表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二十六歳無職がJKに助けられる話  作者: 灰音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/4

三話目


「え、今晩帰ってこないの?あ、ああ……そう……。皐月ちゃんのことは、ど、どうしたらいい?うん……」




 まずいな。




 なんで今日なんだよ。




 皐月ちゃんが来る日なんだから、一番家族がいてほしい日なんじゃないのか……?




「千歳さんの親御さんたち、今日帰ってこない感じですか?」




「帰ってこれるか分からないから、夕飯は勝手に食べててって言われちゃって」




「そうですか」




 ……なんか気まずいな。




 いや、俺が勝手にそう思ってるだけなんだけど。




 向こうは全然気にしてなさそうだし。




 家族が帰ってきてくれてたら、一回空気リセットできたのになあ。




 散歩から帰ってきたことで多少は変わってる……よな?




 うん。きっと。




「えーと……どうする?」




「どうする、とは?」




「外食するか、家にあるもので適当に食うか……ど、どうする?」




「え、私に聞くんですか?」




「我が家に来た初日なんだし!一番したいことできた方がよくない?!」




「お、おぉ……勢いすごいな……。まあ、そういう考え方もありますかね?」




「でしょ?」




 ふう……何とか誤魔化した。




 俺、料理とかしたことないからな。




 外食選んでくれたら正直助かるんだけど。




 ……いや。




 でも外出たくないな。




 俺が。




 詰んでね?




 誰でもいいから早く帰ってきてくれー。




「できれば家でゆっくりしたいですかね」




「そ、そうか……」




 いや、ゆっくりするだけならそりゃ好きにしてもらっていいんだよ?




 でもその言葉には隠れてるんだよな。




 夕飯っていう重大イベントが。




 何をどうやって食うんだ……。




 カップ麺とか袋麺でいいなら俺も全然いけるよ?




 でも流石にさ。




 俺は大人だ。




 こういう時の解決方法を知っている。




 とてもシンプルな方法だ。




「皐月ちゃんって、ご飯作れたりする?」




 ……今日初めて家に来た人に何言ってんだよ、俺。




「え……? ま、まあ……出来なくはないですよ」




「言いにくいんだけど……お願いできたりする?」




「私、今日初めて来たんですけど」




「だ、だよね……」




「とりあえず食材とか見てもいいですか?」




「え、いいの……?」




「いいのっていうか……そうするしかないんじゃないですか?」




「そうかも」




「本当にごめんだけど、どこに何があるか分からないから……適当に探ってもらっていい?」




「……はい」




 うわ。




 すんごい呆れられたな。




 こいつ家事とか何にもやってねーんだなって思われたか?




 お前ずっと家にいるだろ、って。




 ……いやいや。




 思い込みだよな?




 そういう目に見えるだけで、実際は思ってないよな……?




