胸中
――しばし、静寂が続く。時折、烏の声が遠くから微かに……あれ、じゃあ静寂じゃないか。まあ、細かいことは措いといて――
……うん、起きづらい。いや、別に普通に起きればいいんだろうけど。弥夢さんも、ずっとこの状態はしんどいだろうし。だから、起きた方がいいんだろうけど……こう、ちょっとたぬき寝入りしちゃってたから起きづらいし……それに、もうちょっと浸ってたいし。
……いや、でもほんとに寝てたんだよ? 実際、起きたのはちょっと前だし。まあ、お母さんが入ってきた時には起きてたけど……うん、絶対バレてたよね。後で絶対にからかわれそう。……まあ、別にいいんだけどね。
ところで、それはさて措き……さっき、望夢って言った? 言ってたよね? ……いや、分かるよ? お母さんも三神なんだから望夢の方が自然だし、それ以上の理由なんてないことは分かってる。分かってる、けど……ふふっ、ふふふっ。
さて、その後もしばしこの状況が続いているわけだけど……うん、流石にそろそろ起きた方がいいよね? 弥夢さんも特に膝がしんどいだろうし。……でも、こんなこ、恋人っぽい状況を味わえる機会なんて今のところそうそうないだろうし、それにこのままこうしてたら、そのうち優しく頭を撫でてくれたり……いや、流石にないか。良くも悪くも、簡単にそういうことができる人じゃないだろうし。もしできるとしたら、それはきっとこの人にとってそれほど特別な相手に対してだけで――
「…………ん?」
ふと、頭上から微かな声が。理由は明白――彼のシャツを掴んでいたその手に、たった今ぐっと力を込めたからで。
……絶対、嫌。この人に、他に特別な相手ができるなんて、絶対に嫌。……誰にも、渡さない。だって……この男性は、私だけのものなんだから。




