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【ガチャ】が運命る異世界生活  作者: マネキ・猫二郎
第一部『天国篇』第一章『スタートライン』
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9/10

第八話『見せかけの生』

 こんにちは、マネキ・猫二郎と申します。


 このお話は、後に改稿する、また第九話と順番を入れ替える可能性の高いエピソードであることを予めご了承ください。


 改稿する部分につきましては、主に細かい文章表現や台詞の部分になると思います。大筋を変えるつもりはありません。


 では、本編をお楽しみください。

 ──私の妻は既に一度、(しかばね)になっている。

 

 しかし、どこからともなく現れた、紫の眼をした()()()が、交換条件の契約の上で、奇跡を起こしてくださった。

 

 吉報を持って帰らねばならぬ。吉報を持って帰らねばならぬ。吉報を持って帰られなければ、奇跡は無かったものとなり、再び妻は──。

 


 「クッソ野郎ッッッ!!!!」



 絶叫が漏れる。


 クソ野郎のせいで、失敗した。

 もう一度、もう一度だけ、機会を乞うか。

 次こそは『勇者』を殺してみせます、と。

 

 殺せるだろうか。いや、確実に殺せる。それだけの実力が、自分にはある。ただ、自分は弱すぎた。私の芯はガタガタだ。心が揺れて、手が震えて、まともに命を奪えない。

 

 自分の帰りを待ってくれる者がいて、彼らにもきっと同じような者がいる。だから、奪うに奪えない。そうやってもたついている内に、自分から奪われるまで秒読みになる。



 「誰に頼まれて、私はこんなことを……っ」



 無論、旅の者だ。



 ──「貴様の妻を天界より引き戻してやろう」

 ──「『貴様』だと? 礼儀が成ってないんじゃ……いや待て、それより今、なんて言った?」

 ──「貴様の妻を生き返らせることができると、そう言ったのだ」

 ──「そんなことが……!?」

 ──「あぁ。ただし条件付きだ」

 ──「条件?」

 ──「『勇者たち』を殺せ。なあに、全員とは言わないさ。数人でいい。それで貴様の妻は、貴様の死際まで生きていられるだろう」

 ──「『勇者たち』? それに殺せって。妻がそんなことをしてまで蘇りたい訳が……」

 ──「もう、一線は超えてしまってるんだろう? 墓荒らし」

 ──「──っ!?」

 ──「案ずるな。貴様をどうこうする気はない。次なる『勇者』の出現場所は分かっている。そこに行って、生まれたての『勇者』をサクッと殺せばよい」

 ──「そ、それなら、自分でやればいいじゃないか」

 ──「それが出来ぬのだ。なぜならば、我は『救う力』しか持っていないからな」

 ──「本当に、妻は蘇るんだな」

 ──「ああ。先に貴様の願いを叶えてやろう。勇者殺しはその後でいい」

 ──「なら……是非に」

 


 違う、私自身だ。


 クソ野郎が頼んだ。クソ野郎が願った。

 妻は頼んでいない。妻は願っていない。

 結局、自分勝手が生んだ無意味な延長時間だ。その無意味が、さらなる悲劇を呼ぶだけの時間。

 


 「失敗致しました」


 

 私は()()に、事実をありのまま伝えた。

 数秒間、沈黙が流れる。


 頬を伝う冷汗と、嫌に高鳴る心臓と、ひざまづいた全身が震えているのは、死にたくない、死なせたくないからだ。まだ、諦め切れてない、自分の弱さだ。


 だから──



 「どうか! どうかワタクシめに、あと一度だけの機会をください! 必ずや『勇者』を仕留めてみせますッ!」



 今すぐ首が吹き飛んでもおかしくない。一秒一秒を長びかせるような静寂。しかし幸いにも、恩人の返答は遅くなかった。

 


 「よかろう」



 それも、望んだ回答だ。

 思わず笑みを零しながら顔をあげた瞬間、恩人はさらに一言付け加えて言う。



 「ただし貴様の嫁も、その戦場に連れてゆくことを条件とする」

 「は、はい!」



 もちろん、どんな条件だって飲み込んでやる。喜びに浮かれた勢いで、適当な返事をするも後の祭り。その数秒後に内容を認知した。



 「……え?」



 思わず口から漏れ出たのは疑問符。



 「貴様の妻は『魔女』の称号を冠しておろう?」

 「しっ、しかし妻は、人殺しが嫌いで……」

 「ならば再び死ねばよい」

 「──ッ」



 そうだ。この期に及んで、手段は選べない。

 『魔女』である妻の力を借りれば、『勇者』が束になっても勝てる見込みがある。あとは、情けを捨てられるか。



 「なあに、心配するでない。我も力を貸そう」

 「……!? そ、そんな、貰ってばかり」

 「気にするでない。ほんの少し、貴様らに『魔力』を分け与えてやるだけだ」

 「魔力を……!? ──うブッ」



 途端、目眩が吐気が悪寒が痙攣が、同時に身体を支配する。脳味噌が揺れ震える感覚。記憶が駆け抜ける。



 ──「あら、私、死んだと思ったのだけれど」

 ──「──うぐっ、っ、よがった」

 ──「……? あなた、髪も髭も随分伸ばして。そのせいかな、小汚くなったように見えるわ」

 ──「っ、酷いなあ……」

 ──「少し老けたようにも見えるし、私じゃなければ、貴方が貴方だなんて分からないくらいよ」

 ──「っ、流石キミだね、こんなになった僕でも、分かってくれるんだ」

 ──「……ねえ、教えて。何をしたの?」



 宝石の埋め込まれた金色のネックレスが、よく似合っている。久しぶりに口を動かした彼女からは、温かみが溢れ、死臭などしなかった。



 「──うボォえ」

 

