が話をしている間、ふわりんはずっと無駄話をしていたようで、ようやく本題に入る。


〈それでね、異邦人を見つけたら連絡してほしいの。国の人に伝えてくれればふわりんにも伝わるよ。……でもね、倒そうとしちゃダメだよ〉


〈なんの力もないあなた達は、魔法少女に守ってもらわなきゃならないからね。ぜったい、手を出しちゃダメなんだからね〉


「酷い言いぐさだ。ボクらだって別に、敵対しなければ好き好んで人を傷つけたりなどしないさ」

「紫苑ちゃん。でも、人は誰かのために鬼になれるものだから。優しい人でも、他人を恨むことだってある。戦う覚悟は、持っておかないと」


 紫苑は冷たい表情で彼方を睨みつける。放送で手を出すなと言われて安心しているようでは、そんなの底なしの油断でお人好しだ。

 前言を翻して何の罪もない子供を利用して殺し屋にしてくることも想定しなければ生き残れない戦場とてあるものだ。

 覚悟はできている。悪に堕ちるつもりはなくとも、正義に背を向けて目的を達する覚悟ならば。


〈さあ、よい子はおねむの時間だよ。また明日もがんばろうね、ふわりんもみんなのためにがんばるよ。じゃあ、くれぐれも――異邦人の子たちに余計な刺激を与えないように。じゃあね、おやすみなさいっ!〉


 ザー、と音がしてスピーカーが切れた。


「「……」」


 二人、緊張の糸がわずかに緩んでため息を吐いた。


「まあ、なんにしても得心が行った。ここまで街が静かなのは治安がいいなんてレベルじゃないけど――国民がすべて洗脳されているなら納得だ」

「解放しなきゃいけない……って、マスターさんを見る前なら思ったかも」


 異邦人の二人はとても暗い顔だ。もっとも、それは良い方なのかもしれない。今までだったら義憤の炎を燃やしていた。相手が間違っているなら、街の人々を敵に回しても戦う覚悟はある。今までだってそうしてきた。

 だが、それが正しいのか今回に限っては分からない。甘い顔をしておいて裏では、なんていくらでもあったけれどそれなら顔色に出るのだ。少なくとも、悪と断じられるだけの状況証拠もない。


「……まあ、ね。あの人が純粋に夢を追いかけられるのは、国民が全員洗脳されているからかもしれない。少なくとも、あれほどの力を持つ魔法少女の存在があってもここまで治安がいいなんてのは見たことがないよ。普通なら彼女を狙って戦争が起きている」

「でも、ふわりんは魔法少女よ。信用していいの? 町の人々の様子は、それこそ洗脳されて上辺だけかもしれないわ」


「それは」


 まだ結論を出すには早すぎる。そう自戒するものの、期待が胸の内を焼いていた。もし、ふわりんが本当に”良い魔法少女”であったら。そして、私利私欲のためでなく真にみんなのために行動していたのなら。

 洗脳は振り払ったはずと思うが、まだ影響が残っているのかとも疑う。

 だが、こんな優しい世界が本当にあってくれたらと――そんな希望(欲望)を消せない。


「おうおうおう、なんだてめえらレジスタンスかあ?」


 そうしているうちに、まさにガラの悪い不良といった輩が怒鳴りつけてくる。

 前をすべて開けてトゲトゲを付けた学生服に、これまた大量の釘をつけた金属バット。いっそ笑ってしまうくらいのコテコテの不良がにらみつけてきたのだった。


「……チッ」


 そして紫苑は舌打ちを一つ。いや、不良への返答じゃない。

 紫苑としては別に今更不良について思うことはない。旅を続けてきたのだ、人間の汚いところなど見慣れている。こんな平和な町にでも、一人くらいは暴力が好きで周りをなじめない人間はいるだろう。それを洗脳するほど魔法の強度が高くないのは、先ほど自分で実感した。

 だから許せないのは自分の油断だった。洗脳にかかりふらふらとスピーカーに引き寄せられ、振り払った後ものんきにおしゃべりをしてた自分に、頭を思い切りぶん殴ってやりたいくらいに腹を立てていた。


