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勇者は守銭奴!  作者: 猫田33


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30/32

手合わせの価値は計れません

「それで誰と誰が組むんだ?まさか三対三なんていうんじゃないだろうな」


「一人素人がいるのにそんなことはできない。そちらの中で短剣を使う人物はいますか」


「おらが使ってるだ。基本は、魔法書なんだが自分の身を守るのには近距離の攻撃も対応できなきゃだめだかんな」


そういって茶髪の男が腰から短剣を取り出した。その短剣は、両刃で先端が尖っている。あの形状からみて切りつけるというよりも刺すことが主体となっているようだ。


「その狐の小僧の相手ならトゥルスで充分だろう。私と、カシュガンの相手はどっちだ」


「私は、さきほどハルフォン殿と手合せをしていただいたのでカシュガン殿と一戦願いたいがどうだろうか」


「ウィレーム様がそういうのならそうしましょう。私は、二人のことをほとんどしりませんから」


などといいつつもだいたいの性格は掴んでいると思う。ハルフォンは、言葉の節々に矜持や自尊心、誇りが滲みでている。実際に戦えばそれが驕りや自尊心なのかわかるだろう。


「では、お相手おねがいします。ハルフォン様」


「エルフの血にかけて真剣勝負をします」


ハルフォンは、鞘に入れたままクレイモアを構えた。俺も同じくカットラスを鞘に入れたまま剣先を首にあわせる。右手にカットラス、左手にはなにももっていない。通常なら左手に魔導銃をもつのだが一歩間違えれば殺しかねない武器なのでださなかった。


「勝負はじめ!」


アルバの合図と同時に俺は走り出した。


「はぁぁぁっ!」

「やぁ!」


力が拮抗しているらしく金属の重みを剣づたいに感じるだけで吹き飛ばされたりしなかった。力が強いやつと当たればあまり力がない俺は簡単に弾き飛ばされる。しかし、これは単純な勝負で方がつかないということでもある。

そう、技対技。


「お前人間にしては、腕力が弱いな。私も通常のエルフより力が強いが」


「それが悩みなんですよね。その分っ」


カットラスを水平に振る。ハルフォンが後ろに跳びよけると体勢を直していない俺の首に突きをしてきた。しかし、そのまま負けるのもなんなので体をそらして突きをそらす。そして俺は、無防備な脇腹に蹴りをいれた。ハルフォンの体が横に吹き飛ぶ。


「痛いですねっ」


「そんなこといいながら跳んで衝撃を飛ばしたでしょう」


俺には、ハルフォンの動きが見えていた。蹴りの動作に入ったと同時に跳び衝撃をいなしている。蹴りの衝撃が軽くよく跳んでいるのでおかしいと思ったのが理由だ。体格も筋力もなければ体勢が悪かったのだからあんなに飛ばない。


「ふん、人間にしてはいい目だ」


「お褒めいただき光栄ですっ」


ハルフォンがクレイモアを横凪にしたので体勢を低くしてよける。頭の上を強い風が通ったような感覚が通った。体勢をただすのと同時にカットラスをクレイモアにぶつけ弾くつもりが力が弱いせいか弾けない。片手と両手の違いだろう。ならばと突き上げるように体ごとハルフォンにぶつかる。

しかしなんの不幸か俺は、石につまずいてころんだ。その間にハルフォンが体勢を体勢を立て直す。


「お堅い型に縛られた剣術をするのかと思ったが違うな。前にきた山賊の雰囲気に似ている。しつこい上に狡い」


「しつこくて悪かったですね!商人は忍耐力が必要ですから」


「商人というのはそういうものなのか?」


ハルフォンがよくわからないとばかりに首をひねる。この雰囲気では、さすがの俺も戦意がわかない。相手の油断を誘うために会話をしていたのに自分がほだされてどうする。そういえばこの雰囲気は、マリアのぽやぽやした雰囲気に似ている気がする。


「試合は終わっていない!」


「うわっ」


ぽやぽやした雰囲気を醸し出していたハルフォンが鋭くクレイモアを一閃させる。さやに入っていなかったら頭から股までまっぷたつになっていたかもしれない。

しかし、だ。ハルフォンは、俺に対してずいぶんと油断しているように見える。縦に一閃するのは、重力やクレイモアの重みですばらしい一撃にはなる。だが動作が大きく次の動作までの攻撃の時間がかかる。


「おりゃぁ!」


俺は、カットラスを下がったままのクレイモアの腹にあてるつもりで振り下ろす。体重と重力、遠心力がうまく合わさったカットラスの一撃はクレイモアをハルフォンの手からはじき飛ばすのに十分な威力をもっていた。