 

 頭の中がグチャグチャに掻き回されて、場面が飛び飛びになる。



 ──「そこまでして私は……!」

 ──「そこまでしてでも僕は君を……!」



 そうだ、僕は君を、

 


 ──「救いたかったんだ」

 ──「何が『救いたい』よ。人の墓を荒らして死者蘇生の研究? その産物が、あの座敷牢にいる化けッ、人達だなんて。それに、人殺しの依頼と引替えに、私……そこまでして、そんなことするくらいなら、死んでいた方がマシだった」

 ──「んなこと言ったって、もう、契約しちまった。死んだって、逃げられない!」

 ──「っ、この大馬鹿者ッ!!!」



 また場面がトぶ。



 ──「じゃあ、行ってくるよ」



 『勇者』を殺そうと、黒いローブに身を包んで旅に出た朝、彼女は何も言わなかった。



 ──「何をっ…何を飲ませたぁ」

 ──「そりゃあ味わってのとおり……濃〜い苦汁♡」



 沸々と怒りが込み上げてくる。

 どいつもこいつも、俺の気持ちを汲んでもくれない。

 


 ──「っ、この大馬鹿者ッ!!!」



 そうだ、俺は大馬鹿者だ。

 あの旅人が現れてから、いや正確には、君が死んでから、俺は一度でも誰かの気持ちを汲んだことがあっただろうか。


 意識が遠のいてゆく。俺が俺じゃなくなるみたいに。


 こんな事になるくらいなら、最初から愛さなければ良かった。その方が、君も僕も幸せだったんじゃないか。そう思ってしまう。──もう随分、遅いみたいだけど。



 ※※※



 貴方が帰ってきたら、座敷牢に閉じ込められたこの人達を、元の場所へ還らせよう。


 死に切れていない(しかばね)を見ていると……ああああ────。自分の身体が気色悪い。


 確かにあの日、急性の心臓発作によって私は死んだ。確信を持って言えるのは、だってだって『天国』にいたんだもの。神様が告げた。あなたは心臓の病で死んだと。


 んんんんんんんん。おかしい。おかしい。どこからホントでウソなの。んんん。ウソとかホントとか関係ないでしょ。んんん。



 「────ッ!!!」



 金切り声を挙げた。軽い息切れを起こしながら、膝を曲げて(うずくま)る。これ以上、何かを考えたら、おかしくなる。──もう何も考えられない。



 「ただいま」



 人殺しが帰ってきた。



 「殺せなかったよ」

 「……へ?」

 「やっぱ、僕は人殺しなんて出来なかったよ」



 生きている中で、一番安心した報告だった。でもそれじゃ、私を蘇らせた旅人との契約が……。



 「あの旅人は、それで良いって言っているの?」

 「ああ」



 ホッと溜息が零れる。

 


 「なーんだ。それで、私はどうなるの?」



 この際、このまま生きていようが、今すぐ死のうが、どうでもいい。



 「ああ、それなんだがな」



 至って穏やかな心持ちで、彼の言葉を待つ。



 「一緒に『勇者』を殺して欲しい」

 「────は?」



 麻痺した脳味噌が理解を拒む。貴方は、貴方の優しさ故に、せめてその一線だけは越えられないものだと思っていたのに。



 「いやっ」



 貴方はすっかり壊れてしまったみたい。


 本能的に逃げることを選んだ私の視界に入ったのは、座敷牢の死者たちだった。

 そう、貴方はもう随分前に、一線を超えてしまっていた。


 麻痺した脳味噌で、やっと気づくことができた。──私には、どうしようもないことだったみたいだけど。

 


 「──うブッ」



 目眩。吐気。悪寒。痙攣。脳味噌が揺れ震える。記憶が駆け抜ける。



 ──『僕と、結婚してくださいッ!』

 ──『ええ、喜んで』



 私は、理知的で穏やかな貴方に惹かれた。



 ──『じゃーん、これなーんだ』

 ──『欲しかったネックレス!』

 ──『正解! 今日は君の誕生日だろ?』



 遊び心もあって、一緒にいて楽しい人だった。けれどそんな貴方は見る影も無くなってしまった。私が死んだ時、きっと貴方も死んでしまった。

 

 ──皮肉にも、どちらが欠けても人生が(ほつ)れてしまうように、私たちは運命の糸で結ばれていたんだと思う。












































 「──おボォえ」

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