夏祭り
「――ところで、改めてですが本当におめでとうございます、三神さん」
「ふふっ、もう何度も聞いたよそれ。……でも、ありがと弥夢さん」
それから、一週間ほど経て。
そう、和やかに会話を交わす僕ら。何に対してかというと、数日前まで行われていた京都府内の予選大会――そこで見事に優勝し、めでたく近畿大会への出場権を勝ち取ったことに関してで。……うん、ほんとにおめでとう、三神さん。
ところで、そんな僕らが今いるのは、透き通る川沿いの道――その左右には個性豊かで魅力的な屋台達が所狭しと列を連ねていて。
さて、今日は地元でお馴染みの夏祭りが開催されているのだけれど――なんと、教え子たる中学二年生の美少女、三神望夢さんと二人で来ていて。……いや、こうして二人で遊びに来るのも初めてではないんだけど……うん、それでも未だにびっくりだよね。
『……ねえ、弥夢さん。明後日の夕方なんだけど、お祭りに行こ? ……その、二人で』
二日前の宵の頃。
そう、少し躊躇いがちに尋ねる三神さん。どのお祭り――なんて、恐らくは確認するまでもないと思う。明後日、と言っているしきっと同じ認識だと思う。
だけど、この提案には少し驚いてしまって。というのも、そもそもその日の夕方は仕事の予定――なので、教え子たる彼女自身がそのことをご存知ないはずは……いや、違うのかな? もしかすると、その日にお祭りがあることを忘れていて、それでうっかり仕事の予定を入れてしまったのかも。だけど、ふとお祭りのことを思い出して、こうして急遽予定の変更を……うん、そういうことなら――
『――はい、三神さん。是非とも、ご一緒に』
――さて、そういうわけでこうして今、風情豊かで華やかな道を三神さんと二人で歩いているのだけど……ただ、一つ懸念があるとすれば――
「……ところで、弥夢さん。その……どう、かな?」
そんな思考の最中、ふと躊躇いがちにそう問いかける三神さん。些か漠然とした問いではあるけども……だけど、この状況、そして少し手を広げて見せる彼女の仕草からも、何のお話か流石に分からないはずもなく。なので、
「はい、とても似合っていて、すっごく可愛いです」
「……っ!! そ、そっか……あ、ありがと……」(……うん、ほんと意外とストレートに――)
「……あっ、すみません! その、三神さんがすっごく可愛いのは今日に限らずいつもで――」
「まさかの不意打ち!? ちょ、ちょっとだけ待って弥夢さん!! その、なんか頭がパニックでおかしくなりそうだから!!」
すると、さっと顔を背け矢継ぎ早に言葉を放つ三神さん。……しまった、余計なことを言っちゃったかな。そもそも、よくよく考えれば他の人にならともかく僕に可愛いなんて言われたら気持ち悪いだけで……うん、申し訳ない。……ただ、それはそれとして――
「……あの、三神さん。心做しか、お顔が頗る赤いようですが、ひょっとして熱が――」
「お願いだからちょっとそっとしてて!!」
「……もう、ほんと弥夢さんのせいでいきなり熱くってしょうがないよ」
「……へっ? いや、それはまあ地球温暖化に関与してない、とまでは言えませんが、流石に僕一人の責任というわけでは――」
「何の話!?」
その後、そんな不思議なやり取りを交わしつつ賑わう道を歩いていく僕ら。いや、まあエアコンとかも使ってるし地球温暖化に関与してないとは言わないけど……でも、流石に僕一人の責任というほどでは――
「……へっ?」
ふと、思考が止まる。というのも――卒然、三神さんがさっと僕の手を取ったから。そして――
「――それで、まずはどこ行こっか? 弥夢さん」
ただただ呆然とする僕へと、眩しいほどに無邪気な笑顔でそう口にする。そんな彼女があまりにも可愛く、僕も思わず微笑がもれる。そして、周りの人にぶつからない程度の駆け足で賑わう道を進んでいった。