「終わりです」


「っ!」


悔しげにまゆをよせてハルフォンが俺を見る。その顔のすぐ下には、さやに納まったままのカットラスがあった。


「勝負ありですねぇ。いやはや、ここまでの腕前とは思っておりませんでした。そうとう場数を積んでいるのではないですかな?」


「今回はたまたまですよ。エルフの真骨頂は、森という地形を利用したゲリラと集中戦でしょう。通常と同じようにすれば私は勝てません」


エルフは、自分が守護する森からよっぽどのことがない限り離れない。それは、守護するかわりに樹の生気をもらうからとか、ある一定の基準を満たした樹がなければ生きられないなどいろいろな学説がある。


「そんなもの関係ない。どんな場所であろうと勝てなければ意味がないこともある。我らの魔法にはないが、魔術には空間を歪め己に一番てきした空間を創りだすものがあると聞いた」


「人間でそんな大きな魔術を使う人物は、伝説の三賢者くらいだと思いますが。・・・でもこのまえ遭遇した魔族の夢に誘い込む魔術も似たようなものかもしれないですね」


「お前魔族に遭遇したのか!?よく生きていたな。我々の場合、アルバさまの機転により助かったが一歩間違えれば全滅していた可能性がある」


「そういえば魔族が来たのでしたっけ?そのことについてのちほど聞きたいのですが」


もしかしたらなにか魔王にたどり着く鍵があるかもしれない。それに魔族について知っていることは少ない。魔法を扱うならそれに関しての情報は、いくらでもほしいところだ。


「いいだろう。ところでほかの連中の試合は、見なくてもいいのか?」


「クローブくんのは見ていますよ。でもウィレームさまの場合問題といえる問題がありませんから。それに今のところわかっている問題は自分で気が付かなければ直しようがないと思います」


事実、ウィレームとカシュガンの強さは拮抗している。決してウィレームが弱いわけではなくカシュガンの武器がショートボウと何かが入った麻袋なのだ。中距離ではショートボウ、短距離では麻袋を振る。見事に弓の弱点である短距離を克服していた。



対するウィレームは、矢を避け、払い、切ることで応戦していた。そもそもこの組み合わせは試合にならないがウィレームのとんでもない腕前により成り立っていた。俺なら三つめの矢につらぬかれそうな気がする。いい目と判断力そしてそれに釣り合う俊敏性をもつからこその動きなのだ。


「予想以上に化け物じみた動きをしますね。とても頼りになりますが敵にはまわしたくない」


「同感だ」


ハルフォンの同意をえてからクローブとトゥルスの試合を見た。トゥルスのほうが経験を積んでいるのが目に見え戸惑いなく動いている。対してクローブは、恐る恐るといった感じで腰がひけていた。ただ狐の亜人なので身体能力と感覚が鋭いらしく動きを学習しているように感じられた。トゥルスが前にした動きをクローブがちょっと変えた動きで返し、クローブの動きをトゥルスがして返す。


「クローブくんが攻撃しなきゃ相手が攻撃してくっぺ。相手を殺すつもりでかからにゃ自分がやられっど」


「わかってる!」


面倒見がかなり良いようで放置しても問題なさそうだ。


「教えるのが上手な人物がいてよかったです。私やウィレームさまは、教えるのが得意とはいえませんから」


「あの腕前のウィレームが教えるのはなさそうだな。経験と直感の天才肌だろう。でも、お前なら問題なさそうだが」


「実践派ですから武器以外持たさずに一週間一人で森の中で野営させます。もしくは、雪山でもいいかもしれませんね」


ユーグの発言に素人にいきなりそれはないだろうとハルフォンはあきれる。 しかしユーグは、交渉以外に冗談をいう人物なので本気で言っているのだ。


「面倒を見ないというのが最大限の手加減というのがよくわかった。よくあの子どもを引き取ったものですね」


「引き取ったわけではありません。クローブの人生の全てを買い取ったんです。自分の持ち物に手をかけるのは普通でしょう」


「難儀な性格をしていますね」


ハルフォンが溜め息混じりにいう。馬鹿にされているわけではないのはわかるが少々苛つく。他人から見れば図星を突かれたので面白くないだけだといっただろう。


「あなたに言われたくありませんね。短気では、大事なときを見逃しますよ」


「余計な世話だ」


「今日はもう止めにするべ。見回りの時間だ」


クローブと手合わせしていたトゥルスが時間を告げた。たしかにそろそろ暗くなってきたので今日の所はやめたほうがいいだろう。


「もうそんな時間か。では、我々はこれで失礼しよう」


「明日はもう少し詳しく短剣の使い方を教えるだ」


「わかったよ。ありがとう兄ちゃん!」


訓練を通してクローブとトゥルスが仲良くなったようだ。俺からすれば相手から知識を得られるならどんどん知識を得てほしいと思っている。


「我々も戻りましょう。暗くなっても戻らねばマリアさんが心配するでしょう」


マリアの心配は、俺達がいないから夕食が食べられないというものだと思う。


「夕食なにかな♪」


クローブが楽しそうに尻尾を振るからどうでもいいかとユーグは思う。


しかしそのあとユーグの予想通り、マリアがご飯を食べられなくて駄々をこねていたのには呆れ返るのだった。

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