「ああん? てめえ……俺に舌打ちしやがったか。おお?」

「そりゃ許せねえな」

「舐めてんのかよ、優男がよ――」


 そして、お決まりの通りに仲間がわらわらと出てきた。

 こんな状況でも紫苑は焦らない。旅をする中で魔法少女とさえ戦ってきた。ならば、武器を持った男の三人くらいなんとでもできなくてどうする。


「いや。これはボク自身への戒めだ。君たちのような雑魚をわざわざ相手にするような真似をした間抜けへのな」


 紫苑は彼らに向き直り、きっとにらみつける。まさに男装の麗人といった風情で、その性別はいくら馬鹿な不良でも間違えるはずはない。


「ほ……いい声」

「よく見りゃ、そっちもキレイどころじゃねえの。うほっ、でけえおっぱい」

「いやいや、俺は気の強い女の方が好みだぜ」


「チッ、最初に見つけたのは俺だぞ。ふざけ――」

「ああん? お前からやっちまうぞ」


 がやがやと、騒がしくテンプレなおしゃべりをする。紫苑から目を離すような間抜けぶりは、やはり日本という平和ボケの地ならではだろう。


「獲物を前に舌なめずりか? どうやら、喧嘩のやり方も知らないらしいねっ!」


 紫苑が恐れる様子もなく駆けだした。


「舐めんなよ、女の癖にっ!」


 金属バットを持つ男はそれを大きく振り上げて――


「それをヒトの顔に思い切り振り下ろせるようなら人間じゃない。殺傷力のありすぎる武器は、ただの枷だよ」


 そのまま顎に拳を打ち込んだ。うまい具合に脳をゆらされた男は白目をむき、すとんと前転するかのように崩れ落ちる。金属バットがからんと音を立てて転がった。


「テメェ……!」

「やりやがったな!」


 そして残った男二人も、さて喧嘩の始まりだと拳を握るのだが。


「だから、喧嘩をやるなら今更覚悟を決めても遅いって――」


 紫苑は近くにいた方へ金的を放つ。


「うぎっ!? お、ぐおおお……!」

「潰してはいない。数分もすれば痛みも治まる。安心するといい」


 二人目はあっけなく股間を抑えて転がって白目を剥いた。


「こ、ここここ――」

「この野郎、と言いたかったのか?」


 瞬く間に二人がやられてしまい、殴るか懐からナイフを出すか悩んでいた三人目はするりと近づいた紫苑に腕を取られる。


「さて――少し話をしようか」

「話す訳……ぎゃあああっ!」


 もう片手でナイフを握った手を取り、少しひねると絶望的な悲鳴が聞こえてくる。人体へ苦痛を与えるツボくらいは習得済みだ。

 異邦人の旅路は旅行じゃない、戦場よりもなおもひどい地獄を渡り歩いてきたのだから。飢えて人を食ったこともないような幸せ者が敵う相手ではない。


「ふわりんに、お前たちが会えるわけないか。その手の者から依頼を受けたか?」

「はあ!? あのお方に会ったことくらいあるっつの! ひぎゃっ!」


 余計な口をきくなと、紫苑は腕をねじり上げる。


「どこでだ?」

「それは――ひっ。やめろ、腕をねじるな。向こうの道だよ、パレードだよ。知ってるだろ」


 もちろん異邦人である紫苑は知らないのだがそんなことはおくびにも出さずに尋問を続ける。


「それで、あの方の名を騙る者からの依頼を受けたかと聞いたんだが」

「そんな訳ねえだろ! あのお方が人を襲わせるようなことをする訳がねえからな!」


「ああ、そうかい。じゃあ、これはお前たちの意思か?」

「そうだよ! どんな自意識過剰だよ!? おめえら、どっかの国の王女様だってか? あぐっ」


「質問をするのはボクだ。ふん、お前たちは国に不満を持っているのか? だから、こんなところで下らない真似をしてたとでも?」

「え? あ、いや……それは。俺たちゃ、ただ暇で、けど労働なんか面白くねーことやるのもごめんで……んで……」


「チッ、なるほど、本当にボクが間抜けを晒しただけだったか。最後に聞いておく、この国の王様の名前は?」

「はあ? そりゃ、えっと――大統領、いやちげーな。ええ……そーりって奴を聞いてんのか?」


「――」

「い、いや俺でも知ってるぜっ! 有名な奴だよな、織田信長! アニメだとかソシャゲとかでよく出てくるあいつがうちの王様だ!」


「ああ、そうだ。よくできたな。なら、お仲間を連れてどっかへ行ってしまえ」


 紫苑は腕を離してやった。絶望的なほどに頭が弱くても、痛みには従順だ。へりくだった様子で仲間に肩を貸してやる。


「うえ? あ……はい。それじゃ、さよなら?」


 お騒がせな奴らはえっちらおっちらと、夜の街へと消えて行った。


「……はああ」


 敵ですらなかった彼らを見送った紫苑はため息を吐いた。


「紫苑ちゃん?」

「ああ、陽菜。しかし、よくわからないな。ふわりんはパレードをしているらしい。やはりスピーカーでは魔法の威力は半減するんだな。直接会おうとするのは危険かもしれない。声を使った洗脳なのかとも思ったが、いややはり確証は持てないな」


「そんなことより、織田信長よ。まさか、死者復活の魔法でも使った? アニメとか言ってる限り、それっぽいものを魔法で作った方がありえそうだけど」

「だが、総理大臣は彼だということだろう。……彼、でいいんだよな?」


「魔法少女の名前はアーティファクトが与えるから、織田信長なんて名前にはならないわ。でも、ふわりんがそれだけ動いているならただの傀儡じゃないかしら。男――人間が、魔法少女を支配しているようには思えない」

「そう……だね。だけど、ふわりんに会うよりかは現実的だと思う。彼から話が聞きたい」


「私の病気を治す方法。……その手掛かりを見つけるために」

「うん、普通の人では無理だからね。でも、その前に少し休もう。拠点にできる場所を見つけないと」


「――そうね。私は少し寝かせてもらったから眠くはないけど」

「ほんの少しだろう? あまり楽観視するものじゃない。今までがうかつ過ぎた。この世界には来たばかりだから、もっと慎重にならないと」


「ええ。わかってる。行きましょう。街の中に居ては、何かに気づかれてしまうかもしれない」

「そうだ。やはり人里はずれた場所でないと」


 頷き合うと、二人は外に向けて潜みながら脱出するのであった。



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