70話 コリーダ
最初は1人2人だったガキンチョも気付けばこの通りをテリトリーにしているガキンチョ全員が集まってるんじゃないかというくらいに増えた。
まぁ、いくら増えた所で大差無いので余裕で避け続ける。
避けながら露店の商品を眺めたり値引き交渉をする。
稀にバランスを崩して露店に突っ込みそうになったガキンチョの首根っこを掴み反対側に放り投げる。
相手をすればするほど必死になって向かって来るだろうから無視しようと思ったのが間違いだった。
コイツらはきっと無視しようが相手にしようが向かって来る。
ただ、今更、相手にするのも・・・と思い始めてからも結構経っている。
これはもう逃げるしか無いのかもしれない。そう思っていると。
「何をされているのですか?」
「あ、セバスチャンさん・・・」
護衛を引き連れたセバスチャンさんに見つかってしまった。
そして、その瞬間にガキンチョ共は蜘蛛の子を散らす様に路地裏や人影に消えていった。
「いやぁ、何と言いますか・・・」
「デレクからミト様がお越しだと伺い。宿に向かっていたのですが・・・」
「は、はい・・・」
そのまま領主邸に招待されてカギノ伯爵とも数年振りに再会を。
「え・・・?」
「一昨年。カギノ様は亡くなられました」
再会を・・・果たせなかった。
「そうですか・・・」
「ミト様が手紙で教えて下さったレシピはカギノ様もお喜びになられておりました」
「なら、良かったです」
「街をご覧になられて如何でしたか?」
「観光客が増えて儲かってそうですね」
「そうですね・・・」
「???」
「いえ、カギノ様が懸念されていたのが今の状況でして」
「そうなんですか?」
「はい。街の発展するペースと人の増えるペース。このバランスが崩れるといずれ衰退が始まる。と」
元々、人と物を集めて発展させてきた街ではあるがそのバランスを上手く取っていたのがカギノ伯爵だったそうだ。
そのカギノ伯爵が亡くなって代替りをした訳だが・・・一粒種の息子は俺が事故で殺してしまった。
その息子が子供をあちこちに作っていたらしいので後継者的には問題無いらしいが。
孫を集めて跡継ぎとして教育をしてはいたが・・・孫達はまだまだ子供で領主になるには早すぎるという事で。セバスチャンさんが領主代行として今はこの街を治めているそうだ。
護衛を引き連れていたのはそういう事らしい。
セバスチャンさんを代行に指名したのはカギノ伯爵で遺書にしっかりと書かれていたそうだ。
そして、跡継ぎもしっかり指名済みで相応の年になったらセバスチャンさんから孫に領主の座が渡されるらしい。
「やはり、カギノ様の様に上手くはいきませんでした・・・」
「お孫さんはどうなんですか?」
「皆様、優秀です」
「だったら、受け渡せるようになるまで耐えるって感じで良いんじゃないですか?」
「そうかもしれませんが、カギノ様よりお預かりしたこの街を・・・」
「本職じゃないんだから仕方ないでしょ」
「ですが・・・」
「セバスチャンさんの仕事は次の代まで街を存続させる。次の領主様の教育をする。この2つじゃないんですか?」
「そうでしょうか?」
「出来無い事をやれって言う人じゃなかったと思うんですよね」
「それは勿論」
「出来ると思ったからセバスチャンさんに街も孫も託した訳ですよ」
「はい・・・」
「だから、出来る事を出来る範囲でやれば良いと思いますよ」
「ありがとうございます」
それから、俺が逃げてからの話を聞かせて貰った。
息子さんに関しては死に目に会えなかった事は残念に思ってはいたが自業自得だから仕方ないと言っていたそうだ。
むしろ、俺に迷惑を掛けた事の方を悔やんでいたらしい。
「ミト様にまたお会いしたいと、事ある毎に仰られておりましたよ」
「俺も会いたかったです」
「まさか一所に留まる事無く動き続けるとは思いませんでした」
「俺もそうですよ」
「手紙を頂いておりましたのでどこに居らっしゃるのかは存じ上げておりましたが。こちらから連絡する術がございませんでしたので」
「すいません・・・」
セバスチャンさんの目論見としてはフーバスタンクから離れても半年程で戻って来るだろう。
そして、その頃にはカギノ伯爵も落ち着いているはずだと思っていたそうだ。
予想外にカギノ伯爵はショックを受けず、予想外に俺が全然戻って来なかった。
「そうだ」
「はい」
「お孫さんからしたら俺は父親の仇になる訳ですけど」
「ご安心下さい。皆様、父親の顔も知りませんでしたし今も憎んでいるくらいですので感謝されてると思いますよ」
それはそれでどうだろうか・・・。
あの事故は意図せず命を奪ってしまった訳だけど。
結果的に奪って正解だったのか?人を殺して正解もクソも無いとは思うし正当化するつもりは無いが・・・死んだ方が、殺された方が、生きているよりはマシと思える程のクソヤローが居る事は否定出来無い。




