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揀擇(カンテク)【その3】

本日、一話の投稿となります。投稿が遅れた事をお詫び致します。


なお、王世子ワンセジャから王世子セジャへと表現を変更致しました。

今後、前投稿分も改定を予定いたします、ご承知の程をお願い致します。

筆者の筆力の無さが原因です。お許し下さい。

先触れを出して、しばらく後に俺は大造殿テジョジョンへ向かう事にした。

女官や宦官達を引き連れて歩く。何かの力が働いていたのか、最近まで俺の内殿ネジョンには尚宮サングンが配置されていなかった。だが、仁嬪インビンの実質の失脚と俺の王世子セジャ内定の結果、尚宮サングンが配置された。


パク(朴)尚宮サングンと言うベテランの女官だ。

この時代の常で細身で背も高くは無い。只、存在感のある女人だ。

顔は少し吊り上がった細い目には知性の輝きがある。


尚宮サングンともなると子飼いとも言う女官がいる。

当然にその子飼いの女官達も一緒にやって来た。


元々、王子が二人暮らす内殿ネジョンにしては女官の数が極端に少なかったので丁度良い。

ただ、安全面ではどうか?と考えていたがパク尚宮サングンの経歴を調べて安心した。

俺達……俺と弟、光海君カンヘグンの母 恭嬪コンビン 金氏に仕えた女官だった。

母が死んだ後、苦労はしたが王宮で出世して尚宮サングンに昇格したらしい。


大造殿テジョジョンについた。普段なら気兼ねせずに入れる場所だが今日は違う。

何と無く敷居が高い。


臨海君イメグン様、王后ワンフ様がお待ちです」


扉を開けようとした女官の台詞にパク尚宮サングンが噛み付いた。


「無礼者!王世子セジャ様に何と言う言葉遣いをする!」

「!申し訳御座いません、どうか……」


それ以上は言葉にならず、女官はその場にひれ伏した。

パク尚宮サングンの言い分は間違ってはいない。

王世子セジャ冊立の儀式はまだ終わってはいないが、国王が正式に命じたのだ。

俺は既に()()()()では無い。

臣下が国王の意向を汲むのは当然の事だ。


臨海君イメグン」と「王世子セジャ」では()()が違う。

臨海君イメグンは一王子に対する爵位だが、王世子セジャは王太子だ。

俺の事を臨海君イメグンと呼ぶのは間違っている。


この事に即座に気付き、間違いを指摘したパク尚宮サングンは大したものだ。

親父……宣祖ソンジョの宣言から日にちが経っていない事もあり、理解出来ていない者もいる。

さて……また難しい事になった。この女官の処罰をどうするか……

その時、扉の向こうから王后ワンフ様がお出ましになった。


王世子セジャ殿、どうかその哀れな女官モノを許してやって下さい」

王后ワンフ様、この者も今後は肝に刻むでしょう」

王世子セジャ殿のお心に感謝致します、どうぞ中へ」


俺は平伏したままの女官の脇を通って大造殿テジョジョンへ入った。

丁度良いタイミングでお出ましになった。これで女官の処罰は有耶無耶に出来る。

そのまま、王后ワンフ様に先導される形で部屋へ通された。


共に腰を下ろし、俺が通り一遍の挨拶を終えると茶が運ばれてくる。

その茶を王后ワンフ様が自ら入れてくださった。

薦められるままに茶を一口啜る。口の中にほのかに花の香りが漂う。

俺は茶碗を茶托に置くと先程から気になっていた事を口にする。


王后ワンフ様、先程の件ですが……」

王世子セジャ殿のお心遣いには感謝しております」

「いえ、そう言う事では御座いません。……ハッキリと申し上げます、()()()になりましたね?」


王后ワンフ様は悪戯が見つかった子供の様な表情をされる。やはりそうだった。


「何故とお聞きしてもよろしいですか」

王世子セジャ殿が心配だったのです」

「……心配と申されますと?」

「パク尚宮サングンです」

「あの者が何か?」

「あの者は恭嬪に従っておりましたが、恭嬪の亡き後は苦労を重ねた一人です」

「存じております」

