ホウレンソウは大事です
宿に戻るとクローブが待ちかねたとばかりに出迎えた。どうやら他の客は朝食を食べ終えたらしく姿が見えない。
「みんな遅~い。準備したから座ってよ」
よく見ると机に5人分の料理が並んでいる。それぞれ好きな席に座ろうとしたが何故か阻まれる。
「ユーグさんは私の隣です。ユーグさんにスープのおかわりをあげるんですから」
「お盆をひっくり返す人にそんなこと出来ませんー。座るのはあたし」
「俺がユーグの隣座る!」
ガキの喧嘩ですね。完全に蚊帳の外のウィレームの目尻に何か光るものが見えたのは気のせいだろう。
結局店が忙しくベルは退場、マリアが右でクローブが左に座ることになった。
「お店が忙しいなら最初から入って欲しくないです」
「ベルはなにげにマリアやクローブのこと気に入っているのですよ。素直ではないからつっかかるんでしょう」
「むぅ‥‥」
「この料理おいしい!」
やはりベルがニヤニヤしながらこっちを見ている。笑い方が気持ち悪いが言ってやらない。
「みんな食べ終わりましたね。昨日情報が手に入りました。私とウィレームが、泊まっている部屋に移動しましょう」
「は~い」
「うん」
この二人に聞いてあれが解けるかわからない。だが聞いてみるしかない。
「ねぇねえ、それ私も聞いちゃだめかしら」
「それは‥‥」
「いいですよ。情報は、いくらでも欲しいですから」
ウィレームが何かいいたげだが気にしない。俺は、俺のやりたいようにやる。
「まずはこれを見て欲しい」
昨日ウィレームが白紙だと言った紙をだした。
「これどういう意味ですか?」
「見たまんまの意味じゃない?」
「クローブ君は小さいから許すけどマリアちゃん少しは考えた方がいいわよ」
「待ってください、マリアさん達はこの紙に書いてあることが読めるんですか?」
三人とも頷く。見える人物と見えない人物の違いがわからないな。
「私に読めなくてみんなに読めるとは‥‥」
「とりあえずウィレーム様がこの紙の内容が見えないそうなので書き写したのがコレです」
「うーん‥‥?緑とか黒ってどういう意味なんでしょう。肌が?髪が?目が?あとやっぱり竜って羽が生えてて口がおっきいあれのことですかね」
説明するためなのかマリアは、人差し指で口の両端を引っ張っている。面白いが馬鹿に見える。
「だと思いますがね。でも竜を守っている緑の民とは‥‥?そもそも竜は存在しているのか」
「聞いたことないわねー。竜を見たなんて言ったのは、昨日話してたジョーくらいよ」
「僕知ってるよ」
「へ‥‥‥‥ぇえ!!?クローブ君知ってるの?」
マリアの声に全員耳を塞ぐ。クローブは、獣人なので耳が良いために目を白黒させている。とりあえずみんなの耳が回復するまで待ってクローブは話を続けた。
「父さんと母さんが僕が生まれる前に行った村に竜の伝説があるって。確か‥‥プーコ村だったかな」
「プーコ村ってユルルガ国内にあったような‥‥」
「地図で確認しましょう」
俺は、カバンから地図を取り出した。両親の使っていた地図なのでかなり痛んでいる。
「地図があるのか?軍事的な理由でこんなに詳しい地図はないはず‥」
「私の両親が自作した地図ですから‥‥。あぁ、ユルルガ国の東にプーカ村がありますね。とりあえず次は、プーカ村に行きましょう。他に手がかりがないですし」
「えー、行っちゃうの~?あと2、3日いていいのに」
ベルは、不満げな顔を浮かべる。
「私は1日でも早く店に戻りたいんです。手がかりがあるなら‥‥」
「‥‥ごめんなさい。店を開く為に頑張っていたことを知ってたのに。でも、いつ会えるかわからないましてや今回は!」
「ユーグさんなら大丈夫です!私やウーさん、クーちゃんがいるんですから。ユーグさんは絶対死んだりしません」
「‥‥そういう問題じゃないんだけど。仕方ない私が出来ることをしましょう。ちょっと待ってて」
ベルが部屋から出て階段を下りて行った。ベルの不安は、もっともで周りを心配させるわけにはいかない。だからあえて平然としているが正直不安だ。
「ベルさん何をとりにいったんですかね?」
「私にはわかりかねません。ベルさんの思考回路は私と違うようですから。ユーグ殿はわかりますかな」
「さっぱり」
「俺はおいしい料理を持ってくると思う」
「クーちゃん方向は当たってるけど外れ~。正解はこれ」
机の上に何冊もの手帳と本が出された。それを見てクローブは嫌そうな顔を浮かべている。
「なにこれー。草ばっかり」
「野草のレシピよ。野草には薬草や毒草もあるわ。あっ、毒草と言っても使い方によっては薬草になるから。持って行って損はないわよ」
「ありがとう、でもこんなのよくあるな」
「料理人だからね。こういうのは知ってたほうが料理の幅が広がるでしょう。実際昨日のカレーにも入れてたし。これに入れて持って行きなさいよ」
小さい鞄に手帳や本を次々入れるが一杯にならない。
「これ異界バッグでしょう?こんな高価な物を」
「あたしはあたしがしたいことをするのよ。人の価値観なんて邪魔よ。ほら利息付きで貸してあげる」
「わかりました借ります」
俺はベルから鞄を預かった。
「よし、これからプーコ村に行くぞ!」
「「おー!」」
マリアとグローブが腕を突き上げた。やる気はあるみたいだ。やる気がなければ困るのだが。




