商人捕まる
「う‥、ここは‥‥?」
俺が目を覚ますとところどころに木がはえた崖があった。そういえば崖からおちたんだっけか?その割に体が痛くないのは、木にあたったからかな。直接落下してたらひとたまりもないはずだ。
「くーちゃん目が覚めた?大丈夫??」
「お姉ちゃんも大丈夫?」
「私はね~。木に引っ掛かって地面にぶつかってないからくーちゃんほど痛みは少ないよ。とりあえず擦り傷は、ユーグさんがもたせてくれた傷薬塗ったから大丈夫。くーちゃんにも見えるところは塗ったけど‥‥」
いわれてみれば腕に緑色のなにかが塗られている。ぴりぴりするが血が流れている様子がない。
「そういえばおっさんは?もとはといえばあの人が先に落っこちたんだよね。姿が見えないんだけど」
「いっちゃんはね~。あそこ」
マリアが指を上に向ける。まさかたいして役にたたないうちに死んだのか!?
「助けて~、木に服がひっかかった!」
なんだ残念。服が崖の途中の木に引っかかってる。
「体を揺すれば降りれるよ」
「本当か!よしっ。うわっあ」
服が破けておっさんが落ちた。地面からそんなに高い場所じゃないから大丈夫だろう。
「マリア姉ちゃんこれからどうする?どう頑張ってもここは、登れないと思うんだ」
「エルフさんがいる場所に行けばいいんじゃないかなぁ?ねぇ、クーちゃんいっちゃんそろそろ起こしたほうがいいよねぇ?」
マリア姉ちゃんが指でおっさんの頭をつつく。途端におっさんがガバッと起きた。
「こんにゃろう!下に落ちたぞ。それなのにつつきやがって‥‥!」
「おっさんここは森だよ?大きな声だしたら大人しいのは逃げるけど、恐いやつとかは寄ってくるからやめなよ」
「わかってるっての!‥‥‥そういやここどこだ?それとあの妙にニコニコした兄ちゃんと騎士は‥‥‥?」
おっさんが辺りを見渡す。
「落ちたのは俺たちだけ。それより場所わかんないの?エルフのとこ連れて行ってくれるんだろ」
「いや‥‥その‥記憶にない場所でどこにいったらいいか‥」
さっきまで眉をつりあげて怒っていたのに今は目が泳いでいる。
「えー、迷子ってことですかぁ?それは困りますぅ」
「俺たち完全に迷子ってことか?‥‥‥そうだ!父さんが言ってた。道に迷った時は、まず元の場所に戻れって」
「まさかこの崖を登れっていうのか?」
おっさんがオレたちの目の前にそびえたつ崖を見上げる。
「誰も登れなんて言ってないよ?崖沿いに歩いて登れる所を登ればいい。12歳の子どもでもわかるのにおっさんわかんないの?」
「そんなことくらいわかるっての!それじゃこっちにいくぞついてこい!」
赤絵具をつけたみたいに顔を真っ赤にさせたおっさんが堂々と歩きだす。はっきりいって不安が残るがバラバラになるのは危ない。
なんて思ってると右手が誰かに握られた。
「クーちゃん私迷子になりやすいから手つないでいこうか」
「マリア姉ちゃんそれはオレの台詞だと思うんだけど」
「いいからいいから」
ニコニコと笑ってマリアお姉ちゃんは歩き出す。誰かと手をつないで歩くのは久しぶりだ。それにマリア姉ちゃんの白くて細い手は、母さんを思い出させてちょっと安心する。だからユーグの分もマリア姉ちゃんを守らなきゃなと思うのだった。
「‥‥‥ユーグ殿、これはどういうことでしょうか」
「さぁ、歓迎されていないことは確かですね。こんな扱い久しぶりですよ」
エルフの村を探しながらマリアたちを探していると突然槍を突き立てられた。
ぱっと見て5人以上いるので、敵意がないことを示すために両手を挙げる。男たちは、小さな緑の羽をつけていた。もしかしたら生えているかもしれないが、服を脱がさないとわからない。
「お前ら何しにきた。ここは迷いの森地元の者ならば入ろうと思う馬鹿はいない!」
「私共はですね‥‥」
「貴殿こそ敵意のない相手に槍を向けておいて脅しをかけるとは卑怯。我らは、魔王‥‥」
「お前ら魔王の手先か!」
ウィレームが余計なことを言うから変な誤解を与えてしまった。ただわかったことは、魔王とこの男たちが敵対しているということだ。少なくとも魔族ではない。
「このものたちは、悪人のような顔している。特にこっちの黒髪のやつ特に悪そうですよ」
失礼な、僕は真っ当な商人ですよ。騎士のウィレームは、目つきが鋭くて怖いかもしれないけど!と心の中で訴えかける。
「ユーグ殿、最悪剣を抜かねばならないかもしれません」
こいつ血の気ありすぎだ、状況を見ろ!
