69話 海割れ
オーパスポーカスの住人になったのも束の間。
俺は再び街を出る事になった。
「それじゃあ行ってきます」
「お気を付けて」
これは前から考えていた事でもあった。
フーバスタンクに行きカギノ伯爵に謝罪をしたいと思っていたのだ。
まぁ、オーパスポーカスから逃げたいと思う事が起こってしまったのもあったが・・・。
例の警備隊の女性隊員が部署異動などでオーパスポーカスから他の街に行っていたらしいが、俺とほぼ同じタイミングで帰ってきたらしく・・・街で偶然遭遇してしまった。
街中で正座させられて延々とお説教を喰らい。
騒ぎを聞きつけて駆けつけた警備隊の説得も虚しく聞く耳は持たず。
最終的に女性隊員は同僚達によって取り押さえられていた。
その後、その女性隊員がどうなったかは分からないが当分はエンカウントしたくない。
そういう思いもあってフーバスタンクに一時避難という形で向かう事にしたのだ。
オーパスポーカスからフーバスタンクへの道は以前よりも綺麗に整えられている気がする。
整えられているというよりはしっかりと踏み固められて以前よりも安定しているという感じだろうか。
それは、以前よりも行商などの行き来が頻繁になっているからかもしれない。
もしかしたら前よりも発展していて色んな料理が生まれていたり色んな食材も集まっているかもしれない。
そんな期待を胸にフーバスタンクへと向かった。
「あ、久しぶり。デレク」
「え?はい、お久しぶりです?」
「あ、覚えてないな?」
「す、すみません・・・」
「何年前か忘れたけどセバスチャンさんからの指示で俺を案内したの覚えてない?」
「あー・・・マロさん?」
おじゃる?
「違う」
「あ、ミロさん?」
ココア?
「違う」
「ムロさん?」
ツヨシ?
「違う」
「メロさん?」
あー、俺ってそんなメロい?
「違う」
「モロさん?」
煮付けか?
「違う。ってか、何でロが確定なんだよ」
「違いましたか・・・」
「ミトだ」
「あー、ミトさん。そうだそうだ、思い出したけど名前はピンときてないです」
「きてないのかよ」
フーバスタンクを出てからしばらくは定期的に手紙を書いていた。
料理だったり領地経営に良さそうなネタだったり思い付いた事があれば手紙に書いて送っていた。
直接、カギノ伯爵に送るのは憚られたので手紙をデレクに送り。そこからセバスチャンさんに伝わるようにという間接的な伝達方法だった。
「何回か手紙送ったけどちゃんと届いてたか?」
現代日本との1番大きな差だと思うのはこれだ。
情報伝達に手間が掛かりすぎる。
既読なんて機能があるはずも無いから手紙を送っても読んで貰えたのか分からないし届いたのかすら分からない。
「はい、良く分からなかったんで、そのままセバスチャンさんに渡しました」
「あ、うん、それで良い」
「しばらく滞在しようとは思ってるんだけど」
「はい」
「セバスチャンさんに連絡取って貰える?」
「分かりました」
デレクに会うついでに宿も取った。
思っていたよりも宿代が高かったが色々と高騰しているのかもしれないな。
市場調査も含めて街をプラプラと歩く。
以前よりも街並みが綺麗になっている気もする。
そして何よりも人通りが多い。前も人が多い印象だったが更に増えた気がする。
住人というよりも観光客が多いように感じる。
理由はキョロキョロしている見るからにお上りさんが多いからだ。
宿が高くなってる理由はこれか・・・。
屋台で売られているファストフードを見ても高くなっている。
試しに1本串焼きを買ってみる。
味は普通。いや、前よりも微妙に落ちているかもしれない。
味は微妙に落ちて値段は倍。これは、街としては不味いんじゃないのか・・・?
しばらく見て回ったが全ての物が高くなっている。
そして、物流は以前よりも活性化されているのか多種多様で様々な物が売られている。
真贋入り乱れていて目利きが出来なければ贋物を高額で掴まされそうだ。
そして、貧富の差も激しくなったかもしれない。
ストリートチルドレンも増えていて、怪しげな物を売っていたりチームを組んでのスリや窃盗も頻繁に行われている。
観光客をターゲットにしている様だが・・・俺もキョロキョロと辺りを見回しながら歩き回っている所為で観光客に思われて物凄い狙われる。
ぶつかった拍子にサイフを盗み取る。
そんなありがちな手口でやっているみたいだけどぶつかられて気分が良い訳が無いので避ける。
別にガキンチョが当たっても痛くも痒くもないし完全に手ぶらだから盗まれる物も無い。
でも、気分的に避ける。
すると、ガキンチョもムキになってぶつかろうとしてくる。
避け続けた結果・・・盗むのはそっちのけでぶつかる事が目的になっているのか四方八方からガキンチョ共が捨て身のタックルをしてくる。
そして、気付けばモーセの様に人の波が割れて。俺と俺にタックルをかますガキ共を取り囲みショーの様になっていた。




