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「エトランゼ嬢、今回はあなたのおかけでとても助かりましたが……もう!決して!ひとりで無茶なことはしないでください……!!約束してくれなければ、心配で僕はあなたから1ミリも離れられません!」


 そう言って、アーノルド様が私を膝の上に乗せてぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。寝起きのせいなのか慌てていたせいなのか、いつもならカッチリと着こなしているシャツが少し乱れていて、さらにはいつもより密着度が上がっているせいでアーノルド様の心臓の音がやたら大きく聞こえていた。


「ア、アーノルド様……や、約束しますから、その」


「もしもエトランゼ嬢が危険な目に遭っていたらと思うと、僕の心臓は今にも止まりそうです……。出来ることならずっとこの胸の中に閉じ込めておきたいくらいなのに」


 いつもより甘く切ない声でそう言って少しだけ体を離すと、アーノルド様の青い瞳がいつもより近くで私を覗き込んでくるのだ。これでは私の心臓の方が保たない気がした。


「アーノルド様……ご心配をおかけしてしまってごめんなさい……」


「エトランゼ嬢……とにかくあなたが無事で本当に良かった」


 するとアーノルド様は目を細め、私の額にそっと唇を落とす。その柔らかな感触のせいで熱が一気に頬に集まってしまった。


「ア、アーノルド様……!」


「エトランゼ嬢……」


 私の視線とアーノルド様の視線が重なり、お互いの名前を呟いたその時。



「このイチャイチャシーンはいつまで続くわけ?まさか《《あの》》若さんが嫁をこんなに溺愛するタイプだったとは意外だなー」




 ズズッと音を立ててお茶を飲んでいたナイジェルがあきれた声を出したのである。



「お兄様ったら、今日もとことん攻めていますわね!少し困りながらも溺愛されるエトランゼ様の可愛らしさプライレスですわ!」


「若いって素晴らしいなぁ」


「あらあら、今夜は御赤飯かしらねぇ」


 なぜかすっかりくつろぎモードのセノーデン伯爵夫妻とアーシャ様たちはお茶を片手にお菓子まで頬張っている。そして、まだここはギルドの一室でみんなの目の前だと思い出した私は羞恥心で言葉を失いそうになってしまった。




「見世物じゃないんで、あっちを向いててもらえますか。エトランゼ嬢を愛でるのは僕の特権ですので!特にナイジェルはまだ許したわけではないですから」


 プシューと湯気を吐きそうになっている私を再び密着度MAXで抱き締めて、さらには私の頭を優しく撫でながらアーノルド様がそう言うとナイジェルが「ふはっ」と笑い声を上げる。


「へぇ~。まぁ、旦那の命令なら聞くけど……若さんにあれこれ言われるのは「今回の件については、セノーデン家の意見は一致しているよ。ナイジェル」……りょーかい。まぁ、若奥さんのおかげで仕事もなんとかなったし……どんな罰でも受けますよ」


 セノーデン伯爵の鋭いひと言に、ナイジェルは両手を挙げて「降参でーす」とふざけたように口を開く。しかしふと見えた仮面の奥に光る金色の瞳は笑っていないように思えた。


 確かに拉致同然に連れてこられはしたが、それは私をセノーデン伯爵家の一員として認めてくれたからだしアーノルド様の役に立てたのなら私だって本望だ。アーノルド様が私を心配してくれるのは嬉しいが、あまり厳しい罰はやめてあげて欲しいと思った。


 少し落ち着いてきたのでチラリと部屋の中を見渡すが、例の3人はすでに部屋の中にはいない。


「あの、アーノルド様。今回の事はあまり大事にしないでくださいね……?出来れば軽い罰にしてあげて欲しいのですが……」


 つい上目遣いになりながらそう言うと、アーノルド様はなぜか「ずっキュゥぅぅん!!」と効果音みたいな言葉を口にして天を仰ぐし、アーシャ様は「赤く染まった頬に潤んだ瞳の上目遣いなんて……過剰摂取は致死量ですわ、お兄様!なんならそこを代わって下さいませ!……くっ、鼻の粘膜がぁ!」と興奮気味に声を荒げて鼻を押さえているし、セノーデン伯爵夫妻に至っては「もはやエトランゼちゃんしか勝たん!生きてて良かった……」と私を拝みだすし……。え、なにごと?


「あーぁ、これはまた家族全員イチコロなのか……。若奥さん、やっぱおもしれー」



 ナイジェルがニヤニヤと笑っていたが、結局どんな罰になるのかは教えてもらえないのだった。









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