 俺は黙って皐月ちゃんの行動を見守る。




 家事とか少しでも手伝っときゃよかったなあ。




 多少はかっこつけられたろうに。




 うちの母親はそういうの手伝わせないタイプだった。




 自分で全部やっちゃう人間だったから。




 荷物運んで、くらいは言われたことあったけど。




 言われたことなら出来る。




 でも何も知らないから自主的に動けない。




 今こうして皐月ちゃんが自主的に動いてる横で、俺は何も出来ない。




 情けねえな。




「どうにかなりそう?」




「んー……私基準で言えばどうにかは出来そうですね。勝手に食材使っていいならですけど」




「知らないけど……いいんじゃない?」




「……出来るだけ少ない食材で簡単なの作りましょうか」




「多分使っていいと思うよ?」




「全く信用できないです」




「だよね……」




 俺への信用度、ゼロ。




 ……逆に助かるな。




 こんな俺が頼られる展開とかあったら困るし。




 そう。




 これでいいんだ。




「味噌汁と卵料理とサラダと白米とかでいいですかね?」




「え、めっちゃすごくね?」




「なら大丈夫そうですね」




 料理できる人ってすげえな。




 普通の食事がポンポン出てくる。




 メニュー考える能力っていうのかな。




「どこぞのおにーさんは手伝います?部屋で待ってます?」




「何にも出来ないけど……手伝っていい?」




「何を手伝ってくれるのか分からないですけど、お願いします」




 ……地味に嬉しい。




 本当に役に立つか分からないけど。




 なんか嬉しいな。




「何すればいい?」




「そうですねー。あ、ちなみに卵焼きか目玉焼きどっちがいいです?」




「え、皐月ちゃんの好きな方でええよ?」




「その皐月ちゃんが千歳さんの好きな方を聞いてるんですけど?」




「こ、こわ……そんな圧かけんでも……。んー……目玉焼きかな。塩胡椒と醤油かけたやつ」




「塩分濃すぎない……?絶対身体に悪いでしょ」




「それはそうかも」




「まー分かりました。とりあえずご飯研いでもらったりしよかな」




「それぐらいなら出来そう!」




「大体でいいんで」




「おっけーです!」




 米研ぐのとか……いつぶりだろ。




 ……なんか。




 こんな簡単な作業してるだけなのに楽しいな。




 もしかして俺、家事楽しむ才能ある?




 ……とか思っちゃうんだろうな。




 素人は。




 これは好きなタイミングで、責任もなく手伝ってるから楽しいんだよ。




 俺はそういう勘違いしないから。




 大丈夫。




 毎日やれるとか思ってないから。




「意外と様になってるじゃないですか」




「そ、そーお?」




「照れすぎ」




 恥ずかし。




 直接言われると普通に照れるわ。




 年下に言われるのって逆に変な気分になるな……。




 こういう風に家事しながら、隣であれこれ言われる感じ。




 ……なんかちょっと憧れるな。




「家事とか普段してたん?」




「まあ、それなりには。お母さんたち帰ってくるの遅かったりしたし。ある程度は出来ますよ」




「やっぱすごいんやなー、女の子って」




「性別関係あります?」




「え、ないもんなん?」




「んー……多少はあるかもですけど、男でも出来る人多いでしょ」




「まあね。でも家事出来るってええやん。将来良いお嫁さんになりそうやなあ」




「はは……そうなれるといいですね。正直想像できないですけど」




「そうなん?」




「自分が誰かと恋愛して、幸せになってるのとか想像できないなーって。逆に出来ます?」




「皐月ちゃんが幸せそうにしてる姿は想像できるけど、自分はちょっと無理かなー」




「ですよね。自分だとそんなもんなんじゃないですか?」




「なるほど」




 一つ思ったこと言っていい?




 なんか精神年齢高くない?




 普通に俺より大人じゃない?




