ご定番?
「――うん、やっぱりまずはこれだよね。ふぅ、やっぱたまんないなぁ、この香り」
「そうですね、三神さん。僕も大好きです」
それから、少し経過して。
黄昏に染まる空の下、数多の提灯が照らす道をほのぼのと歩いていく。そんな僕らのそれぞれの手には、先ほど買ったタコ焼きが七個ずつ乗った舟皿が。うん、お祭りといえばやっぱりこれは外せないよね。
ほどなく、人混みから少し離れた草の上へと腰かける僕ら。そして――
「……うわぁ、美味しい」
「……そうですね、三神さん」
そう、頬を緩ませ口にする三神さん。そんな彼女が微笑ましく、思わずじっと見蕩れてしま――
「……はい、弥夢さん」
「……?」
「……いや、ほんとに分かんない表情しないでよ。馬鹿みたいじゃん、私。……ほら、定番でしょ? ほら、男と女が二人っきりなんだから」
「……いや、男と女て」
すると、ふと僕を呼ぶ三神さん。だけど、僕の様子に呆れたように……そして、少し恥ずかしそうに続ける三神さん。……いや、男と女て。いや、もちろん間違ってはないんだけど……こう、言い方がちょっと生々しいかなぁと。
……ただ、言わんとしていることは今の彼女の言葉から流石に分かってきて。そもそも、僕の方に爪楊枝に刺したタコ焼きを差し出してる時点でそれしかなく……うん、なんで分からなかったんだろうね。
……まあ、それはともあれ……さて、どうお断りしたものか。いや、断らなきゃいけない理由もないんだろうけど……その、やっぱり――
「……あれ、もしかして恥ずかしいの? 三つも歳下の中学生を相手に」
すると、大いに躊躇っている僕に何とも悪戯っぽい笑みでそんなことを言う三神さん。どうやら、随分とからかわれているようで。……うん、ここはやはり歳上として――
「……ええ、恥ずかしいですよ。三神さん、すっごく可愛いので」
そう、目を逸らし答える。本当は、歳上としての矜持を見せるべきなのかもしれないけれど……だけど、生憎のこと僕にそんな矜持はない。なので、ここは包み隠さず正直に――
「……っ!!」
「……美味しい?」
刹那、息を呑む僕。……いや、物理的には呑める状況じゃないんだけど。というのも……いや、言うまでもないかな? 卒然、三神さんが僕の口にタコ焼きを突っ込んできたからで。……ただ、その当人たる彼女が甚く恥ずかしそうに目を逸らし……いや、だったらやらなきゃいいのに。
「……さて、それじゃあ……はい」
「……えっと、僕もですか?」
「いや当たり前じゃん。ほら、そっちのがどんな味かも気になるし」
すると、ふとそう口にする三神さん。目を閉じ口を開いたそのご様子からも、いったい何を求めているか流石に分からないはずもなく。いや、タコ焼きをあげること自体はもちろんいいんだけど……ただ、できればご自分で取って召し上がっていただけると……うん、ダメなんだろうね。
……ところで、どんな味も何も、同じものを買ったのだから同じはずなんだけどね。……どうしてか、さっきの一つは随分と甘かったけど。




