48話 順番待ち
ウイスキーやブランデーといった濃い洋酒はアイスクリームに合うがワインは意外と合わなかった。
ブランデーは合うのに・・・。
「まだまだあるんで食べたくなったらいつでも言って下さい」
「ありがとうございます。あ、ウチの従業員達に食べさせてやりたいんですが構いませんか?」
「全然良いですよ」
「今からでも構いませんか?」
「はい、全然」
「では、今から呼んで来ますね」
息子さん・・・ジョーさんが従業員の人達を呼びに向かい。
俺はマーシーさんに案内されて広間に向かった。
流石に居間だと全員は入り切らないそうだ。
案内された広間は本当に広くて。ホテルの披露宴会場の様な雰囲気もあった。
そして、しばらくすると従業員の人達も集まり。全部で20人以上も居たようだ。
「足りるかな・・・?」
焦りながらもアイテムボックス内でアイスクリーム作りを開始した。
前日に2回作ったので手順は分かっている。なので、配膳をしながら同時進行で作っていく。
今回はプレーンのアイスクリームのみで。
「すみません・・・」
「え?」
「思ったよりも人が多くて・・・」
従業員の人数を把握してないのか・・・?
「差し入れ目当てに従業員の家族も何故か一緒に来てて・・・」
「なるほど・・・」
差し入れが撒き餌になって入れ食い状態になっていたのか。
「大丈夫でしょうか?流石に多すぎますよね?」
「いや、何とかなると思います」
並んで貰い、順番に配っていく。
この調子なら何とか足りそうだ。
「って何でおっさんが並んでんだよ」
「ダメか?」
「ダメだ」
「どうしても?」
「どうしても」
「良いのか?」
「何がだよ・・・」
「ゴネるぞ?」
「好きにしろよ・・・」
「地団駄踏むぞ?」
「好きにしろって」
「分かった」
「え?」
「子供から奪ってやる」
「待て。お前、大人としてのプライドは無いのかっ」
「無いっ!」
「ま、待て・・・アイスはホントにもう無いから酒をやる」
「お?」
「それで納得しろ」
「しょーがないなぁ~」
このおっさんは・・・。
こんなおっさんだけど、1つだけ凄いと思う事がる。
手とかも震えてないからアル中では無いっぽい。
これだけ酒が好きなのにある程度は自制出来ているという事だ。
もしかしたら純粋に耐性が高いだけの可能性も捨てきれないが。
一応、確認の為に息子さんの方を見ると・・・渋々だけど仕方ないといった感じで頷いている。
「ほれ」
「エールか?」
「不満か?」
「1杯だけか?」
「十分だろ」
「エールならもう1杯は欲しい」
「チッ・・・」
「ほれ」
「うひょー」
両手にエールを持って去っていった。
と、思ったら直ぐに戻ってきた。
「何かツマミ無いか?」
「はぁ~~~・・・ほれ」
抵抗するだけ時間の無駄だ。
おっさんの事はもう忘れよう。
従業員の皆さん。プラス家族・・・。
概ね、アイスクリームは好評だった。
一部、知覚過敏持ちからは不評だったが。
「差し入れさん明日もよろしくー」
「おいっ」
と、一部従業員からは舐められているのがどうにかならないかと思うがどうにもならなそうだ。
「ミトさん」
「はい」
「従業員だけじゃなくその家族まですいませんでした」
「いえいえ、楽しんで貰えたなら良かったです」
「昨日、古米はお渡ししましたが新米の方はまだだったので」
「あー、確かに」
「そちらの方もお渡ししたいのですが」
「はい、お願いします」
そして、新米も受け取り契約書に則って支払いも済ませた。
「ありがとうございます」
「こちらこそありがとうございます」
「後は料理の納品だけですね」
「そうですね」
「そちらはどのくらいの量をお納めすれば?」
「んー・・・決まってないんで出来れば沢山としか」
別に期限も無いし、この街も住心地は悪くないからいつまでだって居ても良い。
「ただ、奥さんの無理の無い範囲でですけど」
「はい、ありがとうございます」
「奥さんにも伝えましたけど。掛かった費用と料理の調理代はしっかり請求して下さいね」
「それは、はい。それで、お昼は食べていかれますよね?」
「あー、いや、宿で米を炊いて貰ってて。それの受け取りがそろそろなんで」
「そうなんですね」
食べてから戻っても間に合うかもしれないが冷めてしまったら意味が無い。
なので万全を期して炊きあがるのを待とうと思う。
「という訳なんで、そろそろ失礼します」
「明日もいらっしゃいますよね?」
「そうですね」
「でしたら、明日は食べていらして下さい」
「分かりました。では、明日はお昼頃にお邪魔します」
「はい」
宿に戻ると米を炊き始めたばかりだったので食べてから帰っても間に合ったようだった。
とは言え、そんなギャンブルを冒す必要も無いので仕方ないと思う事にした。