「皐月ちゃんって凄いんやな」




「え、どこがですか?というか何が?凄いって言われる要素ありました?」




「こわいこわい。急に詰めないでよ」




「いや、だって意味分かんなかったんですもん」






「そ、そんなに?いや、俺が思ったんは、大人な思考で凄いなーって」




「はぁ……そんなことですか。それ、勘違いですし、私は別に凄くないですよ」




「自己評価厳しいなー?まあ、俺が勝手に思ってるだけやし。それならええやろ?」




「私にはどうしようもない部分ですし。ご勝手に」




「そりゃどーも」




 ……皐月ちゃんって意外と自己評価低いんやな。




 まあ、人間なんて意外とそんなもんか。




 自分のことって、人よりよく知ってるし。




 なんか俺と同じで、自分のことをあれこれ言われるの好きじゃないタイプなのかな。




 ……知らんふりして聞いてみるか。




「普段、学生生活どう?ていうか今何年生?」




「急ですね……。別に普通ですよ。高校二年です」




 高二だって……。




 眩しすぎるな。




 夢と希望しかないじゃん。




「いいねー」




「え、何ですかその適当な返事」




「いや、本音だよ?年取るとそういう風に思うんだって」




「確かに大人ってみんなそう言いますね」




「そうそう。まあ子供の時は、こいつらうるせえなって俺も思ってたんやけどなー」




「分かります」




 ……あ、今まさに思われてるんだ。俺。




「毎日楽しい?」




「特に問題なく。普通に楽しいですよ」




「一番いいやん。勉強とか出来る方?」




「それなりには。そんな苦手ではないですよ」




「ほー」




 めっちゃ良い学生生活送ってるな。




 優等生っぽいしなあ。




「なんか最近、面白いニュースとか無かった?」




「えー……何かあったかな。全然面白い話じゃないですけど、友達が最近新しく出たゲームにハマって徹夜で学校来てたくらいですかね」




「女子高生もゲームとかするんだ」




「いや、人によるだろうけど普通にするでしょ?」




 俺が子供の頃って、してる子は確かにいた。




 でも男子に比べたら圧倒的に少ないイメージだったんだよな。




 今と昔じゃ結構変わってるのかもな。




「そんなもんか。まあ楽しいもんなゲーム。皐月ちゃんはやったりするん?」




「え、まあしますよ?友達が勧めてきたりもするし。そもそも結構好きですし」




「へー、意外」




「意外も何も、私のこと何も知らないでしょ?」




「鋭い鋭い。いやいや、今日初対面でもイメージとかあるやん?」




「まあ……それはそうかもですけど」




「ほらほら。まあそれは置いといて。どんなゲームするん?」




「結構なんでもしますよ。RPGもノベルゲームもFPSも」




「ちゃんとゲーマーやん……」




 これが今時なのか。




 俺の時と全然違う気がするな。




 高二って何歳だっけ。




 ……結構離れてるよな。




 そんだけ離れてたら時代も変わるか。




 ほんま、大人と子供って感じ。




 ジェネレーションギャップえぐいんやろな。




 なんか既に感じるもんな。




「JKの間で最近流行ってるものとかあるん?」




「んー……朱音が言ってたゲームあったんですけど何だっけな。私はゾンビ系の新作ゲーム好きでしたよ。かなり面白かったです」




「え、ホラゲーとかもやるんだ?いいねー」




「かなり怖がっちゃうんですけどね。千歳さんは何やるんです?」




「FPSとかMOBAがメインだったかなあ。まあ俺も同じで、RPGとか別ジャンルも全然やるけどね」




「意外とゲームの趣味合うかもしれませんね!」




「やねー」




 女性が当たり前みたいにゲームしてるって、昔じゃ結構珍しかったよなあ。




 良いことではある。




 ……あるんだけど。




 どこか、自分みたいな人間の居場所が減っていく感覚も否めない。




 まあ考えすぎか。




「ゲーム機とか持ってきた?」




「携帯ゲーム機なら。それ以外は流石にどうなんだろーって思って持ってきてないです」




「なるほど」




 まあそりゃそうだよな。




 見ず知らずの家に住ませてもらうことになって、据え置きゲーム機まで持ってくるのは結構勇気いる。




「まあ、俺の部屋にあるゲーム機なら好きに使っていいよ」




「え、ほんとですか?」




「うん。……ていうか、使ってないパソコンあるけど使う?そんなめっちゃスペックいいわけじゃないけど」




「え、そんな贅沢なことさせてもらっていいんですか?」




「別にいいよ? パソコンの方はしばらく使ってないから、一回動作確認しないとだけど」




「私としては借りる側なんで、使えるなら何でもありがたいです」




「じゃあ後で見てみようか」




「ありがとうございます」




 無事に動くといいな。




 ……てか待て。




 動作確認の前にデータ確認しとかないとまずいな。




 変なもん残ってたりしないよな……?




 ……いや。




 過去の俺。




 お前、信用できねえんだよなあ。












「てゆーか、手際良いね……!俺、ほとんど話してただけなんだけど」




「いや、言ったことを手伝ってくれる人いると、実際かなり楽なんで助かりますよ」




「そう言ってくれると報われるなあ」




 正直、あっという間だった。




 話しながらやってたからなのかな。




 なんか気づいたら終わってた感じだ。




「じゃあテーブルに運んで、食べましょうか」




「せやね」




「私、どこ座ればいいです?ここって普段決まってたりします?」




「え、好きなとこでええんちゃう?」




「今はそれでもいいかもしれないですけど、普段使われてる場所とか座うと失礼じゃないですか?」




「そんな気にせんでええよ」




「一応聞きます。ご家族はどこ座ってるんです?」




「そこらへんかな」




「じゃあ、ここにしますね」




「そこなんだ」




「はい」




 四人掛けのテーブル。




 椅子は四つ。




 ……隣同士で座ることってあんまりないよな。




 いや、初対面なら逆にそっちの方がいいのか?




