神話
この世が海しかなく陸がなかったとき天は、二柱の神を生み出した。
ひとりはイガナジという一柱の男神。
もうひとりは、イアナジという一柱の女神であった。
二人は天の意志により出会い慈しみあった。しかし、イアナジがイガナジに求婚したため間違いが生じて最初の子は、男女のないおかしな子であり捨てた。
慌てて二柱は、出会いを最初からやり直した。
イアナジは、一人目の子を産んだ。
最初の子は、二人の力を譲り受けていた力がとても強く現在いる大陸となった。
二人目の子は、澄んだ水を生み出す女神だった。生まれてすぐ出した涙は、地をうるわした。
三人目の子は、植物を生み出す神だった。笑うとかわいらしい黄色の花が咲いたという。このとき咲いた花は、現在教会が祝いの場でだすダンデルの花である。
四人目の子は、生まれてすぐ死んでしまった。死んでしまった神は、丁寧に埋められた。やがてその子は、冥府の王として君臨した。これが初代魔王である。
四人目の子が死んでしまった悲しみにイガナジとイアナジは、苛まれたが新しい命がうまれた。
五人目の子と六人目の子は、双子として生まれた。五番目の子は太陽を司り、六番目の子は月を司った。
七番目の子は、海を司る神でとても荒々しい性格をしていた。しかし、気に入ったものには、やさしい気まぐれな性格でもある。
八番目の子は、雷を司る神で我慢強い性格であるが常に不機嫌でひとたび怒ればその場所に雷が落ちてしまうのだった。
九番目の子は、金属を司る神であった。この神が最初に創った剣は、ファッターフというとても強い力を秘めていた。それを父であるイガナジに献上した。
十番目の子は、年を司る神であった。
十一人目の子は、風を生み出す女神だった。女神の息は大陸の風となり隅々まで行きわたった。
十二人目の子は、上の兄弟たちと違いなんの力をもたない子であった。それ故に、上の兄弟に愛されかわいがられていた。そのためこの神は次々子を生し増えた。これが人の祖先である。
十三番目の子は、火を生み出す神であった。この神は生まれた瞬間に母神であるイアナジを焼き殺した。そのためイアナジは、冥府に落ちた。そしてその原因となった火の神は、イガナジがバラバラにして捨ててしまった。その体は、火山を創りだし大陸に様々な地形ができた。
イガナジは、十三番目の神を切り裂いたあとイアナジを現に連れ戻すために冥府に赴いた。そこには、死んだ四番目の子が待っていた。
「息子よ。イアナジはどこです」
「父神、貴方を母神に会すことができます。ただし、質問に答えていただきます。場合によっては、母神と合わせることはできません」
「私にたてつくというのか!」
「母神のための質問です。私も私を産んでくれた母神が愛おしいと思います。だから父神にこの質問をする必要があります。母神が、どんな姿になっていても愛することができますか」
イガナジは、イアナジの姿を思い出していた。見目もよかったが一番惹かれたのは魂の輝き。だからどのような姿になったとしてもかまわないと思った。
「当たり前です。私の妻は、イアナジのみ。さぁ、質問に答えたのだからイアナジのもとに連れていきなさい」
「・・・わかりました。母神はそこの洞窟の中におります」
十三番目の子が、苦々しい顔を浮かべたのに気が付かずイガナジは洞窟に走り出した。
「イアナジ!イアナジ!」
「イガナジ!」
洞窟からイアナジの声が聞こえイガナジは、駆け込もうとします。しかし、イアナジは、イガナジをその場に留まるように言いました。
「イアナジどうしたというのです」
「洞窟で生活していたのでひどい格好をしているのです。用意が整うまでこちらに来ないでくださいませ」
イアナジが必死に訴えるのでイガナジは、しぶしぶ待つことにしました。
しかし、イアナジはなかなか返事を返さなかった。痺れを切らしたイガナジは、イアナジを驚かそうと言いつけを破り洞窟の中に足を踏み入れました。
そこで見たものをイガナジは、驚き悲鳴もあげられなかった。イアナジの体には、蛆や家守、百足などが湧き覆い尽くしていた。それらがイアナジの体をむさぼるたびに血が流れそれが魔物となっていく。生まれた魔物は、母の体から湧く蛆や家守、百足を喰らっていた。
イアナジは、冥府の食べ物を食べてしまったのだ。冥府の食べ物を食べてしまえば現には戻れない。しかしイアナジは、ふつうではなく力ある神だった。だから持ちうる力を使い蛆や家守、百足をを除いてしまえば現に戻ることも可能であった。
だが一つ誤算があった。イガナジがイアナジのその醜い姿をみて恐れおののいてしまったのだ。そしてイガナジは、イアナジを置いて洞窟を離れた。そのとき石を蹴ってしまいその音が洞窟に反響した。
「イガナジ・・・?もしや!」
イガナジが己の姿を見て逃げ出したことを知ったイアナジは、恐ろしい姿のままイガナジを追いかけた。
「あぁ、愛するひと。なぜ、私を置いていくのですか。私を愛しいといったその口と心は、偽りだったのですか!」
「いいえ、あなたのことは相変わらず愛しいと思います。しかしあなたの姿をみて生きる世界が違うと潔くわかってしまった」
「違うなどと言わないで!愛しいならば一緒にいてくださいまし」
「それはできない」
イガナジはそう言い切る。
イアナジは、イガナジを捕まえようと己の血から生まれた魔物にイガナジを追いかけさせた。イガナジは、近づいてきた魔物をファッターフで切り裂く。そしてイガナジが現への入口にたどり着くと頭に挿していた櫛を粉々にして撒いた。
それは木となり桃が育つ、桃の香りを魔物は嫌い追いかけて来なくなった。
そして現に戻ると冥府への入口を封印してしまった。
「イガナジ!封印を解きなさい。さもなくば一日に千人を冥府につれていくわ!!」
「ならば私は、千五百の子が生まれるようにしよう」
これが人の生死の始まりである。
諦めたイアナジを見届けたあとイガナジは、イアナジに対抗するために一つの存在を創りだすことに決めた。そのためにイガナジは、三番目の子のもとにむかった。
「父神どうしたのですか」
そう訪ねてきた息子にイガナジは、今までのことを話した。
「お前の力が必要だ。植物のように長く生き十二番目の子のように行動できるものを創りたい。できれば冥府のものに対抗できる力があれば尚よい」
「…ならば、父神の御髪が必要です。私の力だけでは、植物を創るだけで精いっぱいでございます」
「わかった。ならこの髪をお前にやろう。この髪をほめてくれたイアナジは、現にいないのだから」
そういうなり長くのばしていた髪を切り三番目の息子に与えた。
「父神は、どうするのですか?父神が止めれば死なぬのでないですか」
「これは、私が犯してしまった過ち。だからその償いに私の体、命の一欠けらまで使い生きているものの寿命を延ばそうと思う。それに、私の欠片があるのだからイアナジもへたなことはしないだろう」
そういうやいなやイガナジの、体は光り輝き生きとし生けるものすべてのからだへ入り込んだ。しかし、均等に分けられるわけもなく長命の生き物と短命の生き物ができてしまった。
三番目の子は、父神のいなくなったあと父神に頼まれたものを創ることにした。そして出来上がったのは、人間のような見た目だが緑の翼の生えたものたちだった。これがのちにエルフと呼ばれる一族である。
そしてそのとき生まれた最初のエルフの名は、アルバという――――――――




