私のコーチなんだから!
「……それにしても、本当にヒヤヒヤしましたね三神さん。……まあ、よくよく考えればそこまで驚く展開でもなかったかもしれませんが」
それから、少し経過して。
彼女達――三神さんのチームメイトの子達とお別れした後、賑わう道を再び二人で歩いていく僕ら。ヒヤヒヤしたとは言ったものの……うん、よくよく考えればそこまで驚く展開でもなく。なにせ、ここは思いっ切り地元のお祭り――然らば、地元のお知り合いに出会すという可能性は普通にあり得るわけで。……ただ、それはそれとして――
「……あの、三神さん」
「ふぇ!?」
「……あ、その……すみません」
「……いや、なんで謝るの?」
そう、声をかけてみる。というのも……具体的に上手く説明はできないけど、先ほどから彼女の様子に違和感を覚えていたからで。そして、この返事……うん、やっぱりなにか――
「……あのさ、弥夢さん。その……さっき、私をこ、恋人だって言ってたけど…………ほんと?」
「……へっ? あっ、いえいえもちろんあれは話を合わせただけでして、僕なんかが三神さんの恋人だなんて絶対にあり得ないお話で――」
「……へぇ、絶対にあり得ないんだ。ふーん」
すると、あたふたしながら説明をする僕を何とも冷えた目で見つめる三神さん。……うん、そうなるよね。僕なんかが恋人だなんて、本当に烏滸がましいことこの上ないお話なわけだし。
ともあれ、その後も歩を進めていく。だけど、さっきまでとは打って変わって何だか随分と空気が冷えて……あれ、夏だよね? 今。あと、通りすぎちゃったけどいいの? 射的。
「……ところで、褒められてたね弥夢さん。めっちゃ可愛いって」
「……へっ? あっ、はい……」
すると、ふとそう口にする三神さん。何とも気まずい雰囲気だったので、話を切り出してくれたことはありがたい。ありがたい、のだけど……でも、何とも思いも寄らない方向で。それに、あれはいわゆる――
「あっ、言っとくけどお世辞とかじゃないからね? 断言するけど、お世辞とか言わないから、あの子達。あれは間違いなく本心だし……実際、めっちゃ可愛いし、弥夢さん。まあ、どうせ気づいてないと思ってたけど」
「……へっ? あっ、その……」
すると、戸惑う僕にどこか呆れたように微笑み告げる三神さん。……僕が、可愛い? でも、三神さんが言うなら本当にお世辞ではないのだろうし……何より、三神さん自身が可愛いと言ってくれている。……えっと、だとしたら本当に――
(……まあ、容姿に惹かれたわけじゃないんだけどね)
「……ん?」
「……ううん、何でも。それより……」
「……それより?」
「……モテるからって、他の子とチャラいことしちゃダメだよ! 弥夢さんは、私のコーチなんだから!」
「……えっと、はい……」
更なる困惑の最中、不意に鋭い口調でそう言い放つ三神さん。……いや、チャラいことって。あと、確かに僕は三神さんのコーチだけれど、それとチャラいこととはあんまり関係ないんじゃ……まあ、言わないけども。そもそも、チャラいことをする気もないし。




