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影の町

「うわぁ! 厳つい人達がたくさんいますね」


マリアが放った言葉にその厳つい人達が一斉にこちらを向く。チャロアイトでさえ気をくれしているのにマリアはどこ吹く風という風に気にしない。


「そんなに嬉しそうにいう言葉ではないですよ」


「マリアさん、ここは治安が悪いので気をつけてください」


「はーい」


治安が悪いか……、ヤーマの城下から出れば比較的安全な場所などないに等しい。

さらに悪いことに城下からでてすぐの場所が最も危険だ。


城下では、何かあれば兵士が対応してくれるがそれは城下のみ。

あまりにひどい場合は、ごくたまに出動してくれる。

だがいかんせん"ごくたまに"なのでほとんどない。


そして城下から出てくる人間は、いつも守られている為に平和ボケしているので格好の獲物となる。

だから城下近くのこの街には、獲物を狙うハイエナが多い。


ウィレームは、何かあっても腕でなんとかなるし逃げる足と頭があるが問題はマリアだな。

簡単に人を信じるしお節介だから困っていると……。


「お姉さんパン屋知らないか?」


やっぱりそうだと思っていた。

派手な着物を着たちゃらちゃらした歌舞伎者がマリアにつっかかる。


「パン屋ですかぁ? あそこの通りで見ましたよ」


「教えてもらって悪いけど俺目が悪くてさっき指さしてもらったところがわからないから連れて言ってくれないかな?」


「マリアは、迷子の常習犯なのでウィレーム様連れて行ってくれませんか」


男は、俺を見て嫌な顔をしたがウィレームが来たら顔を青くした。

おおよそ俺くらいなら倒せると思っていたが、ウィレームの雰囲気を見て戦意が喪失したのだろう。

体格はいい方だし、見た目が派手な奴ほど本当に強く出られたら弱い。


「私で良ければ連れて行こう。まずはどこと言ったかな?」


「用事を思いだしたんであざした!」


男は、人混みに突入していく明らかに目が悪いとは思えない身のこなしだ。


「さっきの人足が早いですねぇ~」


「マリア……もう少し警戒心を持ちなさい」


「ちゃんと警戒心くらいあります! 子どもじゃありませんから」


「ヒィヒィン」


たぶん子どもの方がお前より警戒心がある。

馬なのにチャロアイトまで笑っている気がするぞ。


「まず宿に行きましょう。馴染みの宿なら空いてるはずですから」


「うむ、拠点をつくるということですかな?その方が動きやすいですし早く行ったほうがいいですな」


俺達は、街の表通りを曲がり裏路地を歩く。

ウィレームは少し警戒しているが、マリアは先ほどから物珍しいからかキョロキョロしている。


「こんな場所に宿などあるのか?」


「ありますよ。商品の仕入れをするときちょくちょく泊まりますから」


なんて話しているうちに宿に着く。

この宿だけは、まわりが薄汚れた雰囲気に関わらず店の前に花を飾って華やかだ。


俺が宿の扉を開けると中には、赤い三角巾をつけ白のブラウスにチェックのロングスカートをはきフリルがふんだんに使われたエプロンをした宿の主がいた。


「いらっしゃーい♪あっ、ユーグさんお久しぶりです!」


「あぁ、ベル久しぶりだな。半年くらいか?」


「はい♪それくらいです。後ろの方も入ってください♪」


ベルがそういうと外にいたウィレームとマリアが入ってきた。

さりげなくマリアをエスコートしているところがなんとも騎士らしいともいえるし紳士とも言える。


「はじめましてウィレームと申します。以後お見知りおきを」


「相変わらずユーグさんの周りにいる人は面白いね~。そこの方は?」


珍しくマリアがむすっとした顔を浮かべている。


「……マリアです」


「マリアさん!? よくユーグさんから美人で可愛いけどおっちょこちょいで天然で実は馬鹿力の大食いって言われてるマリアさん!」


「ユーグさんそんな美人で可愛いなんて照れちゃいますよ」


後半は完全にスルーしたな、面倒くさいからいいけど。

機嫌が悪くなると治るまでに時間がかかる。


「でも会ったら想像以上に可愛いですね♪」


「そうですかぁ♪」


「ベルそれよりも部屋を二部屋いいか。あと馬がいるから厩に連れて行ってくれないか」


「いいですよ♪こちらへどうぞ」


俺達は、ベルの案内で二階に上がると角部屋を指差した。


「ウィレームさんは、こちらで」


そのあと隣の部屋を指差す。


「この部屋はユーグさんとマリアさんで使ってくださいね♪」


「ベルふざけるようなら違う宿に行きますよ」


「ふざけてませんよぉ? ユーグさんとマリアさんって恋人じゃないんですか??」


「えっ!?」


マリアが顔を真っ赤にさせたが、反対にウィレームの顔が真っ青になる。


「違います。とりあえず角部屋を私とウィレーム様、隣の部屋をマリアが使うということにしましょう」


変な気を使いやがって、マリアは恋人じゃない。


「なんだぁ。つまらないの。そうそう夕飯はどうしますか? 外で食べますか? それともうちで食べますか?」


「この宿で食べます。あとはいつも通りでいいですよ」


「はーい♪」


そういうとベルは一階に戻って行った。


「なんか明るい人ですね」


「確かに」


「これで困った癖がなければいいのですけどね」


「困った癖?」


「なんですかな?」


言おうか言うまいか、言わない方が面白そうだ。


「独り言なので気にしないでください。それよりも手分けして魔王か魔族の本拠地について知っている人を探しましょう」


「承知した」


「はーい♪」


「マリアは留守番です」


「えー」


賊|≪ハイエナ≫の中にマリア|≪エサ≫をいれるわけにはいかないんだよ。それにマリアは一カ所にいてもらった方が助かる。


「帰ってきたときここ名産のお饅頭をあげますから大人しく留守番してください」


「うーん、仕方ないなぁ。行ってらっしゃい」


「行ってきます」

「行ってまいります」


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