 視線合わせなくて済むし。




 なんかカウンセリングとかでも対面で座らないって聞いたことあるし。




 ……いや待て。




 これってもしかして遠回しに、お前と目合わせたくねーよ、って意味だったりする?




 無意識にそうされてても嫌だし、意識してても普通に傷つくな。




 ……いやいや。




 単純に正面だと緊張するだけだよな。




 うん。そうだ。




「はい、それじゃいただきまーす」




「いただきます」




「……これ味噌汁めっちゃ美味いやん。やっぱ作る人によって味って変わるんやな」




「お口に合ったならよかったです。まあ料理って、上手い下手より舌に合うかどうかが九割な気もしますけどね」




「あー……まあ分かる。高級フレンチとかより、親しみある味の方が好きかも」




「そんな感じです」




 高ければ美味いって話でもないしな。




 良い物なのは間違いないんだろうけど。




 一億のドレスか、毎日着られる安い服か。




 どっちが幸せかなんて人それぞれだ。




 ちなみに俺は後者。




 そもそも高級フレンチとか食べたことないけど。




「作る前から思ってましたけど、目玉焼きの塩分やばすぎません?」




「え、食べてみる?美味しいよ?」




「味とかじゃなくて塩分濃度が気になるんですけど……。まあ、せっかくだし一口いいですか?」




「どうぞ」




「……しょっぱ」




「やろ?」




「いや、美味しいは美味しいですけど。ご飯欲しくなりますね」




「俺レベルになるとご飯なしでもいけるからね。そうはならないように」




「こわっ」




 ドン引きされた。




 でも美味いんだよなあ。




 まあ美味しいものが身体に悪いってよくある話だし。




 卵は身体にいい。




 つまりプラマイゼロ。




 ……いや、美味しいからプラスだな。




「なんか久々やなー」




「何がですか?」




「こういう風に話しながらご飯食べるの」




「普段、ご家族とは話さないんですか?」




「全く話さないわけじゃないんだけどね。仲悪いとかでもないし。昔からそんな喋るタイプじゃなかったしなー。友達と家族ってやっぱ違うかな。皐月ちゃんは家族とよく話す方?」




