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「え、ダンスパーティーの招待状ですか?」



「ええ、そうなんです。今は季節外れですし、しかも開催は今から3週間後とのことでして。とても準備が間に合いませんし断ろうかと思ったのですが……どうもそうはいかないようでして」


 そう言ってアーノルド様がため息混じりに見せてくれたのはやたら豪華な飾りの付いた1枚の招待状だった。


「この派手な招待状は……王家主催ですね。であれば強制的参加でしょうか」


「あの王家ですから、そうでしょうね」


 私の誘拐(?)事件があってから数日が過ぎた頃。あれから学園でもヒロインからの接触も特に無く平和で穏やかな日々を過ごしていたのだが……。とある日の夕食後、アーノルド様から「相談があるのですが……」とこの招待状を見せられたのだ。



「表向きはこの国の貴族たちの交流パーティーだと言っていますが、どうやらあのボンクラ王子の婚約者を探すのが真の目的のようですね。国中の適齢期の貴族令嬢がいる家を片っ端から招待しているようなのですが、アーシャも目をつけられてしまったみたいなんです……。でも、それを誤魔化そうと思っているのか令嬢本人だけでなく家族全員が招待されているんですよ。それも《《ひとり残らず》》参加するようにとね。

 正式な招待状ですし、さすがに無視するわけにはいきません」



「そう言えば、確かにアーシャ様には婚約者はいらっしゃいませんでしたが……。え、でも適齢期の令嬢全員って、中には婚約者がいらっしゃるご令嬢もおられるのでは?」


「婚姻さえしていなければ本人の心変わり次第ではチャンスがあると思っているのではないでしょうか?すでに悪評だらけの王子ですが、王家と縁を結べるとなれば野心を抱く親もいるでしょうしあり得ないとも言い切れません。まぁ、いざとなれば王命を使ってくるつもりかもしれませんしね」


 心底どうでもいいと言いたげな顔をしながら、疲れたように息を吐くアーノルド様が「こんなことなら、仮初めでも良いのでアーシャに婚約者を作っておくべきだった……」と呟いたのが聞こえてきました。大切な妹であるアーシャ様の身を案じているのだと思うと私も悲しくなってしまう。だってアーシャ様は私にとっても大切な家族なのだ。いくら王家だろうとあんな王子なんかにアーシャ様を嫁がせるなんて容認出来るわけがない。



「そうですよね、もしも無理矢理に話を進められたら断るのが難しくなりますもの。アーシャ様の事が心ぱ「もしもアーシャが王子と結婚したら、エトランゼ嬢と馬鹿王子が間接的にでも親戚になってしまうではないですか!そんな事など許せません!いや、もしかしたら最初からそのつもりでいるのかもしれませんね?!もちろんそんなことなど絶対に阻止しますが!」……えーと、はい?」


 思わず首を傾げる私に、アーノルド様はにこりと微笑みを見せた。


「安心してください、エトランゼ嬢!決してあんな奴にあなたを“義姉上”なんて呼ばせはしませんから!」


「え、あの」


 そのままアーノルド様のテンションが高めになってくると、今度はどこからともなくアーシャ様たちがひょっこりと顔を出してきた。何気にこちらもテンションが高めである。セノーデン伯爵夫妻に至ってはなぜか上機嫌だ。


「エトランゼ様!お兄様!今度のパーティーの事でご相談がありますわ~!エトランゼ様のアクセサリーですが、わたくしのオススメをいくつかお持ちしましたのよ!宝石ブランドの最高傑作なのですが、どれがいいでしょうか?王家主催のパーティーならきっとご飯も豪華でしょうし、どうせならオシャレしてタダ飯といきましょう!そして王子を嘲笑ってやりますわ!」


「ナイジェルからの報告では、このパーティーで婚約者を見つけられなかったら王子は廃嫡になるらしいのよ!もう必死みたいだわ~!あ、エトランゼちゃんのドレスならもう作ったわよ!うちのブランドの最高級ドレスを用意したんだからぁ!せっかく国中の貴族令嬢が集まるんだもの、ついでに宣伝しなくっちゃ!」


「なんでもエトランゼちゃんを手に入れようとして陛下に叱られていたらしいね。そこに例の王女騒ぎで異国からは敵視される原因になったものだから……まさに崖っぷちみたいで、せっかくだからみんなで馬鹿にしにいこう!どうせ廃嫡なんてただの脅しだろうけどそれを本気にした王子が見ものらしいんだ~!」


 なんだか見たことのあるようなデジャヴを感じつつ、不安になってアーノルド様をチラリと視線を送る。もしも本当にアーシャ様が目をつけられたならば決して私を着飾っている場合ではない。いくらセノーデン伯爵家でも王命を使われたらさすがに逆らえないのではないか……。だからこそ、今からちゃんと作戦なり回避方法を考えるべきでは?そんな想いを込めてアーノルド様を見たのだが……。


「アーシャ、それに母さん────その宝石とドレスはもちろん僕の“色”なんでしょうね?!」


「もちのろんですわ!」


「青いドレスに銀の刺繍入りよ~!」


「ついでにギルドから何人か忍び込ませてみようかな~♪」






 ……うん、私は知っている。こうなったセノーデン伯爵家の人間は止められないと。壁際に控えている老執事のマートスさんも私と目が合うと諦め気味にコクリと頷いた。


 こ、こうなったら私がしっかりしないと!アーシャ様は私が守ります!











 

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