91話 不寝番
「おかわりあるからねー。たんと食べなねー」
「「「「はい」」」」
エーリッヒの所為で合宿所の食堂のおばちゃんが俺に憑依した。
エレノアちゃん達は凄い勢いで食べていく。俺が作った訳じゃないが美味しそうに食べてくれるので次から次へとおかわりを出していく。
「おい、エーリッヒ」
「んあっ・・・あー、寝てた・・・」
おっさんの方が先に電池が切れたようだ。
「もう寝て来い」
「そうさせて貰う」
覚束ない足取りでエーリッヒはテントに入っていった。
普通、いい大人がそこまで限界になる事あるか?
「果物とかもあるけど食べる?」
「「「「はい」」」」
と、イチゴやベリー系の切ったり剥いたりしなくて済むものをいくつか並べる。
「お菓子もあるけどまだ入りそう?」
「「「「はい」」」」
クッキー系の焼き菓子を並べると一瞬で皿が空になった。
「まだ食べる?」
「「「「はい」」」」
エレノアちゃん達は寝ない事よりもしっかり食べない事の方が辛かったのかもしれない。
ダンジョンに入った当初の中々食べずに延々と喋っていた時の姿はどこへやら。一心不乱に無駄口を叩かず黙々と出された物をベルトコンベアーの如く食べていく。
「じゃ、これ最後にジュースね」
「「「「はい」」」」
オレンジを絞って加水したジュースを最後に出して終了。
出せば出すだけ食べるから、どこまで食べられるのか試したい気にもなるがそろそろエレノア達も寝させた方が良いだろう。
「「「「ごちそうさまでした」」」」
「おそまつさまでした」
食べ終わった途端に船を漕ぎだした。
「俺が見張ってるから全員寝て良いよ」
「「「「はい」」」」
眠気の限界というよりも血糖値スパイクが起こってるのかもしれない。
船を漕ぎながら設営をして這々の体でテントに入っていった。
「これから数時間は寝るのか?」
「そうですね」
監視役の騎士様が休憩の確認を取って来たので、また後方に報告に行くのだろう。
ぐぅ~~~~。
「くっ・・・」
「あ、よかったらどうぞ・・・」
「すまない」
小ぶりなフランスパンにハムやレタスなんかを挟んだサンドイッチをアイテムボックスから取り出して騎士様に渡してあげた。
睡眠時間を削り食事はクソ不味い携帯食のみ。実は1番過酷だったのがこの人だった。
だからこそ腹は鳴らしても眠そうな様子を一切見せないのは厳しい訓練の賜物なのかもしれない。
俺もテントの中に入りベッドで横になる。
探索スキルは広めに設定しているので何か動きがあれば即座に反応出来る。
ベッドで横になりながら皆が起きてくるまでの数時間ヒマを潰さないといけない。
今回、ダンジョンに遠征するに当たって定番の物を用意してみた。
異世界食品チートの大定番ポテトチップス。
本当はサワークリームオニオンとコンソメを用意したかったが粉末にする方法が分からず断念。
うすしおとブラックペッパーの2種類のみ作ってきた。
薄くてアルコール度数も低いエールをちびちび飲みながらポテトチップスを口に運ぶ。
これでスマホでもあれば何時間でも潰せるどころか一瞬で数時間が溶ける状況ではある。
ひま潰しにアイテムボックスを整理したり在庫はかなりあるのに無駄にアイスクリームを作ったりした。
更にはおっさんが作ってくれた石窯。薪で熱々に熱せられた状態の石窯をアイテムボックスに入れると薪の火は消えたが石窯内部の温度は維持された。
なのでアイテムボックス内でピザなんかも焼ける。
そう。
焼き立てのピザを食べてはエールで流し込む。
腹が膨れたらポテトチップスとエールに再びシフトしてダラダラと過ごす。
すると探索スキルに引っかかる動きがあった。
エーリッヒがテントに引っ込んでから5時間くらいは経過しているはずなのでそろそろ撤収の準備をし始めても問題無いだろうという事で自分のテントやタープはアイテムボックスに仕舞った。
「状況は?」
「全員、テントで休憩中です」
「ここより先は?」
「まだ行ってないですね」
と、監視役の騎士様が来たが最初から着いて来ていた騎士様とは別人だったので交代になったのだろう。
ゆっくり休んでくれ。
「これからの予定は?」
「聞いてるのはノルマ達成してるんで次の先遣隊と交代して一旦外に出て休憩をしようかと」
「ふむ」
「リーダーがまだ寝てるんですけど、詳しくはそっちから聞いて下さい」
「いや、それで問題無い」
「戻って報告をして来る。その間、ここの保持を頼めるか?」
「良いですよ」
「では、誰かここに追いつけば交代して構わない」
「分かりました」
「その際の引き継ぎも一応頼む」
「はい」
騎士様は駆け足で戻っていき、そのタイミングでエレノアちゃん達が起きてきた。