「え、んー……どうなんだろ。まあ、それなりには話す方なのかな。その時によりますけど」




「そりゃそうか」




 一人っ子の男って、実際家族との会話少なそうだよな。




 ……俺がそうだからってだけかもしれんけど。




「……あ、今思ったけど一人っ子だよね?」




「そうですよ」




「よかったー」




「……な、何がですか?」




 そりゃ急にそんなこと言われたら意味分からんよな。




 下手したら警戒される。




「いや、なんか勝手に一人っ子かなって思ってたから。当たってたなーって」




「そういうことですか……。まあ、あんまり意味分からないですけど」




 ……なんか最初より辛辣になってきたな。




 まあいいか。




 勝手に打ち解けてきたってことにしとこう。




 俺だって久々に人とこんな話してるし。




 今まで喋ってなかった分、反動でめっちゃ話してる気がする。




 ぎこちないけど。




「気楽でいいなあ」




「気楽じゃ駄目なんですか?」




「いやまあ……今の俺って優雅にしてる立場じゃないしな。さっさと社会出ろよって感じやろうし」




「私からしたら、事故に遭って、リハビリ頑張って、歩けるようになってる時点で十分すごいですけどね。そもそも生きてるだけで良かったって感じですし」




「んー……まあ、多少はね」




 そんな大層なことじゃないんだけどな。




「いいじゃないですか。優雅に、気楽に。……まあ、内心焦ってそうには見えますけど」




 ……なんか見透かされてる感あるな。




「それに、今があるのって今まで頑張ってきたからですよね?」




「まあ……そうなるんかな」




「そこで今の自分を否定するのって、助かったこととか、リハビリ頑張った過去まで否定してるのと同じじゃないですか」




「おー……なんか凄い励まされてる感ある」




「響いてなさすぎ……」




「いや、嬉しいのはほんとだよ。ありがと。現に、その言葉で頑張ろっかなって気持ちは多少芽生えたし」




「多少なんですね」




「出来るだけ嘘つかんようにしようと思って」




 ……頑張れる自信ないからなんだけど。




 でも言葉は普通に嬉しい。




「頑張ったら嘘じゃなくなるじゃないですか」




「だよねー。若者の言葉って感じ」




「やめてくださいよ、その若者いじり。言われても私どうしようもないじゃないですか」




「えー。まあそうだけどさ。……やれたらやる」




「やらないやつじゃん……」




 まあね。




「いやでもほんと、ご飯美味しいね」




「誤魔化し方下手すぎ。……まあ褒められるのは嬉しいですけど。普段からお母さんに感謝しといた方がいいですよ。メニュー考えるのも大変なんですから」




「俺は結構言ってる方やと思うよ? 自分からも言うし、聞かれた時もちゃんと言ってる気がする」




「いい息子さんじゃないですか。それならよかったです」




 ……弱者の人間ってさ。




 こういうことぐらいちゃんとしてないと駄目なんだよな。




 持論だけど。




 弱い立場の人間ほど、感謝とか最低限のことはちゃんとしなきゃいけない。




 俺には出来ることが少ないから。




 せめてそういう部分だけは。




 事故に遭ってから、余計そう思うようになった。




 人にも前より優しくなった気がするし。




 案外、一回人生壊れかけた人間って、周りに優しくなるもんなのかもな。




 ……知らんけど。




「ていうかー」




「ん?」




「私が生活する上で、何か助けた方がいいこととかあります?」




「え?」




「日常生活に問題ないのは分かるんですけど、それでもこうしてくれたら助かるなーとかあるのかなって」




「いや、特にはないかな」




「ほんとに?」




「まあ……両手で物持ちながら階段上がる時とかはちょっと怖いけど。でも危なそうなら一個ずつ運ぶし、一々助けてもらうほどじゃないかな」




「はぁ……」




 ……なんだその反応。




「そういう危なそうなこと、しないでくださいよ」




「え?」




「一々言えってのは無理だと思いますけど、少なくとも私が見た時くらいは手伝いますから」




「……そういうつもりで言ったんじゃなかったんだけど」




「住ませてもらってる側ですし。それくらい普通ですよ」




「……ごめん、ありがとう」




 実際そんな場面、あんまりないだろうけどな。




 俺だって一応気をつけてるし。




「ご馳走様でした」




「作ってくれてありがとう。ご馳走様でした」




「もう大丈夫なんで、片付けしときますね」




「いやいや、流石に食器運ぶくらいはするって」




「別に大丈夫ですよ?ゆっくりしててもらって」




「いや、それぐらいはさすがに……」




「こけたりしません?」




「大丈夫大丈夫」




「……ちょっと一回運んでみてもらえます?」




「う、うん……?」




 ……全く信用を感じないな。




 違うか。




 これは今、信用を得る場なんだな。




「ほ、ほら。普通でしょ?」




「んー……まあ一旦大丈夫そうには見えますね」




「ほらー」




「まあ、少し持ってってくれるくらいでいいですよ」




 ……皿運びすらフルで任せてもらえない。




「さっきも言いましたけど」




「うん」




「私、お世話になる側なんですから。色々させてもらうの当然なんで。本当に」




「逆に、お客様だからこっちが色々してあげるって考え方はない?」




「それは友達がお泊まりに来た時とかじゃないですか?私みたいな居候とは違いますよ、流石に」




「ま、まあ……確かにそうかも」




「ですよね」




 ……改めて思う。




 この子。




 めっちゃ偉いな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