「状況が悪くなるだけだろ。ここは話を聞いてだな‥‥‥」
「村の場所を知られる前に殺すべきだ。逃がしたら後で倍以上の数になってやってくるに違いない!」
「それゴキ○○だろ‥‥。つーか血がついたら汚れが抜けるまで村に入れてもらえないぞ。汚れは、願いに支障がでるからな」
言い争っているうちに逃げた方がいいかもしれない。勇者としての使命より自分の命の方が大事だ。
「とりあえずとっつかまえでさ。村長にぎぎにいっだほうがいいとおもうべさ。それじゃ駄目が?」
「それがいいよ。抵抗する気ないみたいだし。そうだろ?」
面倒は、少ない方がいいので頷いた。
すると同意を求めてきた男がポケットから何か取り出し囁くと、途端に蔓が伸びて僕とウィレームを拘束した。見たことのない植物だが商品化できたら儲かりそうだ。非力な貴族の令嬢の護身用に一個一円で売買すれば相当数売れるだろう。
「オレが長に話じでぐるがらカシュガンとハルフォン見張りをよろしく頼むだ」
「おう!任せろ」
異様になまっている奴が森の奥に走ると、残された俺たちはただ黙る。
「そんなに構えんなよ。人間のお客様は、久しぶりだから丁重に接しないと俺たち怒られるんだ」
「人間以外のお客様が来るのですか」
「この前は、魔族が来たな。しかもクラスが高い奴。いや~ビビったわ」
赤毛の男が腕で肩を抱き震える。だが顔が笑っているので本当に怖がっているかわからない。青い髪の男が赤毛の男を睨みつける。
「口が滑りすぎだカシュガン。少しは黙れ」
「はいはい、すみませんでした~」
それから訛っている男が戻るまで無言の時間が続いた。
しばらく経つと訛っている男と共に白に近い長い銀髮の男がやってきた。それを見つけた二人は俺たちに視線を外さず礼をする。
「侵入者とはこの二人のことか」
「はい、アルバ様」
アルバと呼ばれた男は、じっと俺とウィレームを見た。ただそれなのに背中に冷や汗が吹き出してくる。
「あなた方の名は?」
「ジルバーシュタイン・ウィレーム」
「ジルバーシュタイン‥‥‥その名は、北の国の神殿を守る一族のものだったはず。なぜこんな場所にいるのかな?」
アルバは、微笑みを浮かべたまま尋ねる。俺も初耳だ。そもそもウィレームのファミリーネームを聞いたことがなかった。神殿を守る一族がなぜ国王を守っているのだろうか?
「三代前からヤーマの王に仕えております。現国王であるマサヤス様の命により、勇者のドラグル・ユーグ殿の魔王討伐の旅の仲間としてこちらに来ました」
ウィレームの話の途中でアルバは、顔色を変えた。微笑んでいるのは変わらないが興味の対象が俺に変わった。
「ドラグル‥‥ドラゴンを示す姓ですね。それに名も面白い。あなたの名前をつけたのは、どなたですか?」
「ドラグルは、ヤーマ王から。ユーグという名は、母がつけたと聞いてます」
「そうですか。久々のお客様は、本当に面白いですね」
アルバは、ニコニコ笑う。観察する視線がなくなったのでたぶん敵意がないことは伝わった。だがアルバは、突然表情を変え三人に叫ぶ。
「お前たち備えなさい!」
「「「はい!」」」
三人は、アルバと俺たちを囲むように立ち前方に武器を構えた。糸を強く張ったようなギリギリとした緊張感が漂う。
明らかに何かを警戒しているが何を警戒しているかわからない。話かければわかるかもしれないが話しかけては、いけないと思わせる雰囲気がそこにあった。
だがしばらくすると原因がわかった。鳥の鳴き声と大きな音が聞こえてくる。
そしてそれは、突然現れたのだった。