「故にその苦労がハンとなり、王世子セジャ殿に向かないかと案じたのです」


この辺りは、元日本人として理解し難いアイデンティティでもある。

朝鮮半島にはハンの文化がある。ハンは単なる遺恨や感情では無い。

種々の要因が重なった、一つの思想文化だ。


ハンの本質は別として、王后ワンフ様はパク尚宮サングンが俺にハンを抱いており、

それが差障りにならないかと危惧してくださっていた。

そして、パク尚宮サングンを試す為に一芝居打ったと言う事らしい。


「お心遣い、感謝致します。では……王后ワンフ様からご覧になられてパク尚宮サングンは如何でしょうか」

「まずは問題は無いかと。例えハンを抱いていたとしても、そのハンを解いたのでしょう」

「……」


俺は何とも言えなかった。パク尚宮サングンハンを抱いているか否かは見当もつかない。

ただ言えるのは、少なくとも()()()()働く気はあると言う事だ。

今はそれで良しとするしかない。


「本日、まかり越しましたのは王后ワンフ様にお願いがあるからです」

「私に王世子セジャ殿が()()ですか?」


薄っすらと笑顔を浮かべられる所を見ると気付いておられるな。


「はい。私の柵立の儀の後に揀擇カンテクがあると考えております」

「そうですね、王世子セジャ殿にはお側で支える者が要りましょう」

「率直に申しまして、私は側で支えてくれる者を決めております」


王后ワンフ様が少し驚かれた様な顔をされている、これは少し不味いか?

既に王后ワンフ様の中で候補がいたと言う事かも知れない。

俺は先日、ソン・ヨナの父親、ソン・ユンヨン(孫允龍)から預かった族譜チョクボを出した。


「これは……族譜チョクボですか?」

「はい、この家の娘を迎えたいと考えております」

「……密陽ミリャンソン氏……誰の娘を考えているのですか」

「ソン・ユンヨン(孫允龍)と言う者の娘で御座います」

「ソン・ユンヨン(孫允龍)?……官職は……」

「ソン・ユンヨン(孫允龍)は無官で御座います」

「無官?では在郷の者ですか」

「いえ、漢陽ハニョンに居を構えております。孫商団ソンサンダン行首ヘンスで御座います」

商団サンダン行首ヘンス!!両班では無いのですか?」

「いえ、両班で御座います、その族譜チョクボは間違いなく本人とその一族のものです」

「そうですか……!!」


王后ワンフ様は何かに気付かれた様だ。


「……その娘と言うのは氷雨商団ヨナ・サンダンの女人行首ヘンスですか?」

「仰る通りで御座います」

「……あの者が両班の娘……」


王后ワンフ様は黙りこんでしまわれた、それはそうだろう。

この時代、朝鮮王国では商人は賤業として扱われている。

その商人の娘で本人も商人が王世子嬪セジャピンとなると抵抗があると言う所か。


莫大な資金力を持つ一部の商人は力を持ち始めている。当然に繋がりはあった方が良い。

王世子嬪セジャピンの実家の政治力や資金力はそのまま王世子セジャの力にもなる。


王后ワンフ様にすれば、氷雨商団ヨナ・サンダンの莫大な資金力は魅力だが、家柄が引っ掛かるという事か。

少なくとも頭ごなしに反論されない所を見ると()()()()はいなかったようだ。


ここで重要なのは、ソン・ヨナが両班の娘であると言う事。

両班の娘であれば揀擇カンテクに臨む資格がある。

王后ワンフ様はしばらく目を瞑って考えておられた。

そして、目を開けていつもの優しい笑顔を浮かべられた。


王世子セジャ殿、お手伝いを致しましょう」

「ありがとう御座います」


俺は心から頭を下げた。これで第一関門突破だ。

ここまでお読みいただき感謝致します。


皆様から頂ける、ご感想ご評価そしてブックマークが励みになっております。

今後ともよろしくお願い致します。


また、誤字脱字やその他のご指摘事項をいただけます事、本当にありがたく思っております。

今後ともよろしくお願い致します。

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